情報公開法をわかりやすく:開示請求の流れと不開示情報、30日の期限

ひとことで言うと、情報公開法(正式には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)は、だれでも国の行政機関に「この文書を見せて」と請求できる法律です(3条)。行政機関は、法律が決めた不開示情報(ふかいじじょうほう=見せなくてよい情報)が書かれていない限り、開示しなければなりません(5条)。

この記事では、令和8年4月1日時点の条文で、請求できる人と文書、不開示情報の種類、開示の決定までの流れを説明します。令和8年4月1日より後にも、防災庁の設置に伴う改正(令和8年7月17日施行)がありますが、令和8年度試験は4月1日時点の条文が前提です。自分の個人情報を見せてもらう請求は、別の法律(個人情報保護法)の仕組みなので、個人情報保護法の記事で扱います。

身近な例で考えるとどうなるか

登場するのは、会社員のみなとさん、国の架空の役所「くらし省」、くらし省と工事の契約を結んだ「さくら建設」です。みなとさんは、近所の橋の工事費が高すぎないか気になり、くらし省に契約の文書を請求しました。

  1. みなとさんは、くらし省の大臣(行政機関の長)に開示請求書を出す。書くのは、氏名・住所と、文書を特定できる事項(4条1項)。請求の理由や目的を書く欄は、条文の記載事項にない。
  2. 請求書の書き方に足りない点(形式上の不備)があったので、くらし省は期間を決めて補正(ほせい=書き直し)を求めた(4条2項)。
  3. 文書には、さくら建設の情報も書かれていた。くらし省は、さくら建設に意見書を出す機会を与えた(13条1項)。
  4. くらし省は、請求の日から30日以内に開示するかどうか決める。補正にかかった日数は数えない(10条1項)。
  5. 結果は一部開示。さくら建設の独自の工法の部分は黒くぬって隠し、担当課長の職と仕事の内容は見せた(5条1号・2号、6条1項)。
  6. みなとさんは隠された部分に納得できず、審査請求をした。くらし省の大臣は、情報公開・個人情報保護審査会に諮問(しもん=意見を聞くこと)する(19条1項)。

ただし、本物の請求では、文書ごと・部分ごとに不開示情報に当たるかを判断します。工法の部分が隠されるかどうかは、中身によって変わります。

条文ではどう決まっているか

目的・対象・請求できる人(1条〜4条)

  • 目的(1条):国民主権の理念にのっとり、開示を請求する権利を定める。政府が活動を国民に「説明する責務」を全うし、公正で民主的な行政を進める。「知る権利」という言葉は条文にない。
  • 行政機関(2条1項):内閣に置かれる機関、内閣府、省などの国の行政機関と、会計検査院。国会・裁判所・地方公共団体は入っていない。
  • 行政文書(2条2項):職員が職務上作ったり受け取ったりした文書・図画・電磁的記録で、職員が「組織的に用いるもの」として行政機関が保有しているもの。官報・白書など販売用の刊行物などは除く。
  • 請求できる人(3条):「何人(なんぴと)も」。国籍や住所で区別していない。請求書には「氏名又は名称」を書くので、会社などの法人も請求できる(4条1項1号)。

不開示情報(5条)

号中身例
1号特定の個人が分かる情報など申請者の名前・住所
1号の2行政機関等匿名加工情報など個人情報保護法で作る加工データ
2号法人などの正当な利益を害するおそれ会社の独自の技術
3号国の安全・外国との信頼関係外交交渉の記録
4号犯罪の予防・捜査など公共の安全捜査の方法
5号内部の審議・検討・協議の情報結論前の検討メモ
6号事務・事業の適正な遂行に支障立入検査の予定

1号には、ただし書の例外があります。法令や慣行で公にされている情報(イ)、人の生命・健康・生活・財産を守るため公にする必要がある情報(ロ)、公務員の職務の情報のうち職と職務の内容の部分(ハ)は、不開示情報に当たりません。3号と4号は、行政機関の長が「認めることにつき相当の理由がある情報」という書き方で、長の判断を尊重する形になっています。

開示の例外と決定の期限(6条〜16条)

  • 部分開示(6条):不開示情報の部分を簡単に区切って除けるなら、残りは開示しなければならない。ただし残りに意味のある情報がなければ別。
  • 裁量的開示(7条):不開示情報(1号の2をのぞく)が書かれていても、公益上特に必要があると認めるときは、長は開示できる。
  • 存否応答拒否(8条):文書が「ある」「ない」と答えるだけで不開示情報が分かってしまうときは、あるかないかを言わずに請求を拒否できる。
  • 期限(10条・11条):請求から30日以内に決定。正当な理由があれば30日以内に限り延長できる。文書が著しく大量なら、相当の部分を60日以内に決め、残りは相当の期間内に決める特例がある。
  • 第三者の意見書(13条):第三者の情報があるとき、意見書の機会を与えることができる(1項)。人の生命などを守るために開示する場合や7条で開示する場合は、与えなければならない(2項)。第三者が反対の意見書を出したのに開示を決めたときは、決定の日と開示する日の間に少なくとも2週間を置く(3項)。
  • 手数料(16条):実費の範囲内で政令が決める額。経済的に困難などのときは減額・免除できる。

不服があるとき(19条)と地方公共団体(25条)

