建築協定をわかりやすく:全員の合意がいる場面・いらない場面(宅建 建築協定)

建築協定(けんちくきょうてい)は、住宅地などの土地の持ち主や借地権者が、建物の基準(高さ・用途・デザインなど)を自分たちで約束し、特定行政庁(建築の許可などをする市長や知事)の認可を受けるしくみです。建築基準法69条〜77条に定めがあります。

ひとことで言うと、「結ぶ・変えるは全員の合意、やめるは過半数の合意。どれも特定行政庁の認可がいる」ルールです。認可されると、あとからその区域の土地を買った人にも協定が効きます。

宅建試験では、この「全員か過半数か」と、後から来た人への効力、一人で結ぶ協定(一人協定)の3年の数字が、正誤の分かれ目になりやすい所です。

身近な例で考えると

登場人物は3人です。住宅地「さくら台」の土地の持ち主の代表=ひろしさん、同じ住宅地の土地の持ち主=のぞみさん、あとからさくら台の土地を買う人=かずやさんです。

さくら台は、市の条例で、建築協定を結べる区域になっています。ひろしさんたちは、静かな住宅地を守るため、「建物は2階建てまで」「敷地は分けない」という協定を結びたいと考えました。

  1. ひろしさんたちは、協定の区域・基準・有効期間・違反したときの措置を書いた協定書を作る。
  2. 区域内の土地の持ち主と借地権者の全員が合意する(70条3項)。のぞみさんが反対すると、区域にのぞみさんの土地を入れたままでは結べない。
  3. 協定書を特定行政庁に出し、認可を申請する(70条1項)。市長が公告し、20日以上の相当の期間、関係者が見られるようにする(71条)。そのあと公開の意見の聴取が行われる(72条)。
  4. 特定行政庁が認可し、公告する(73条)。
  5. 数年後、協定に合意した持ち主から、かずやさんが土地を買った。かずやさんは、協定に合意していなくても、協定に従う(75条)。
  6. さらに数年後、持ち主の多くが「もう協定はいらない」と考えた。協定をやめる(廃止する)には、過半数の合意で特定行政庁の認可を受ける(76条1項)。

たとえるなら、建築協定は「ご近所どうしの申し合わせに、役所のはんこを押してもらったもの」です。はんこがあるので、あとから引っ越してきた人にも効きます。ただし本物のルールでは、どこでも結べるわけではなく、市町村の条例で定めた区域の中だけです。

条文ではこう決まっている

  • 結べる区域と中身(69条):市町村は、区域の一部について、土地の所有者と借地権者が、建築物の敷地・位置・構造・用途・形態・意匠・建築設備の基準について協定を結べる旨を、条例で定められる。住宅地としての環境や商店街としての利便を高度に維持増進するためなど、必要と認める場合。
  • 認可の申請(70条1項):協定書を作り、特定行政庁に出して認可を受けなければならない。
  • 全員の合意(70条3項):協定書には、土地の所有者等の全員の合意がいる。ただし、借地権の目的になっている土地は、その土地の所有者ではなく、借地権者の合意があれば足りる(土地の所有者以外の全員の合意で足りる)。
  • 公告と縦覧(71条)・意見の聴取(72条)・認可(73条):20日以上の相当の期間、関係人の縦覧に供し、公開の意見の聴取をしたうえで、基準に合えば認可し、公告する。
  • 変更(74条):認可を受けた協定を変えるときも、特定行政庁の認可がいる。手続は70条〜73条が準用されるので、変更にも全員の合意がいる。
  • 効力(75条):認可の公告があった日以後に、区域内の土地の所有者等になった人にも効力が及ぶ。ただし、もともと合意をしなかった人(借地の場合の土地の所有者など)から土地を承継した人は除かれる。
  • 後からの加入(75条の2):区域内の土地の所有者で協定の効力が及ばない人(合意しなかった人など)は、認可の公告の後いつでも、特定行政庁に書面で意思を表示して、協定に加われる。
  • 廃止(76条1項):協定の効力が及ぶ土地の所有者等の過半数の合意で廃止を決め、特定行政庁の認可を受ける。
  • 共有の扱い(76条の2):土地を共有している人たちは、合意の数え方では、まとめて1人の所有者等とみなされる。
  • 一人協定(76条の3):区域内の土地の所有者が1人だけで、ほかに所有者等がいない場合、その1人が協定を定めて認可を受けられる。認可の日から3年以内に、区域内に2人以上の所有者等ができた時から、ふつうの協定と同じ効力を持つ。
  • 建物の借主(77条):協定の基準が建物の借主の権限に関係するときは、建物の借主も土地の所有者等とみなされる。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(全員の合意):さくら台の土地の持ち主10人のうち9人が合意。のぞみさん1人が反対している。全員の合意がないので、のぞみさんの土地を含めた区域では協定を結べない。
  2. ひっかけやすい(借地の場合):区域内の土地の一つに借地権が付いている。合意がいるのは借地権者で、その土地の所有者(地主)の合意は数に入らない(70条3項ただし書)。
  3. 当てはまる(後から買った人):協定に合意した持ち主から、認可の公告の後にかずやさんが土地を買った。かずやさんにも協定が効く(75条)。
  4. 当てはまらない(合意しなかった地主の土地):2の地主(合意していない)から、その土地を買った人。75条のかっこ書で除かれるので、この人には効力が及ばない。
  5. ひっかけやすい(変更と廃止):「2階建てまで」を「3階建てまで」に変える。変更なので全員の合意がいる。協定そのものをやめるなら、過半数の合意で足りる。
  6. 当てはまる(一人協定):分譲前の住宅地を1社で持つ開発会社が、一人で協定を定めて認可を受ける。分譲が進み、認可の日から3年以内に持ち主が2人以上になった時から、ふつうの協定として効力が出る。

