未完成物件のルールをわかりやすく:広告・契約・手付金の保全で何が変わるか

未完成物件(みかんせいぶっけん)とは、宅地の造成や建物の建築の工事が、まだ終わっていない物件のことです。宅建業法には、工事の完了前の物件だけにかかるルールや、完了前と完了後で数字が変わるルールがあります。

変わるのは4つです。①広告は、開発許可や建築確認などの処分の後でないと出せません(33条)。②売買・交換の契約と媒介も、その処分の後でないとできません(36条)。③業者が自ら売主になるとき、手付金等が代金の5%か1,000万円を超えるなら、保全措置が要ります(41条。完成物件は10%か1,000万円)。④自分のものでない物件を売ってはいけないルール(33条の2)に、未完成物件だけの例外があります。この記事では、工事完了前と完了後を表で比べ、金額の計算で当てはめます。

身近な例で考えると:建築中の家を買うそうたさん

登場人物を紹介します。

人物立場したこと
あかね建設宅建業者(売主)分譲住宅を建てて売っている
そうたさん買主(会社員)建築中の一戸建てを買いたい
すずらん不動産宅建業者あかね建設の分譲を広告・媒介する

あかね建設は、土地を造成して一戸建てを建て、分譲する計画を立てました。工事の流れにそって、ルールがかかる順に並べます。

  1. 開発許可や建築確認を申請した段階。→ まだ広告は出せません。すずらん不動産も同じです。「建築確認申請中」と書いても出せません。
  2. 建築確認を受けた。→ 広告を出せます。工事中でも、そうたさんと売買契約を結べます。
  3. そうたさんと、代金4,800万円で契約し、手付金200万円を受け取る。→ 工事の完了前なので、基準は代金の5%(240万円)です。200万円は240万円以下で、1,000万円以下なので、保全措置なしで受け取れます。
  4. 工事中に中間金100万円を受け取る。→ すでに受け取った200万円と足して300万円になり、240万円を超えます。中間金を受け取る前に、保全措置をとります。
  5. 家が完成し、引き渡す。→ 引渡しの後に支払われるお金は「手付金等」に入らないので、保全措置の話は終わります。

もし同じ家を、完成してから4,800万円で売ったなら、基準は10%(480万円)になります。手付金200万円と中間金100万円の合計300万円は480万円以下なので、保全措置はいりません。同じ家・同じ金額でも、契約が完成の前か後かで結論が変わります。

条文ではこう決まっている

広告の開始時期(33条)と契約の時期(36条)

  • 33条:工事の完了前は、その工事に必要な開発許可(都市計画法29条1項・2項)、建築確認(建築基準法6条1項)その他政令で定める処分があった後でなければ、その宅地・建物の「売買その他の業務に関する広告」をしてはいけません。貸借の広告も入ります。
  • 36条:工事の完了前は、同じ処分があった後でなければ、自ら当事者として、または当事者を代理して「その売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない」。貸借は入っていません。

手付金等の保全措置(41条・41条の2・施行令3条の5)

  • 41条1項(工事完了前):業者が自ら売主となる、工事の完了前の売買では、保全措置を講じた後でなければ手付金等を受け取れません。
  • 手付金等とは:代金の全部か一部として、または手付金などの名目で、契約の日以後、引渡しの前に支払われるお金で代金に充てられるものです。
  • 措置がいらないとき:買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、または受け取ろうとする額(すでに受け取った額を足す)が代金の100分の5以下で、かつ政令で定める額(1,000万円。施行令3条の5)以下のとき。
  • 41条の2(工事完了後):完了前の売買以外の売買です。いらないのは、代金の10分の1以下で、かつ1,000万円以下のときなどです。
  • 方法:完了前は、銀行等の保証(41条1項1号)と、法律の定める事業者との保証の契約(同項2号)の二つ。完了後は、この二つに加えて、指定保管機関に保管してもらう方法(41条の2)も使えます。
  • 措置をとらないとき:買主は手付金等を支払わないことができます(41条4項)。

