宅建の次に行政書士を受けるなら:使える民法と、新しく増える範囲

宅建試験で学んだ民法は、行政書士試験でもそのまま土台になります。意思表示・代理・時効・不動産の登記・抵当権・契約の解除・賃貸借・相続などです。ただし、行政書士試験では民法がさらに深く問われます。記述式(40字程度で書く問題)、婚姻・親子などの家族の決まり、債権(お金や物を求める権利)の細かい仕組みです。

もう一つ知っておきたいのは、量の差です。当サイトの数え方では、民法は行政書士試験300点のうち76点ほどです。残りの約4分の3は、行政法・憲法・商法(会社法)・基礎法学・基礎知識で、宅建では学ばなかった範囲です。宅建の試験が終わったら、民法は週1回の維持にとどめ、行政法から始めるのが当サイトのすすめる順番です。

宅建の民法のうち、行政書士でもそのまま使えるのはどこか

宅建試験の権利関係は、宅地建物取引業法施行規則8条二号の「土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。」です。土地・建物の売り買いや貸し借りの場面で使う民法が中心になります。行政書士試験の民法も、この部分は同じ条文から問われます。

  • 総則:意思表示(詐欺・強迫・錯誤など)、代理(無権代理・表見代理)、制限行為能力者、時効
  • 物権:不動産の二重譲渡と登記、共有、抵当権
  • 債権:保証、債務不履行と解除、契約不適合責任、賃貸借、不法行為
  • 相続:法定相続分、相続の放棄、遺留分

ここは「もう一度最初から学ぶ」必要はありません。宅建で使った問題集を手元に残し、週に1回、間違えた印のある問題を解き直して記憶をつないでおきます。条文の要件(ルールが当てはまる条件)を言えるかどうかを確かめるのが目的です。宅建の4択で「見れば選べた」知識を、行政書士試験では「自分で言える」知識にしていきます。

行政書士で深く問われるのはどこか

行政書士試験は、科目として「民法」を指定しています。土地・建物の場面に限られないので、宅建では浅くしか触れなかった所まで範囲に入ります。特に次の3つは、行政書士で初めてきちんと学ぶつもりで計画に入れます。

記述式:40字程度で要件と効果を書く

行政書士試験の記述式は、センターの案内で「40字程度で記述するものを出題します。」とされ、1問20点です(令和7年度の配点)。当サイトが令和2年度と令和3年度の問題で数えたところ、記述式3問のうち2問が民法でした(公式の内訳ではありません)。民法の記述2問で40点になります。

宅建は4択だけなので、選択肢を見て正誤を判断する練習が中心だったはずです。記述式では、「だれが、だれに、どんな条件で、何を求められるか」を自分の言葉で書きます。たとえば宅建でも学ぶ表見代理なら、相手方が何を信じ、その信じたことに落ち度がなかったか、という要件を、条文の言葉に近い形で書けるかが問われます。書き方の型は記述式の書き方の記事にまとめています。

親族・相続:家族の決まりと、改正

婚姻・離婚・親子・養子・親権といった家族の決まり(親族)は、土地・建物の場面から離れるので、宅建の勉強では中心になりにくい所です。相続も、行政書士試験では遺言の方式や撤回まで含めて学びます。親族の分野には、令和8年4月1日に主な部分が施行された「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)による改正があります(e-Gov の改正の記録で施行日を確かめました)。離婚後の親権などが変わっているので、教材が改正後の内容かを確かめてください。変わった条文は民法の勉強法の記事で取り上げています。

債権の細かい仕組みと担保

宅建で学ぶ債権は、売買・賃貸借・保証など、取引の場面に結びついた所が中心です。行政書士試験では、債権そのものの仕組みも問われます。たとえば、債権者代位権と詐害行為取消権(お金を返さない人の財産を守る仕組み)、連帯債務、債権譲渡、弁済と相殺、請負と委任、事務管理と不当利得などです。抵当権のほかの担保(留置権・先取特権・根抵当権)も範囲です。宅建で抵当権を学んだ人は、そこを足場にすると入りやすくなります。

宅建で学んだのに、行政書士では使わない所はどこか

行政書士試験の法令等の科目は「憲法、行政法、民法、商法及び基礎法学」です。宅建の範囲のうち、次の部分は科目に挙がっていません。

  • 宅建業法(重要事項説明、37条書面、8種制限など)
  • 法令上の制限(都市計画法、建築基準法、農地法など)
  • 税・価格の評定、土地と建物の性質など
  • 借地借家法・区分所有法などの、民法以外の権利の法律