似ているルールとの違い

建築協定と同じように「みんなで決める建物のルール」には、マンションの規約(区分所有法)と、地区計画(都市計画法)があります。だれが決め、何人の賛成がいるかで比べます。

比べる点建築協定マンションの規約地区計画
決める人土地の所有者等区分所有者の集会市町村(都市計画)
作る・変える全員の合意+認可過半数の出席+出席者の4分の3以上都市計画の手続
やめる過半数の合意+認可作る・変えると同じ都市計画の手続
後から来た人効力が及ぶ(75条)効力が及ぶ(46条1項)区域内ならだれでも届出

マンションの規約は、区分所有者と議決権の各過半数が出席した集会で、出席者とその議決権の各4分の3以上の賛成で作ったり変えたりします(区分所有法31条1項、令和8年4月1日施行の条文)。建築協定の「全員」とは数字がちがいます。規約のくわしいルールは区分所有法の記事で確かめてください。

地区計画は、住民どうしの約束ではなく、市町村が都市計画として決めるルールです。区域内で建物を建てる人は、着手の30日前までに市町村長へ届け出ます。くわしくは地区計画の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 廃止を全員にする型:結ぶ・変えるは全員、やめるは過半数。「廃止にも全員の合意がいる」は誤りです。
  • 認可を落とす型:廃止も、合意だけでは足りず、特定行政庁の認可がいります。
  • 認可する人の型:認可するのは特定行政庁です。市町村長が公告や縦覧をしますが、認可とは別の手続です。
  • 条例の型:建築協定を結べるのは、市町村が条例で定めた区域の中だけです。条例がなければ、全員が合意しても建築協定にはなりません。
  • 借地の型:借地の土地は、借地権者の合意で足ります。地主の合意を求める肢に注意します。
  • 一人協定の型:認可の日から3年以内に、2人以上になった時から効力。「認可の時から効力」「5年以内」などの入れかえに注意します。

宅建試験では、建築基準法のうち、合意の割合や認可の要否を押さえておきます。建築基準法の中での位置づけは建築基準法の覚え方の記事で地図にしています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
さくら台の建築協定の区域内の土地の所有者等が、認可を受けた建築協定を廃止しようとする場合には、その全員の合意をもって廃止を定め、特定行政庁の認可を受けなければならない。

答え:✕ 分かれ目は廃止に必要な合意の数です。廃止は、協定の効力が及ぶ土地の所有者等の「過半数の合意」で定め、特定行政庁の認可を受けます(建築基準法76条1項)。正しくは全員ではなく過半数です。認可が要る点は合っているので○に見えます。取り違えの相手は締結と変更で、こちらは全員の合意が要ります(70条3項・74条)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
かずやさんは、さくら台の建築協定の認可の公告があった後に、協定に合意していた持ち主から、区域内の土地を買った。かずやさんは協定に合意していないが、この協定に従わなければならない。

答え:○ 分かれ目は、認可の公告の後に所有者等になった人への効力です。認可の公告の日以後に区域内の土地の所有者等になった人にも、協定の効力が及びます(75条)。自分は合意していないので✕に見えますが、認可を受けた協定はここが強みです。取り違えの相手は、合意しなかった地主などから土地を承継した人で、こちらは75条のかっこ書で除かれます。

問3(このサイトのオリジナル問題)
市の条例で建築協定を結べる区域内にある、分譲前の住宅地の土地をすべて持つ開発会社Fは、一人で建築協定を定め、特定行政庁の認可を受けることができる。この協定は、認可の日から3年以内に区域内の土地の所有者等が2人以上になった時から、ふつうの建築協定と同じ効力を持つ。

答え:○ 分かれ目は、一人でも協定を定められるかと、効力が出る時期です。区域内の土地の所有者が1人で、ほかに所有者等がいない場合は、その1人が協定を定めて認可を受けられます(76条の3第1項・2項)。認可の日から3年以内に2人以上の所有者等ができた時から、ふつうの協定と同じ効力を持ちます(同条5項)。協定は複数人の約束だと考えると✕に見えます。取り違えの相手は、全員の合意を前提にする70条3項の締結です。

まとめ

  • 建築協定は、市町村の条例で定めた区域の中で、土地の所有者等が建物の基準を約束し、特定行政庁の認可を受けるもの。
  • 結ぶ・変えるは全員の合意(借地は借地権者の合意で足りる)。やめるは過半数の合意。どれも認可がいる。
  • 認可の公告の後に土地の所有者等になった人にも効力が及ぶ(合意しなかった地主などの承継人は除く)。
  • 一人協定は、認可の日から3年以内に2人以上になった時から効力。
  • マンションの規約(4分の3)や地区計画(市町村が決め、届出)と数字・決める人を見分ける。

法令上の制限の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。建築協定だけの分野はないので、建築基準法の肢とまぜて、合意の割合と認可の要否を見分ける練習に使ってください。

次に読むなら、地区計画の記事がおすすめです。同じ「地区のまちなみを守る」しくみでも、決める人と手続がまったくちがうことが分かります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(法令API)で確かめています。

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