不動産を売ったときの特例の一覧:5,000万円・3,000万円(自宅・相続した空き家)・交換の特例・併用の可否

土地や建物を売ってもうけが出たときの特例は、「もうけから一定額を引く特別控除」と、「課税を先に送る特例」に分かれます。特別控除は、公共事業のために売ったとき5,000万円、自宅を売ったとき3,000万円、相続した空き家を売ったとき3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)などで、同じ年の特別控除は合わせて5,000万円が限度です(租税特別措置法33条の4・35条・36条)。課税を先に送るのは、固定資産の交換の特例(所得税法58条)や、収用の代替資産の特例、自宅の買換え特例です。

ひとことで言うと、「控除は年5,000万円まで。控除と繰延べは、どちらかを選ぶ組み合わせが多い」です。収用のときは、5,000万円控除と代替資産の特例のどちらか一方を選びます。自宅の3,000万円控除は、10年超の軽減税率とは重ねられますが、買換え特例や住宅ローン控除とは重ねられません。

この記事の数字と要件は、令和8年4月1日現在の法令によります(国税庁のタックスアンサーも「令和8年4月1日現在法令等」と表示しています)。特例の多くには適用の期限があり、税制改正で変わることがあります。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、所得税(譲渡所得)が主な論点の問題は21問で、21回に出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)では令和3年度10月試験と令和元年度の2問だけで、ほかの8回の問23は登録免許税・印紙税・住宅ローン控除でした(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。21問のうち20問が「正しいもの」を選ぶ形でした。

自宅を売ったときの3,000万円控除・10年超の軽減税率・買換え特例と、長期・短期の分け方は譲渡所得をわかりやすくで扱っています。この記事は、それ以外の特例と、特例どうしの組み合わせに絞ります。

身近な例で考えると

人物立場売ったもの
かずおさん市の道路を広げる事業の地権者自宅の庭の一部の土地
まいさん3人きょうだいの長女亡くなった父が1人で住んでいた家と敷地
りょうへいさん農家自分の畑と、隣の農家の畑を交換
  1. かずおさん:市から、道路を広げるために土地を売ってほしいと最初に申出があった。かずおさんは、申出から4か月後に売った。公共事業のために売った土地なので、もうけから最高5,000万円を引ける(措法33条の4)。代わりの土地を買って課税を先に送る代替資産の特例(措法33条)もあり、どちらか一方を選ぶ。
  2. まいさん:父は昭和50年に建てた家に1人で住んでいて、亡くなった。まいさんたち3人が家と敷地を相続し、空き家のまま家を取り壊して、敷地を8,000万円で売った。相続した空き家の特例で、相続人が3人以上なので、1人あたり最高2,000万円を引ける(措法35条3項)。
  3. りょうへいさん:10年以上耕してきた畑を、隣の農家が10年以上耕してきた同じくらいの価値の畑と交換し、そのまま畑に使う。交換の特例を使えば、交換した時には譲渡がなかったものとされ、課税は先に送られる(所得税法58条)。

たとえるなら、特例は「税金の割引券」と「税金の支払い延期券」です。割引券(特別控除)は年に5,000万円分まで使え、延期券(繰延べ)は、あとで手放したときにまとめて精算します。ただし本物のルールでは、同じ売却に割引券と延期券を重ねて使える組み合わせは限られています。

条文と国税庁の説明ではこう決まっている

特別控除の一覧(措法33条の4〜35条の3・36条)

国税庁の説明(No.3223)が挙げる特別控除は次のとおりです。

売り方控除の上限根拠
公共事業のために売った5,000万円措法33条の4
自宅(居住用財産)を売った3,000万円措法35条1項・2項
相続した空き家を売った3,000万円(相続人3人以上は2,000万円)措法35条3項
特定土地区画整理事業などのために売った2,000万円措法34条
特定住宅地造成事業などのために売った1,500万円措法34条の2
平成21・22年に取得した国内の土地を売った1,000万円措法35条の2
農地保有の合理化などのために売った800万円措法34条の3
低未利用土地などを売った100万円措法35条の3
  • 控除額は、特例ごとのもうけ(譲渡益)が限度。
  • 年の限度(措法36条):特別控除の額は、その年の譲渡益の全体を通じて、合計5,000万円が限度。5,000万円に達するまでは、表の上から順に控除する(表は国税庁 No.3223 の順。国税庁の説明では、空き家は自宅と同じ35条の行に入っています)。

公共事業のために売ったとき(措法33条・33条の4)

  • 2つの特例:代わりの資産を取得して課税を先に送る代替資産の特例と、5,000万円の特別控除。「どちらか一方の特例の適用を受けることができます」(国税庁 No.3552)。
  • 5,000万円控除の主な要件:売った土地建物が固定資産であること。その年に公共事業のために売った資産の全部について代替資産の特例を受けていないこと。最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに売っていること。公共事業の施行者から最初に申出を受けた人(相続・遺贈で取得した人を含む)が売っていること。
  • 同じ公共事業で、2以上の年にまたがって売ったときは、最初の年だけ受けられる。
  • 国税庁の説明には、所有期間の要件は挙がっていない。

