付合・混和・加工をわかりやすく:他人の土地に植えた物、借りた家の増築はだれのものか

ひとことで言うと、持ち主のちがう物がくっついたり混ざったりして離せなくなったとき、できあがった物をだれのものにするかを決めるルールです(民法242条〜248条)。不動産にくっついた物は、原則として不動産の持ち主のものになります。所有権を失った人は、お金(償金=しょうきん)を請求できます。

この記事では、①不動産の付合(ふごう)と242条ただし書の「権原(けんげん)」、②賃借人(借りている人)が増築した部分の判例、③動産の付合・混和(こんわ)・加工(かこう)、④償金の請求、の順に扱います。

身近な例で考えると

登場人物は、平屋の家と畑を持っているさきさんと、その家を借りて住んでいるそうたさんです。

  1. そうたさんは、さきさんから平屋の家を借りている。
  2. 子どもが生まれて手狭になったので、さきさんの承諾をもらい、自分のお金で平屋の上に2階の部屋を建て増しした。
  3. 2階へは、1階の部屋の中にあるはしご段を通らないと上がれない。
  4. 数年後、そうたさんは「2階は自分のお金で建てたのだから、自分のものだ」と考えた。

242条本文によれば、不動産の持ち主は、その不動産に「従として付合した物」の所有権を取得します。ただし書は、「権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」としています。権原とは、他人の物を使う法律上の根拠(賃借権や地上権など)のことです。そうたさんは賃借人で、さきさんの承諾もあります。それなら2階はそうたさんのもの、と考えたくなります。

ところが、よく似た事案で、最高裁判所第三小法廷昭和44年7月25日判決は、2階部分を家の持ち主のものとしました。2階は既存の建物の構造の一部で、それだけでは取引上の独立性がないからです。2階に独立の登記がされていても、区分所有権(くぶんしょゆうけん=建物の一部屋ごとに持つ所有権)の対象にはならない、としました。そして、承諾を受けていても242条ただし書の適用はなく、所有権は建てた当初から建物の持ち主にある、と述べています。

たとえるなら、ケーキに後からのせたいちごは取り外せますが、生地に混ぜこんだいちごは取り出せない、という違いです。ただし本物のルールでは、取り外せるかどうかの物理的な話だけでなく、取引のうえで独立した物として扱えるかで判断します。

条文ではこう決まっている

条場面だれのものになるか
242条不動産に物が従として付合した不動産の持ち主。ただし権原で附属させた人の権利は妨げない
243条持ち主のちがう動産が、こわさないと離せなくなった(過分の費用がかかるときも同じ)主たる動産の持ち主
244条付合した動産に主従の区別がつかない付合した時の価格の割合で共有
245条持ち主のちがう物が混ざって見分けられない(混和)243条・244条を準用
246条他人の動産に工作を加えた(加工)原則は材料の持ち主。例外は加工者
  • 加工の例外(246条1項ただし書):工作によって生じた価格が、材料の価格を著しく超えるときは、加工者が加工物の所有権を取得します。
  • 加工者が材料の一部を出したとき(246条2項):加工者が出した材料の価格に、工作で生じた価格を足したものが、他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者のものになります。
  • ほかの権利(247条):所有権が消えた物の上にあった他の権利(担保など)も消えます。ただし、その物の持ち主が合成物などの単独所有者になったときは合成物の上に、共有者になったときはその持分の上に、その権利が残ります。
  • 償金(248条):242条〜247条で損失を受けた人は、不当利得の規定(703条・704条)に従って、償金を請求できます。

判例で決まっていること

判例場面結論
最三小 昭和44年7月25日賃借人が承諾を得て平屋の上に2階を増築。出入りは1階の部屋の中のはしご段だけ独立の登記があっても区分所有権の対象にならない。242条ただし書の適用はなく、建物の持ち主のもの
最一小 昭和54年1月25日まだ建物になっていない建前に、第三者が材料を出して工事し、建物に仕上げた建物の所有権は246条2項(加工)で決める
最三小 昭和35年3月1日土地を取得したが登記をしないまま、その土地に木を植えたその木の所有権を第三者に主張するには、公示方法が要る

昭和54年の判決は、比べる時点も示しています。建前が屋根や壁をそなえて法律上の建物になった時点の状態で比べるのではなく、加工者の工事が一応終わったと認められる時点までに加えた工事と材料の価格を、建前の価格と比べて決めます。昭和35年の判決は、植えた木がだれのものかを第三者に主張する場面の話です。土地の登記をしていない人が植えた木を自分のものだと言うには、外から分かる公示方法が要る、としました。

当てはまる例・当てはまらない例

  • 当てはまる(増築部分が建物の一部になった):上のそうたさんの例。2階が独立した建物として扱えないので、さきさんの家に付合し、さきさんのものです。そうたさんは、248条の償金や、賃借人の有益費の償還(608条2項)を考えることになります。
  • ただし書が問題になる場面(権原にもとづいて植えた物):そうたさんが、さきさんから畑も借りて、野菜を植えた。242条ただし書の原文は「ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」です。賃借権という権原にもとづいて植えた野菜は、このただし書により植えたそうたさんのものとして残る、と説明されるのが一般的です。ただし、借りた畑の作物がだれのものかを直接判断した最高裁判所の判例は、この記事では確かめられていません。また、植えた木を土地とは別に自分のものだと第三者に主張する場面では、公示方法が要るとした判例があります(上の表の昭和35年判決)。
  • 当てはまる(動産どうしの付合):そうたさんの自転車に、友人のりこさんのライトが、外すと両方こわれる形で取り付けられた。主たる動産である自転車の持ち主、そうたさんのものになります(243条)。りこさんは償金を請求できます(248条)。
  • ひっかけやすい(承諾があれば増築部分は賃借人のもの):承諾は権原の一つとして考えたくなりますが、増築部分が構造上・取引上の独立性を欠くときは、判例は242条ただし書を使わず、建物の持ち主のものとしました。
  • ひっかけやすい(建前を仕上げた建物):建築途中の建前は、まだ不動産ではありません。そこへ別の業者が材料を出して建物に仕上げた場合は、不動産の付合(242条)ではなく、加工の246条2項で決めます(昭和54年判決)。

