宅建の「民法の条文に規定されているもの」問題の解き方:条文にある・ないを見分ける手順

宅建の権利関係には、「次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか」のように、ルールが正しいかではなく、民法の条文に書いてあるかを聞く問題があります。ここでつまずくのは、内容は正しいのに条文には書いていない肢です。判例で決まったルールや、借地借家法など別の法律のルールが、その代表です。

解き方は3つの手順です。1つ目、柱書(はしらがき=選択肢の前に置かれた、何を選ぶかを示す文)の「規定されている/いない」と「民法の」に印をつける。2つ目、肢の中身が正しいかを先に判定する。3つ目、正しい肢の出どころを「民法の条文・判例・別の法律」に分ける。この記事では、この3つを自作の肢で練習します。

この練習は、条文を覚える量を減らすためのものではありません。出どころを見分けるには、ふだんの勉強で、ルールごとに「条文か判例か」を意識しておくことが土台になります。

条文問題とはどんな問題か

条文問題は、4つの肢の中から、民法の条文に規定されているもの(または規定されていないもの)を1つ選ぶ問題です。権利関係(民法など)の問題の中に置かれます。不動産適正取引推進機構が公開している問題では、たとえば令和6年度の権利関係にも、「民法の条文として規定されていないもの」を選ぶ形の問題が1問ありました。

当サイトは、全40回2,000問の問いの形を「正しいもの・誤っているもの・個数・組合せ・その他」の5つに分けて数えています(宅建の問いの形を数えた記事)。条文に規定されているかを聞く形は、正誤のどちらでもない聞き方として「その他」にまとめていて、条文問題だけの数は数えていません。

ふつうの「正しいものはどれか」の問題との違いは、判定の物差しです。

問いの形物差し判例のルールの肢
民法の規定及び判例によれば、正しいもの条文と判例正しければ○
民法の条文に規定されているもの民法の条文だけ正しくても「規定されていない」

判決文を読ませる問題(宅建の判決文問題の解き方)が「目の前の文を読む」問題なら、条文問題は「ルールの出どころを知っているか」の問題です。

手順1:柱書に2つの印をつける

最初に、柱書の次の2か所に印をつけます。

  • 「規定されている」か「規定されていない」か:逆を選ぶ失点を防ぎます。「規定されていないもの」の問題では、条文にない肢が答えです。
  • 「民法の」:物差しは民法の条文だけです。借地借家法・区分所有法・不動産登記法に書いてあっても、民法の条文ではありません。

柱書に「判例によれば」の言葉がないことも確かめます。

手順2:肢の中身が正しいかを先に決める

次に、肢ごとに、ふつうの問題と同じように中身の正誤を判定します。

  • 中身が誤っている肢(数字・要件・効果がちがう)は、民法の条文にも書いてありません。「規定されていないもの」の問題なら、それが答えの候補です。
  • 中身が正しい肢だけを、手順3に回します。

この順番にすると、「条文にあるかどうか」を考える肢が減ります。条文の言葉を一字一句覚えていなくても、要件と効果が条文と合っているかを判定できれば、中身の誤った肢は手順2で片づきます。

手順3:正しい肢の出どころを3つに分ける

中身が正しい肢は、出どころで分けます。

出どころ例条文問題では
民法の条文意思能力のない人の法律行為は無効(3条の2)規定されている
判例背信的悪意者は登記がないことを主張できない規定されていない
別の法律借地権は建物の登記で対抗できる(借地借家法10条1項)民法には規定されていない

見分ける手がかり1:令和2年4月の改正で条文になったもの

民法の債権関係の改正(平成29年法律第44号、令和2年4月1日施行)について、法務省の概要資料は、確立した判例や解釈論などの基本的なルールを明文化したと説明しています。たとえば、意思能力のない人の法律行為が無効であること(3条の2)や、賃貸借が終わったときの敷金の返還・原状回復のルール(621条・622条の2)を明記しました。古い参考書で「判例で決まっている」と書かれていたルールが、今は条文にあることがあります。逆に、改正で条文から消えたルールもあります。離れた所にいる人どうしの契約は承諾の通知を発した時に成立する、という旧526条1項は削られ、今は意思表示が相手方に到達した時に効力を生じるという原則(97条1項)によります。テキストの版が古くないかも確かめます。

見分ける手がかり2:判例の言葉は条文の言葉と照らす

「背信的悪意者」「背信的行為」「特段の事情」などは、判例で使われる言葉です。次のように、元の条文と照らすと、条文にはその言葉がないことが分かります。

  • 民法177条は、不動産の物権の変動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めるだけです。登記がないことを主張できない背信的悪意者という考え方は、判例によるものです(最高裁判所第二小法廷昭和43年8月2日判決など)。
  • 民法612条2項は、賃借人が承諾なく第三者に賃借物の使用・収益をさせたときは「賃貸人は、契約の解除をすることができる」と定めます。背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できないという考え方は、判例によるものです(最高裁判所第二小法廷昭和28年9月25日判決)。