  • 開示決定などや、決定をしないこと(不作為)に審査請求があったら、長は情報公開・個人情報保護審査会(会計検査院長が裁決する場合は、別に法律で定める審査会)に諮問しなければならない。ただし、不適法で却下するときと、全部を開示するとき(反対の意見書が出ている場合をのぞく)は諮問しない(19条1項)。
  • 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、情報公開の施策を作って実施するよう努めなければならない(25条)。この法律そのものは地方公共団体の文書に及ばない。

当てはまる例・当てはまらない例

当てはまる例:決裁前の資料も行政文書

くらし省の課で共有フォルダに入れ、会議で使っている資料は、まだ決裁(けっさい=上の人の正式な承認)を受けていなくても行政文書です。条文の要件は「組織的に用いるもの」として保有していることで、決裁は要件になっていません(2条2項)。

当てはまらない例:市役所の文書

みなとさんが住む市の市役所に文書を請求したいとき、情報公開法は使えません。対象は国の行政機関だからです(2条1項)。市の文書は、その市の情報公開条例によります。25条は、地方公共団体に努力を求めているだけです。

ひっかけやすい例1:個人で商売をしている人の情報

5条1号の「個人に関する情報」からは、事業を営む個人のその事業に関する情報が除かれています。個人で工務店をしている人の事業の情報は、1号ではなく、法人などと同じ2号で判断します。

ひっかけやすい例2:「ありません」と答えない拒否

「くらし省が来月、さくら建設に立入検査をする予定の文書」を請求されたとします。「その文書はあります」と答えるだけで、検査の予定が漏れてしまいます。このときは、文書があるかないかを明らかにしないまま、請求を拒否できます(8条)。拒否も不開示の決定として書面で通知されます(9条2項)。

ひっかけやすい例3:公務員の名前

1号ただし書ハで不開示から外れるのは、公務員の「職」と「職務遂行の内容」の部分です。条文のハには「氏名」は書かれていません。氏名は、イ(慣行として公にされているかなど)で判断することになります。「公務員の職務の情報は氏名もふくめて開示」とする選択肢は、ハの文言とずれます。

似ているルールとどう違うか

開示の例外になる3つの条文は、名前が似ていて混ざりやすいところです。

条文中身義務か
部分開示(6条)不開示の部分を除いて残りを見せるしなければならない
裁量的開示(7条)不開示情報でも公益上特に必要なら見せるできる
存否応答拒否(8条)あるかないかも言わずに拒否するできる

個人情報保護法の開示請求とのちがいは、請求できる対象です。情報公開法は、だれでも、どんな行政文書でも請求できます。個人情報保護法の行政機関への開示請求は、自分を本人とする保有個人情報が対象です。

審査請求の手続きそのもの(期間や審理のしかた)は審査請求の記事で、不開示決定の取消しを裁判で求める流れは取消訴訟の記事で扱っています。開示を義務づける裁判の種類は取消訴訟以外の抗告訴訟の記事にあります。

試験ではここをまちがえやすい

行政書士試験で問われやすい形です。基礎知識の「情報通信・個人情報保護」の分野とも重なります(宅建試験の範囲ではありません)。

  • 目的に「知る権利」があるとする:1条にあるのは「説明する責務」。「知る権利」の語はない。
  • 請求できる人をしぼる:「日本国民に限る」「利害関係がある人に限る」は誤り。何人も請求できる。
  • 対象の機関を広げる:国会・裁判所・地方公共団体は対象外。会計検査院は対象。
  • 期限の数字:決定は30日以内(補正の日数は数えない)、延長は30日以内、大量の特例は60日。
  • 第三者への意見書の機会:原則は「できる」、1号ロ・2号ただし書・7条で開示するときは「しなければならない」。反対意見書が出たら2週間あける。
  • 審査会への諮問をしなくてよい場合:却下するとき、全部開示するとき(反対意見書がある場合をのぞく)の2つだけ。
  • 裁量的開示の対象:1号の2(匿名加工情報など)は7条の対象から外れている。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
外国に住む外国人は、日本の行政機関の長に対し、情報公開法にもとづく行政文書の開示を請求することができない。

答え:✕ 3条は「何人も」請求できるとしており、国籍や住所による制限はありません。

問2(このサイトのオリジナル問題)
くらし省の大臣は、開示請求があった日から30日以内に開示決定等をしなければならないが、正当な理由があるときは、この期間を30日以内に限り延長できる。

答え:○ 10条1項・2項のとおりです。延長するときは、延長後の期間と理由を遅滞なく書面で知らせます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
開示決定等について審査請求があった場合、行政機関の長は、審査請求を認めて文書の全部を開示するときでも、反対意見書の有無にかかわらず、情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない。

答え:✕ 全部を開示するときは、反対意見書が出ている場合をのぞき、諮問しなくてよいとされています(19条1項2号)。

まとめ

  • 何人も、国の行政機関の長に行政文書の開示を請求できる。理由はいらない。対象は国の行政機関と会計検査院。
  • 行政文書は「組織的に用いるもの」として保有している文書。決裁は要件でない。
  • 不開示情報は1号〜6号(1号の2をふくむ)。部分開示は義務、裁量的開示と存否応答拒否は「できる」。
  • 決定は30日以内、延長30日以内、大量の特例は60日。反対意見書が出たら開示まで2週間。
  • 審査請求があれば原則として審査会に諮問。地方公共団体には努力義務(25条)。

次に読むなら、個人情報保護法の記事がおすすめです。同じ「何人も」で始まる開示請求でも、対象が自分の情報に限られる点がちがいます。2つを並べると、どちらの条文の問題か見分けやすくなるからです。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)