自己の所有に属しない物件(33条の2)

  • 業者は、自分のものでない宅地・建物について、自ら売主として売買契約(予約を含む)を結んではいけません。
  • 例外の一つ(2号)が、41条1項の売買(工事の完了前の売買)で、同項1号か2号の措置が講じられているときです。完成した物件には、この2号の例外はありません。

保全措置の細かい仕組み(保証の範囲など)は手付金等の保全措置の記事で、広告の規制の全体は宅建業の広告のルールの記事で扱っています。

工事完了前と完了後の比べ方

項目工事完了前工事完了後
広告(33条)許可・確認などの後から(貸借の広告も)この制限なし
契約・媒介(36条)許可・確認などの後から(売買・交換だけ)この制限なし
保全措置がいらない額5%以下かつ1,000万円以下10%以下かつ1,000万円以下
保全の方法銀行等の保証、2号の保証の契約左の二つ+指定保管機関
33条の2の例外保全措置をとれば例外あり(2号)2号の例外なし
手付の上限(39条)代金の2割代金の2割(同じ)

完了前か後かは、41条が「工事の完了前において行う…売買」と書いているとおり、売買をする時点で工事が終わっているかどうかで分けます。完成の後に引き渡す物件でも、契約が完成の前なら完了前のルールです。

なお、保全措置と手付の上限(2割)は、業者が自ら売主で、買主が業者でない売買のルール(8種制限)です。業者どうしの売買や、業者が媒介しているだけの売買にはかかりません。33条と36条は8種制限ではないので、業者どうしでもかかります。8種制限の全体は8種制限の記事で確かめてください。

金額の計算で当てはめる

計算の手順は3つです。①完了前か後かで、5%か10%かを決める。②代金にその割合をかけ、1,000万円と比べて小さいほうを「上限の線」にする。③受け取る額にすでに受け取った額を足し、線を超えるかを見る。

物件・代金線(小さいほう)受け取る額保全措置
完了前・4,800万円240万円(5%)手付200万円いらない
完了前・4,800万円240万円(5%)手付200万円+中間金100万円中間金の前に要る
完了後・4,800万円480万円(10%)手付200万円+中間金100万円いらない
完了前・2億4,000万円1,000万円(5%は1,200万円)手付1,000万円いらない
完了前・2億4,000万円1,000万円(5%は1,200万円)手付1,100万円要る
完了後・1億2,000万円1,000万円(10%は1,200万円)手付1,100万円要る

代金が大きいと、5%や10%より1,000万円のほうが小さくなります。「5%以下だから不要」と割合だけで判断すると、4行目と5行目の区別で落とします。どちらの条件も満たしたときだけ不要です。

手付の上限(39条1項)は、完了前・後に関係なく代金の2割です。代金2億4,000万円なら4,800万円まで受け取れますが、合計で1,000万円を超えて受け取るなら、その前に保全措置が要ります。上限の2割と、保全の線は別々に判断します。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例

  • すずらん不動産が、建築確認を受けた後の建築中のマンションの販売広告を出した。→ 確認の後なので33条には違反しません。
  • あかね建設が、建築確認を受けた後、工事中の家について、そうたさんと売買契約を結んだ。→ 36条の処分の後なので、契約できます。

当てはまらない例

  • 建築確認の前に、建築中の賃貸マンションの入居者募集の広告を出した。→ 33条は貸借の広告にもかかるので違反です。
  • 建築確認の前に、建築中の賃貸マンションの貸借の媒介をした。→ 36条は売買・交換だけなので、この制限にはあたりません(広告とは結論が逆になります)。
  • 完成済みの家(代金4,800万円)で、手付金400万円を受け取った。→ 10%(480万円)以下なので保全措置はいりません。完了前なら5%(240万円)を超えるので要ります。

