国土法の事後届出がいるか:交換・贈与・予約・一団の土地を20の事例で判定する

国土利用計画法(国土法)の事後届出がいるかは、4つの順番で判定すると迷いません。①土地が規制区域・注視区域・監視区域にないか。②その取引が、対価のある土地の権利(所有権・地上権・賃借権など)の移転・設定の契約か。③国や地方公共団体が当事者になっているなど、届出がいらない場合にあたらないか。④取得する人の側で数えて、区域ごとの面積(市街化区域2,000平方メートル、それ以外の都市計画区域5,000平方メートル、都市計画区域の外10,000平方メートル)以上か。4つとも「届出の対象」側なら、取得した人が契約から2週間以内に届け出ます(国土利用計画法14条1項・23条)。

ひとことで言うと、「交換と予約は届出がいる。贈与・相続・時効・抵当権はいらない。一団の土地は買う側で数える」です。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、国土利用計画法が主な論点の問題は38問で、37回に出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)では毎回1問で、9回は問22、平成30年度は問15です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。38問のうち36問、直近10回では10問すべてが「正しいもの」を選ぶ形でした。正しい肢が1つだけなので、それぞれの肢の取引が届出の対象かどうかを、1つずつ判定する力が問われます。

届出の期限・届出先・勧告などの条文の説明は国土利用計画法の届出をわかりやすくで扱っています。この記事は、事例に当てはめる練習に絞ります。

身近な例で考えると

物流会社で土地の取得を担当する、あゆみさんの1年です。会社は市街化区域の土地を中心に探しています。

  1. 春:会社は、Aさんから2,500平方メートルの土地を買った。①区域は規制区域などではない。②対価のある所有権の移転の契約。③届出がいらない場合ではない。④市街化区域で2,000平方メートル以上。→ 会社が、契約から2週間以内に、市町村長を経由して知事に届け出た。
  2. 夏:会社が持つ3,000平方メートルの土地と、Bさんの3,000平方メートルの土地を交換した。お金のやりとりはないが、相手の土地が対価になる。→ 会社もBさんも、取得した土地について届け出る。対価の額は、時価を基準にお金に見積もって書く(23条1項6号)。
  3. 秋:社長の親が、会社に5,000平方メートルの土地をただで譲った(贈与)。対価がないので、「土地売買等の契約」にあたらない。→ 届出はいらない。
  4. 冬:会社は、隣り合うCさんの1,200平方メートルとDさんの900平方メートルを、別々の契約で買った。1つずつは2,000平方メートル未満だが、会社が一団の土地として合計2,100平方メートルを取得する。→ どちらの契約も届け出る。

たとえるなら、4つの判定は「改札の4つのゲート」です。どのゲートで止められても、届出の対象から外れます。ただし本物のルールでは、②と③は「対象にならない理由」が違います。②は条文の定義に入らないもの、③は定義には入るが法律や政令が届出をいらないとしたものです。

条文ではこう決まっている

②の判定:「土地売買等の契約」とは(14条1項、施行令5条)

  • 権利:土地の所有権、地上権・賃借権(施行令5条)、これらの権利の取得を目的とする権利。
  • 対価:「対価を得て行われる移転又は設定に限る」。お金以外の対価(交換で受け取る土地など)も対価になる。
  • 契約:「予約を含む」。
  • 届出の中身(23条1項):対価が金銭以外のときは、時価を基準として金銭に見積もった額を届け出る(6号)。取得後の土地の利用目的も届け出る(5号)。

①③④の判定:届出がいらない場合(23条2項)

  • 面積(1号):市街化区域は2,000平方メートル未満、市街化区域以外の都市計画区域は5,000平方メートル未満、それ以外の区域は10,000平方メートル未満なら届出はいらない。ただし、権利取得者が、その土地を含む一団の土地でこれらの面積以上のものの権利を取得するときは、届出がいる。
  • 区域(2号):規制区域・注視区域・監視区域の土地なら、23条の事後届出はいらない(その区域の許可や事前届出のルールによる)。
  • その他(3号):民事調停法による調停にもとづく場合、当事者の一方か双方が国等である場合、政令で定める場合。
  • 政令で定める場合(施行令17条1号・6条):民事訴訟法の和解、家事事件手続法の調停、農地法3条1項の許可を受ける場合、滞納処分・強制執行・担保権の実行としての競売などで換価する場合など。