借地借家法は民法の賃貸借を修正する法律なので、宅建の知識が行政書士の民法の問題に混ざると、答えを取り違えるもとになります。行政書士試験の民法の問題が民法の規定を前提にしているときは、借地借家法の決まりを持ち込まず、民法の賃貸借の条文で考えます。宅建で覚えた「借りる人に有利な決まり」が、民法そのものの決まりなのかを、条文で確かめ直しておきます。

新しく増える範囲はどれくらいか

科目ごとの問数は公式に公表されていません。下の表は、当サイトが令和2年度と令和3年度の問題で数えた問数(両年度とも同じでした)に、配点(択一1問4点、多肢1問8点、記述1問20点、基礎知識1問4点。令和7年度の合否判定基準によるもの)を掛けたものです。年度によって変わることがあります。

科目問数(当サイト調べ)点宅建の知識
民法択一9・記述276点土台になる
行政法択一19・多肢2・記述1112点新しく学ぶ
憲法択一5・多肢128点新しく学ぶ
商法・会社法択一520点新しく学ぶ
基礎法学択一28点新しく学ぶ
基礎知識14問56点新しく学ぶ(足切りあり)
合計60問300点民法は約4分の1

民法の76点のうち40点は記述式です。宅建の知識がそのまま点になりやすいのは、択一の9問(36点)のほうです。つまり、宅建の経験で「すでに持っている」と言えるのは、全体から見るとかなり小さい部分です。

いちばん大きいのは行政法の112点です。センターの案内では、行政法は行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法・地方自治法と、行政の一般的な法理論が中心です。基礎知識は14問で、一般知識・行政書士法などの業務に関わる法令・情報通信と個人情報保護・文章理解から出ます。満点の40%以上という足切りがあり、令和7年度の基準では24点(6問)です。宅建の経験があっても、この2つは最初から積み上げることになります。

宅建の試験後から翌年11月まで、どう組むか

令和9年度の行政書士試験の日程は、まだ公表されていません。センターの案内では、試験は毎年11月の第2日曜日です。出題は「試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令」からなので、令和9年度なら令和9年4月1日の時点の法令が基準になります。これをもとにした、当サイトの目安の組み方です。

時期主にやること民法の扱い
宅建の試験後〜11月1週間ほど休む。自己採点。行政書士の科目と配点を知り、行政手続法を読み始める宅建の問題集で週1回、間違えた問題だけ
12月〜2月行政法の柱(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法)の1周目週1回の維持を続ける
3月〜5月行政法の残り(国家賠償法・地方自治法・一般的な法理論)。4月1日の基準日を過ぎたら改正を確かめる行政書士で深い所(債権・親族・相続)を足す。記述を週1〜2問
6月〜8月憲法、商法・会社法の最低限、基礎知識。夏に申込記述を続ける。択一は過去問の2周目
9月〜試験日全科目の過去問を解き直す。時間を計った通し練習。新しい教材は増やさない間違えた問題だけ

この順番にする理由は2つです。1つ目は、点がいちばん大きく、宅建の経験が使えない行政法に、時間のある前半を当てるためです。2つ目は、民法を後半まで放っておかず、週1回だけでも触れておくことで、宅建で覚えたことを薄れさせないためです。民法を深める作業は、行政法の1周目が終わった春からでも間に合うように、表を組んでいます。

申込の時期は、令和8年度ではインターネットが7月21日から8月24日まででした。令和9年度の日程は、センターの発表で確かめてください。科目ごとに何点を目標にするかは、行政書士試験の得点戦略の型から選ぶと、時期ごとの配分を決めやすくなります。

宅建の結果が出る前から始めてよいか

令和8年度の宅建試験の合格発表は11月25日(水)です。試験日から1か月以上あります。当サイトは、結果を待たずに行政法から始めることをすすめます。行政法は宅建の合否に関係なく、行政書士試験では最初から学ぶ範囲だからです。

自己採点で宅建の合否がはっきりしない人は、宅建の問題集を週1回解く時間を、少しだけ多めに残しておきます。発表の結果、翌年にもう一度宅建を受けると決めた場合も、その時間はそのまま使えます。自己採点のやり方は宅建試験の自己採点の記事にまとめています。

今日からやること

  • 宅建で使った民法の問題集を残し、間違えた印のある問題を週1回解く日を決める。
  • 行政書士試験の科目と配点を確かめ、上の表を自分の手帳に写して、月ごとの科目を書き込む。
  • 行政法の最初の単元として、行政手続法を読み始める。
  • 宅建で覚えた借地借家法の決まりを、民法の賃貸借の決まりと混ぜないように、違う所に印をつけておく。

次に読むなら、行政書士試験の進め方を選ぶページです。残りの期間や使える時間に合わせて、教材と進め方の組み合わせを選べます。まだ宅建と行政書士のどちらを先にするか迷っている人は、どちらから受けるかの記事から読んでください。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)