相続した空き家を売ったとき(措法35条3項・5項)

  • 家の要件:昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物ではないこと。相続の開始の直前に、亡くなった人以外に住んでいた人がいなかったこと(老人ホームに入っていたなどの事情がある場合の扱いもある)。
  • 売り方の要件:相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。売った代金が1億円以下であること。相続の時から売る時まで、事業・貸付け・居住に使っていないこと。
  • 耐震か取壊し:売る時に一定の耐震基準を満たすか、家を全部取り壊してから敷地を売る。令和6年1月1日以後の売却なら、売った後、売った年の翌年2月15日までに耐震基準に適合させるか取り壊した場合も対象(国税庁 No.3306)。
  • 相続人が3人以上:令和6年1月1日以後の売却では、控除の上限が2,000万円になる。
  • 使えない場合:親子・夫婦など特別の関係がある人への売却。同じ家と敷地について、収用等の特別控除などほかの特例の適用を受けている場合。
  • 自宅との関係:空き家の売却は、1項の「居住用財産を譲渡した場合」に当たるものとみなされます(35条3項)。1項は、その年中に当たることになった全部の資産の譲渡について3,000万円を控除する形なので、同じ年に自宅と空き家を売っても、控除は合わせて3,000万円までです。

固定資産の交換の特例(所得税法58条)

  • 要件(国税庁 No.3502):交換に出す資産も受け取る資産も固定資産。土地と土地、建物と建物のように同じ種類。自分も相手も1年以上持っていたもので、相手が交換のために取得したものでない。受け取った資産を、交換に出した資産の直前と同じ用途に使う。2つの資産の時価の差額が、高いほうの時価の20%以内。
  • 効果:譲渡がなかったものとされる。交換差金(差額を埋めるお金)を受け取ったら、その分は課税される。

自宅を買い換えて損が出たとき(措法41条の5)

  • 売った自宅(売った年の1月1日で所有期間5年超)に譲渡損失が出て、新しい自宅を買ったときは、その損失をほかの所得(給料など)から差し引ける(損益通算)。引ききれない分は、翌年以後3年内に繰り越せる。
  • 新しい自宅は床面積50平方メートル以上、償還期間10年以上の住宅ローンがあることなどが条件。
  • 住宅ローン控除と併用できる(国税庁 No.3370)。

相続した土地の所有期間(所得税法60条)

  • 贈与・相続(限定承認を除く)・遺贈で取得した資産を売ったときは、取得した人が「引き続きこれを所有していたものとみなす」。亡くなった親が昔から持っていた土地なら、相続した人がすぐ売っても、親が取得した時から数えて長期か短期かを判定する。

所有期間と主な条件の表

特例所有期間の要件主な条件
公共事業の5,000万円控除国税庁の説明になし最初の申出から6か月を経過した日まで
自宅の3,000万円控除なし住まなくなって3年を経過する日の年末まで、特別の関係者は不可
空き家の3,000万円控除なし(相続から3年を経過する日の年末まで)昭和56年5月31日以前の建築、1億円以下
自宅の軽減税率10年超3,000万円控除と併用できる
交換の特例1年以上(相手も)同じ種類・同じ用途・差額20%以内
買換えで損が出たとき5年超新居50㎡以上・ローン10年以上

組み合わせは使えるか

組み合わせ使えるか根拠
公共事業の5,000万円控除と代替資産の特例どちらか一方国税庁 No.3552
自宅の3,000万円控除と軽減税率使える国税庁 No.3302・3305
自宅の3,000万円控除と買換え特例使えない措法35条2項(国税庁 No.3302)
自宅の3,000万円控除と住宅ローン控除前後の期間に重なると使えない措法41条
買換えの損失の繰越しと住宅ローン控除使える国税庁 No.3370
同じ年の自宅と空き家の控除合わせて3,000万円まで措法35条1項・3項
同じ年の複数の特別控除合わせて5,000万円まで措法36条

自宅の特例どうしの組み合わせの理由は、譲渡所得の記事で説明しています。交換の特例を、宅建業法の報酬や国土法の届出と並べたものは宅建の「交換」をまとめてにあります。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(収用の6か月):かずおさんは、最初の申出から4か月後に売った。6か月を経過した日までなので、5,000万円控除の要件を満たす。
  2. 当てはまらない(申出から時間がたった売却):最初の申出から9か月後に売ったときは、6か月を経過した日を過ぎているので、5,000万円控除は受けられない。
  3. 当てはまる(空き家の取壊し):まいさんは家を取り壊してから敷地を売った。家が耐震基準を満たしていなくても、取り壊した後の敷地の売却なら対象になる。
  4. 当てはまらない(マンションの一室):亡くなった父が1人で住んでいた分譲マンションの一室を相続して売った。区分所有建物は、空き家の特例の対象外。
  5. ひっかけやすい(空き家を貸していた):相続した後、売るまでの間、空き家を知人に貸していた。相続の時から売る時まで貸付けに使っていないことが要件なので、対象外。
  6. ひっかけやすい(交換差金):りょうへいさんが、畑の交換で差額のお金も受け取った。差額が高いほうの時価の20%以内なら交換の特例は使えるが、受け取ったお金の分は課税される。