判定の順番

  1. 規制区域・注視区域・監視区域の土地か → そうなら23条の事後届出はいらない(許可か事前届出の話になる)。
  2. 所有権・地上権・賃借権(それらの取得を目的とする権利を含む)の移転・設定か → 抵当権・質権などなら対象外。
  3. 対価があるか → 贈与は対象外。交換は対価あり。
  4. 契約か → 相続・時効取得のような契約でないものは対象外。予約は契約に含む。
  5. 国等が当事者か、調停・和解・競売・農地法3条の許可などにあたるか → あたれば対象外。
  6. 権利取得者の側で一団の土地として数え、区域の面積以上か → 以上なら届出。
  7. 届出:権利取得者が、契約を締結した日から起算して2週間以内に、市町村長を経由して知事へ。

20の事例で判定する

特に書いていないときは、土地は規制区域・注視区域・監視区域ではなく、当事者に国等はいないものとします。

契約の種類で決まるもの(市街化区域の3,000平方メートルの土地とする)

事例届出決め手
1 お金を払って買ったいる対価のある所有権の移転
2 親からただでもらったいらない対価がない(贈与)
3 親から相続したいらない契約ではない
4 自分の土地と交換したいる相手の土地が対価
5 売買の予約をしたいる予約も含む
6 一時金を払って地上権を設定したいる地上権は対象の権利
7 銀行のために抵当権を設定したいらない抵当権は対象の権利でない
8 20年占有して時効で取得したいらない契約ではない

面積と一団の土地で決まるもの(売買とする)

事例届出決め手
9 市街化区域で1,900㎡いらない2,000㎡未満
10 市街化区域でちょうど2,000㎡いる「未満」ではない
11 市街化調整区域で4,500㎡いらない5,000㎡未満
12 準都市計画区域で8,000㎡いらない都市計画区域外の10,000㎡未満
13 都市計画区域外の山林12,000㎡いる10,000㎡以上
14 隣り合う1,200㎡と900㎡を同じ会社が買う(市街化区域)両方いる買う側で一団2,100㎡
15 3,000㎡を1,500㎡ずつ別の人に売る(市街化区域)いらない買う側はそれぞれ1,500㎡

届出がいらない場合にあたるもの

事例届出決め手
16 市から3,000㎡を買った(市街化区域)いらない当事者の一方が国等
17 民事調停にもとづいて買ったいらない23条2項3号
18 担保権の実行の競売で買い受けたいらない施行令6条10号
19 区域外の農地15,000㎡を農地のまま買ったいらない農地法3条の許可がいる場合
20 注視区域内の5,000㎡を買う事後届出はいらない事前届出のルールによる
  • 事例4:交換は、双方が土地を取得するので、届出の線を超えていれば双方が届け出ます。交換をめぐる宅建業法・税のルールは宅建の「交換」をまとめてで並べています。
  • 事例8:時効取得は契約ではないので、届出はいりません。時効取得と登記の関係は時効取得をわかりやすくで扱っています。
  • 事例10:23条2項1号は「面積未満」の取引を届出の対象から外す規定なので、ちょうど2,000平方メートルは届出がいります。
  • 事例12:準都市計画区域は都市計画区域の外の区域から指定されるので(都市計画法5条の2第1項)、10,000平方メートルの線を使います。
  • 事例20:注視区域では、契約を結ぶ前に事前届出をします(27条の4)。事後届出がいらない理由は、届出そのものがいらないからではありません。

取り違えやすい組に並べ直す

20の事例を、取り違えやすい組に並べ直します。

組届出がいる届出がいらない
お金のない取引交換贈与
契約か売買の予約相続・時効取得
権利の種類地上権・賃借権の設定(対価あり)抵当権の設定
一団の土地買う側が合計で線を超える売る側だけが線を超える