ひっかけやすい例

  • 「建築確認を申請中であることを明らかにすれば、広告や契約ができる」。→ 誤りです。処分が「あった後」でなければできません。
  • 「買主の同意があれば、保全措置なしで5%を超える手付金を受け取れる」。→ 誤りです。保全措置がいらないのは、額が線以下のときと、買主が所有権の登記をしたときなどです。同意は入っていません。
  • 「完了前の物件でも、指定保管機関に保管してもらえば保全措置になる」。→ 誤りです。指定保管機関の方法は、完了後の物件(41条の2)だけで使えます。

試験ではここをまちがえやすい

未完成物件のルールは宅建試験の宅建業法の論点です(行政書士試験の範囲ではありません)。宅建試験では、次のような形で取り違えやすい論点です。

  • 5%と10%の入れ替え:完了前の物件の計算に10%を使わせる形。最初に「完了前か後か」を確かめます。
  • 1,000万円の見落とし:代金が2億円を超える完了前の物件、1億円を超える完了後の物件では、1,000万円の線のほうが先にきます。
  • 合算の見落とし:中間金を受け取るときは、すでに受け取った手付金と足して判断します。
  • 33条と36条の範囲:広告は貸借も制限、契約・媒介は売買・交換だけ。
  • 「申請中」の扱い:処分を申請しただけでは、広告も契約もできません。
  • 業者間・媒介:保全措置は業者が自ら売主で買主が業者でないときだけ。33条・36条は業者どうしでもかかります。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの宅建業法(8種制限・手付金等の保全措置、広告の規制)で続けて解けます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でない買主Bと、工事完了前の建物を代金2億4,000万円で売る契約を結んだ。Aが保全措置を講じずに手付金1,000万円を受け取っても、宅建業法に違反しない。

答え:○ 分かれ目は、5%と1,000万円の両方の線です。工事完了前は、代金の5%(1,200万円)以下で、かつ1,000万円以下なら保全措置はいりません(41条1項ただし書、施行令3条の5)。1,000万円はどちらの線も超えないので、措置なしで受け取れます。金額が大きいので✕に見えますが、1,000万円は「以下」に入ります。手付の上限の2割(4,800万円)にもかかりません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aは、建築確認を申請中の分譲マンションについて、申請中である旨を買主に説明すれば、確認を受ける前でも、宅建業者でない買主と売買契約を結ぶことができる。

答え:✕ 分かれ目は「処分があった後」という時期です。工事の完了前の物件は、建築確認などの処分があった後でなければ、売買・交換の契約を結べません(36条)。正しくは、説明をしても、確認を受けるまでは契約できません。広告も同じく確認の後からです(33条)。ただし36条は売買・交換のルールなので、貸借の契約や媒介にはかかりません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でない買主Bに、工事完了前の一戸建て(代金6,000万円)を売る。手付金500万円を受け取るときは、代金の10%以下なので、保全措置は要らない。

答え:✕ 分かれ目は、5%と10%のどちらを使うかです。工事の完了前の物件は代金の5%(300万円)が線で、500万円はこれを超えるので、保全措置をとった後でなければ受け取れません(41条1項)。正しくは「保全措置が要る」です。10%は、工事の完了後の物件の線(41条の2第1項)で、完成物件の数字を当てはめた取り違えです。

まとめ

  • 未完成物件は、開発許可・建築確認などの処分の後でないと広告できない(33条。貸借の広告も)。
  • 売買・交換の契約と媒介も、処分の後から(36条。貸借は対象外)。
  • 手付金等の保全措置がいらない線:完了前は5%以下かつ1,000万円以下、完了後は10%以下かつ1,000万円以下。すでに受け取った額を足して判断。
  • 完了前の保全方法は銀行等の保証と2号の保証の契約。指定保管機関は完了後だけ。
  • 33条の2は、完了前の売買で保全措置をとっていれば例外になる。

次に読むなら、手付金等の保全措置の記事がおすすめです。保証の範囲や、措置がとられないときの買主の扱いまで押さえると、計算の問題を最後まで解けます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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