見分ける手がかり3:その法律の名前は何か

建物の所有を目的とする土地の賃借権(借地権)や建物の賃貸借には、民法のほか借地借家法のルールがかかります。たとえば、借地権の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有すれば第三者に対抗できる、というルールは借地借家法10条1項です。民法の賃貸借の条文と混ぜないように、「民法」「借地借家法」の見出しを分けてノートを作ると見分けやすくなります。

練習:自作の5つの肢で手順をたどる

次の5つの肢が「民法の条文に規定されているか」を判定してみます。規定されていれば○、規定されていなければ✕です。

問1(このサイトのオリジナル問題)
賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃貸人は、受け取った敷金から賃借人の債務の額を差し引いた残額を返さなければならない。この内容は、民法の条文に規定されている。

答え:○ 分かれ目は、敷金のルールが条文になっているかです。民法622条の2第1項1号は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金から賃借人の債務の額を引いた残りを返すと定めています(同項2号は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときです)。明け渡しの後に返すという順番は、もとは判例(最高裁判所第二小法廷昭和48年2月2日判決)で示されていたため、「判例なので規定されていない」と考えると✕にしやすい肢です。令和2年4月施行の改正で条文に入りました。

問2(このサイトのオリジナル問題)
賃借人が無断で第三者に賃借物を使わせた場合でも、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は契約を解除することができない。この内容は、民法の条文に規定されている。

答え:✕ 分かれ目は、ルールの出どころが条文か判例かです。中身は判例の立場として正しく、最高裁判所第二小法廷昭和28年9月25日判決が示したものです。正しくは、民法612条2項は「契約の解除をすることができる」と定めるだけで、特段の事情による例外は書いていません。中身が正しいことと、条文に書いてあることを取り違えた形です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
建物の所有を目的とする土地の賃借権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、第三者に対抗することができる。この内容は、民法の条文に規定されている。

答え:✕ 分かれ目は、物差しが「民法の」条文であることです。中身は正しいルールですが、定めているのは借地借家法10条1項です。正しくは、民法には規定されていません。民法の条文で賃借権を対抗する方法は、賃貸借の登記です(民法605条)。借地借家法のルールを民法のルールと取り違えた形です。

問4(このサイトのオリジナル問題)
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効となる。この内容は、民法の条文に規定されている。

答え:○ 分かれ目は、意思能力のルールが条文になっているかです。民法3条の2がこのとおり定めています。令和2年4月施行の改正で加わった条文で、それまでは民法に条文がなかったため、「規定されていない」と考えると✕にしやすい肢です。制限行為能力者の取消し(取り消すまでは有効)と、意思能力がない場合の無効も、効果がちがう点で区別します。

問5(このサイトのオリジナル問題)
賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者と転貸の約束をした場合は、第三者にまだ賃借物を使わせていなくても、賃貸人は契約を解除することができる。この内容は、民法の条文に規定されている。

答え:✕ 分かれ目は、条文の要件の一語です。民法612条2項が解除を認めるのは、賃借人が承諾なく「第三者に賃借物の使用又は収益をさせたとき」です。正しくは、約束をしただけでは、この条文の要件に当たりません。手順2で中身を条文の要件と照らせば、出どころを考える前に✕と分かる肢です。612条1項の「転貸することができない」と、2項の解除の要件を取り違えた形です。

5つを分けると、問1・問4が条文にある肢、問2が判例の肢、問3が別の法律の肢、問5が中身のちがう肢です。実際の問題では、この型が4つの肢に混ざります。権利関係の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。

ふだんの勉強で「出どころ」に印をつける

条文問題は、当日の解き方だけでは点になりません。ふだんの勉強で、次の3つを続けます。

  • ルールの横に「条」「判」「借」の印をつける:テキストや問題集のルールの横に、民法の条文なら条番号、判例なら「判」、借地借家法なら「借」と書きます。印のないルールは、条文を引いて確かめます。
  • 条文を引く道具を決めておく:民法の条文は、e-Gov 法令検索で無料で読めます。使い方は六法の記事で説明しています(行政書士試験向けの記事ですが、e-Gov の使い方は宅建でも同じです)。
  • 判例の結論と、元の条文を並べて覚える:「612条2項は解除できる、ただし判例は特段の事情で制限」のように、条文と判例を一行に並べます。条文問題でも、ふつうの問題でも使える形です。

肢を一つずつ判定する点は、個数問題と同じです。個数問題の解き方は宅建の個数問題の記事で扱っています。権利関係全体の優先順位は、宅建の権利関係(民法)の勉強法を見てください。

今日からやること

  • 権利関係の問題を解くとき、柱書の「規定されている/いない」と「民法の」に印をつける、と決める。
  • テキストの権利関係の1単元を選び、ルールの横に「条番号」「判」「借」の印をつける。
  • 印をつけたルールのうち、条番号のあるものを1つ、e-Gov で開いて言葉を確かめる。
  • 判例のルールを1つ選び、元の条文の言葉と並べて一行に書く。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)