「お金が動かない」ことだけで判定すると、交換を落とします。「契約の前の段階」だからと判定すると、予約を落とします。取引の形より、「対価があるか」「契約か」「権利は何か」の3つで見ます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 交換を対象外とする型:対価は金銭に限りません。金銭以外の対価は時価で見積もって届け出ます。
  • 予約を対象外とする型:14条1項は「予約を含む」と定めています。
  • 一団の土地を売る側で数える型:一団かどうかは、権利取得者が取得する土地で見ます。
  • 準都市計画区域の面積:都市計画区域の外なので10,000平方メートルです。
  • 抵当権・贈与・相続・時効:どれも対象外ですが、理由が違います(権利の種類、対価、契約でない)。
  • 国等と競売:国等が当事者の取引、調停・和解・競売などは、条文と政令で届出がいりません。
  • 注視区域・監視区域・規制区域:23条の事後届出ではなく、事前届出や許可のルールになります。

宅建試験では、国土法の問は直近10回すべてが「正しいもの」を選ぶ形でした。この記事の当てはめに加えて、届出の期限・届出先・届け出る人・勧告の内容を押さえておくと、問の4つの肢を1つずつ判定できます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
市街化区域内で、Aが所有する3,000平方メートルの甲地と、Bが所有する2,500平方メートルの乙地を交換した。金銭の授受はない。この場合、AとBは、それぞれ取得した土地について国土利用計画法23条の事後届出をしなければならない(規制区域・注視区域・監視区域ではないものとする)。

答え:○ 分かれ目は、金銭の授受のない交換が「対価を得て行われる」移転にあたるかどうかです。国土利用計画法14条1項の土地売買等の契約は、対価を得て行う権利の移転・設定の契約で、対価は金銭に限らず、金銭以外のときは時価を基準として金銭に見積もった額を届け出ます(23条1項6号)。お金が動かないから届出はいらない、と考えると✕にしてしまいます。AもBも市街化区域で2,000平方メートル以上の土地を取得するので、それぞれが権利取得者として届け出ます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
市街化区域内でAが所有する3,000平方メートルの土地を、1,500平方メートルずつに分けて、BとCに別々の売買契約で売った。売主Aから見ると一団の土地で2,000平方メートル以上なので、BとCは、それぞれ事後届出をしなければならない(規制区域・注視区域・監視区域ではないものとする)。

答え:✕ 分かれ目は、一団の土地を誰の側で数えるかです。国土利用計画法23条2項1号のかっこ書きは、「権利取得者」がその土地を含む一団の土地で面積以上のものの権利を取得する場合に届出を求めています。正しくは、BもCも1,500平方メートルしか取得しないので、届出はいりません。買う側が隣り合う土地を合わせて取得する場合(1件ずつは小さくても届出がいる)と取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
都市計画区域外にある12,000平方メートルの山林について、売買の予約を締結した。この場合、予約によって権利を取得することとなる者は、本契約を締結するまで待たずに、予約を締結した日から起算して2週間以内に事後届出をしなければならない(規制区域・注視区域・監視区域ではないものとする)。

答え:○ 分かれ目は、予約が「土地売買等の契約」に含まれるかどうかです。国土利用計画法14条1項は、土地売買等の契約に「予約を含む」と定め、23条1項は、契約を締結した日から起算して2週間以内の届出を求めています。予約は本契約の前の段階だから届出はまだいらない、と考えると✕にしてしまいます。都市計画区域外の線は10,000平方メートルなので、12,000平方メートルは面積の点でも届出の対象です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 判定は、区域 → 権利と対価と契約 → 届出がいらない場合 → 面積と一団の土地、の順。
  • 交換・予約・地上権や賃借権の設定(対価あり)は対象。贈与(対価なし)・相続や時効(契約でない)・抵当権(権利の種類)は対象外。
  • 面積は、市街化区域2,000、そのほかの都市計画区域5,000、都市計画区域の外(準都市計画区域を含む)10,000平方メートル。「未満」が対象外なので、ちょうどの面積は届出がいる。
  • 一団の土地は、権利取得者の側で数える。
  • 国等が当事者、調停・和解・競売、農地法3条の許可がいる場合は届出不要。注視区域などは事前届出や許可のルール。

次に読むなら、国土利用計画法の届出をわかりやすくがおすすめです。届出の後の勧告・公表と、届出をしなかったときの効果を確かめると、国土法の問の残りの肢も判定できます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

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