試験ではここをまちがえやすい

  • 年の限度:特別控除は、特例ごとの上限とは別に、その年の合計で5,000万円まで。「5,000万円と3,000万円で8,000万円」とする形は誤りです。
  • 収用の選択:5,000万円控除と代替資産の特例は、どちらか一方。
  • 空き家の建築時期:昭和56年5月31日以前に建築された家。区分所有建物は対象外。
  • 空き家の相続人の数:令和6年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上なら上限は2,000万円。
  • 空き家の代金:1億円以下。
  • 交換の特例の数字:1年以上の所有(相手も)、差額は高いほうの時価の20%以内。交換差金には課税。
  • 相続した土地の所有期間:亡くなった人の所有期間を引き継ぐ。相続の日から数え直さない。

宅建試験では、税の問(問23・問24)で譲渡所得が出る回は多くありませんが、出たときは「正しいもの」を選ぶ形がほとんどでした。特例の数字の入れ替えと、併用できるかの組み合わせが判断の中心になります。税の分野の年ごとの出方は宅建の税の出題傾向で並べています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
昭和50年に建築された一戸建てに1人で住んでいた父が亡くなり、子B・C・Dの3人が家と敷地を相続した。3人は、相続の時から空き家のまま家を取り壊し、令和8年に敷地を7,000万円で売った。この場合、相続した空き家の特例による特別控除の上限は、1人あたり2,000万円である(そのほかの要件は満たしているものとし、令和8年4月1日現在の法令による)。

答え:○ 分かれ目は、相続人の数による控除の上限です。国税庁の説明(No.3306)と租税特別措置法35条によると、相続した空き家の特例の上限は3,000万円ですが、令和6年1月1日以後の売却で、家と敷地を相続した相続人が3人以上のときは2,000万円になります。空き家の特例は3,000万円、とだけ覚えていると✕にしてしまいます。建築時期(昭和56年5月31日以前)と代金(1億円以下)の要件は、この事例では満たしています。

問2(このサイトのオリジナル問題)
公共事業の施行者から最初に買取りの申出を受け、6か月以内に土地を売った個人は、同じ売却について、5,000万円の特別控除と、代わりの資産を取得したときの代替資産の特例の両方を受けることができる。

答え:✕ 分かれ目は、収用のときの2つの特例を重ねられるかどうかです。国税庁の説明(No.3552)は、公共事業のために土地建物を売った場合は、代替資産の特例と5,000万円の特別控除の「どちらか一方の特例の適用を受けることができます」としています。正しくは、両方は受けられず、どちらかを選びます。重ねて使える組み合わせの代表は、自宅の3,000万円控除と10年超の軽減税率で、その組み合わせと取り違えた文です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
同じ年に、公共事業のために土地を売って5,000万円の特別控除の対象となり、別に自宅を売って3,000万円の特別控除の対象にもなった。この場合、その年の譲渡益からは、合計8,000万円まで特別控除を差し引くことができる(それぞれの譲渡益は控除額より大きいものとする)。

答え:✕ 分かれ目は、特別控除の年の限度額です。租税特別措置法36条と国税庁の説明(No.3223)は、特別控除の額は、その年の譲渡益の全体を通じて合計5,000万円が限度としています。正しくは、2つの特例の対象になっても、その年に差し引けるのは合計5,000万円までです。特例ごとの上限(5,000万円・3,000万円)を足し合わせられると考えて、年の限度と取り違えた文です。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「税・その他」で続けて解けます。

まとめ

  • 特別控除は、公共事業5,000万円、自宅3,000万円、相続した空き家3,000万円(相続人3人以上は2,000万円)など。その年の合計は5,000万円まで。
  • 公共事業のときは、5,000万円控除と代替資産の特例のどちらか一方。最初の申出から6か月を経過した日までに売る。
  • 空き家は、昭和56年5月31日以前の建築・区分所有建物でない・1億円以下・相続から3年を経過する日の年末まで・耐震か取壊し。
  • 交換の特例は、1年以上・同じ種類・同じ用途・差額20%以内で、課税の繰延べ。交換差金には課税。
  • 相続した資産は、亡くなった人の所有期間を引き継ぐ(所得税法60条)。

次に読むなら、譲渡所得をわかりやすくがおすすめです。この記事の表に出てくる自宅の3,000万円控除・軽減税率・買換え特例を、長期・短期の判定と合わせて計算の流れで確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

法令は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。国税庁のタックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」の版です。

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