似ているルールとの違い

借りた家に手を入れた人がお金を取り戻す道は、248条の償金だけではありません。賃貸借には608条があります。

規定だれが・だれに中身
248条(償金)付合・混和・加工で損失を受けた人から不当利得の規定(703条・704条)に従って請求
608条1項(必要費)賃借人から賃貸人に賃貸人が負担すべき必要費は、直ちに償還を請求できる
608条2項(有益費)賃借人から賃貸人に賃貸借の終了の時に、196条2項に従って償還

196条2項は、有益費について、価格の増加が現存する場合に限り、回復者(ここでは賃貸人)の選択に従い、支出した金額か増価額を償還させる、と定めています。必要費は「直ちに」、有益費は「賃貸借の終了の時に」という時期の違いが、賃貸借の論点の取り違えの相手になります。賃貸借の全体は賃貸借の記事で扱っています。

動産を「だれのものにするか」という点では、即時取得(192条)とも区別します。即時取得は、持ち主でない人から動産を買った人が所有権を取得する話で、物がくっついたかどうかとは関係がありません。即時取得の要件は即時取得の記事で確かめられます。

試験ではここをまちがえやすい

  • 権原があれば常に附属させた人のもの、とする形:昭和44年判決は、既存の建物の構造の一部となり、それだけでは取引上の独立性がない増築部分について、賃貸人の承諾があっても242条ただし書の適用はないとしました。権原があることだけで、附属させた人のものになるとは限りません。
  • 独立の登記があれば区分所有、とする形:昭和44年判決は、独立の登記がされていても区分所有権の対象にならないとしました。登記の有無ではなく、構造と利用の独立性で決まります。
  • 加工の「著しく」:材料の持ち主が原則で、加工者のものになるのは、工作で生じた価格が材料の価格を著しく超えるとき(246条1項ただし書)。加工者が材料の一部を出したときは、2項の「足して超えるとき」に変わります。
  • 主従の区別がつかない動産:主たる動産の持ち主のもの(243条)ではなく、付合の時の価格の割合で共有(244条)。混和は、243条・244条の準用です(245条)。
  • 建前の工事:不動産の付合(242条)ではなく、加工(246条2項)で決める(昭和54年判決)。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
Aの平屋を借りているBが、Aの承諾を得て平屋の上に2階部分を増築し、2階について独立の登記をした。2階への出入りは1階の部屋の中のはしご段しかない。この場合、2階部分は区分所有権の対象とならない。

答え:○ 分かれ目は、増築部分に構造上・取引上の独立性があるかです。最高裁判所第三小法廷昭和44年7月25日判決は、同じような事案で、2階部分は既存の建物の構造の一部でそれ自体では取引上の独立性がなく、独立の登記があっても区分所有権の対象にあたらないとしました。承諾も登記もあるので✕に見えますが、承諾を得ていても242条ただし書の適用はないとされ、所有権は建てた当初から建物の持ち主Aにあります。

問2(このサイトのオリジナル問題)
Aが建築を始めたが、まだ建物といえる段階に至っていない建前に、Bが材料を出して工事をし、建物に仕上げた。この建物の所有権がだれに帰属するかは、民法242条(不動産の付合)によって決める。

答え:✕ 分かれ目は、付合と加工のどちらの規定を使うかです。最高裁判所第一小法廷昭和54年1月25日判決は、未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し建物に仕上げた場合、建物所有権の帰属は246条2項に基づいて決めるとしました。正しくは、加工の規定(246条2項)で決めます。建前はまだ不動産ではないので、不動産に物がくっつく242条の場面ではありません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
Aの米10キログラムとBの米10キログラムが、倉庫で混ざって見分けがつかなくなった。主従の区別ができない場合、AとBは、混ざった米を、混ざった時の価格の割合に応じて共有する。

答え:○ 分かれ目は、混和に何の規定を当てはめるかです。混和には独自の帰属の規定がなく、245条が動産の付合の243条・244条を準用しています。主従の区別ができないときは、244条により、付合の時の価格の割合で共有します。混和には決まりがないと思うと迷いますが、準用で決まります。主たる物がある場合に、その持ち主が単独で所有するのは243条の場面です。

この分野の○✕は、行政書士の5分○✕ドリルの「民法」で続けて解けます。

まとめ

  • 不動産に従として付合した物は、不動産の持ち主のもの。権原で附属させた人の権利は妨げない(242条)。
  • 独立性のない増築部分は、承諾や独立の登記があっても建物の持ち主のもの(昭和44年判決)。
  • 動産の付合は主たる動産の持ち主、主従がなければ価格の割合で共有。混和はその準用(243条〜245条)。
  • 加工物は材料の持ち主が原則。工作の価格が材料の価格を著しく超えれば加工者。建前の工事は246条2項で決める(昭和54年判決)。
  • 所有権を失った人は、703条・704条に従って償金を請求できる(248条)。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、e-Gov法令検索で令和8年4月1日時点の民法を確かめました。判例は、裁判所ウェブサイトで裁判年月日・法廷・事件番号・判示事項・裁判要旨を確かめ、昭和44年の判決は判決全文も確かめました。

このサイトで次に読むなら、地上権の記事です。他人の土地に建物や木を持つための権原の代表である地上権と、賃借権との違いを確かめられます。