試験本番で緊張しない方法:頭が真っ白になるのを防ぐ準備と当日の手順

試験本番で緊張しない方法を探しているなら、目標を「緊張をなくす」から「緊張していても手順どおりに動ける」に変えてください。どきどきするのは、体が本番に向けて準備しているからです。困るのは、緊張そのものより、「落ちたらどうしよう」という考えに注意を取られて、目の前の問題が読めなくなることです。

これを防ぐ準備は2つです。一つは、本番と同じ時間・同じ道具で通して解く練習をくり返し、当日を「初めての2時間(3時間)」にしないこと。もう一つは、前の週・当日の朝・試験開始の直後・手が止まった瞬間に何をするかを、紙に書いて決めておくことです。決めてあれば、頭が真っ白になっても、戻る先があります。

持ち物や時間配分、解く順番は、宅建試験の当日と行政書士試験の当日の記事に任せます。この記事は、気持ちが崩れたときの動き方だけを扱います。

本番で頭が真っ白になるのは、なぜか

心理学では、不安が強いと、自分で決めた目標に注意を向ける働きが弱まり、気になるもの(失敗の心配や、まわりの音)に注意が引っぱられやすくなる、と説明されています。Eysenck ら(2007年)が「注意制御理論」としてまとめた考え方です。頭が真っ白になるとき、知識が消えたわけではありません。問題を読むために使いたい注意が、心配のほうに取られている状態です。

そう考えると、本番でやることがはっきりします。心配を力ずくで追い払うのではなく、注意を戻す先を前もって決めておくことです。「手が止まったら、まずこれをする」という短い手順があれば、注意はそこに戻れます。手順がないと、心配はさらに大きくなります。

緊張は消すより「体の準備」と受け取る

緊張したときに「落ち着け」と自分に言っても、心臓の速さはすぐには変わりません。それより、どきどきを「体が本番の準備をしている」と受け取り直すほうが、結果がよかったという研究があります。

  • Jamieson ら(2010年):大学院の入試に使われる試験(GRE)を数か月以内に受ける学生に、模擬試験の前に「緊張で体が高ぶっても成績は下がらず、むしろ助けになることがある」と伝えました。伝えられた人は、模擬試験の数学で点が高く、1〜3か月後に受けた本番の数学でも点が高めでした。ただし言葉の分野では差が出ず、参加者は60人、本番の点まで追えたのは28人と少ない実験です。
  • Brooks(2014年):大学生などに、歌・人前でのスピーチ・時間制限のある数学をしてもらう前に、「わくわくしている」と言う(または読む)か、「落ち着いている」などと言うかに分けました。「わくわくしている」の人のほうが、成績や話しぶりの評価が高いという結果でした。

どちらも、行政書士試験や宅建試験の受験生で確かめたものではありません。それでも、使い方は簡単です。「どきどきしてきたら、心の中で『体が準備している』と言う」と、言う言葉を1つ決めておきます。言葉は、自分がしっくりくるものでかまいません。大事なのは、緊張に気づいたときに「まずい」と考える代わりに、決めた一文を言うことです。

本番の形で練習すると、なぜ緊張に強くなるのか

本番で崩れにくくする一番の準備は、本番と同じ形で何度も解いておくことです。理由は3つあります。

1つめは、思い出す練習をした知識は、緊張の中でも出てきやすいという研究です。Smith ら(2016年)は、学生120人に単語と絵を覚えてもらいました。半分は小テストで思い出す練習をし、半分はくり返し見直しました。翌日、半分の人に、審査員とカメラの前で急にスピーチと暗算をしてもらう強いストレスをかけ、その最中とあとに思い出してもらいました。見直しのグループはストレスで思い出せる数が減りましたが、思い出す練習のグループでは目立った低下が見られませんでした。ただし1つの研究で、覚えたのは単語と絵です。思い出す練習のグループはもともとよく覚えていたので、その差が効いた可能性も指摘されています。それでも、問題を解いて思い出す勉強を本番まで続ける理由にはなります(くわしくは読むより「思い出す」ほうが覚える)。

2つめは、少し緊張した状態で練習しておくと、本番の強い緊張で崩れにくいという研究です。Oudejans と Pijpers(2010年)は、ダーツの初心者に、クライミングの壁に低くぶら下がった状態で投げる練習をしてもらいました。少し不安を感じる条件で練習した人は、高い所での強い不安の中でも成績が落ちませんでした。不安なしで練習した人は、強い不安の中で成績が下がりました。体を使う運動の実験なので、試験にそのまま当てはまるとは言えませんが、「練習のときから少しだけ本番に近い圧力をかけておく」という考え方は使えます。

3つめは、慣れです。宅建なら2時間で50問、行政書士なら3時間で60問を、席を立たずに解き切る経験が一度もないと、当日は「時間が足りるか」という心配が増えます。通しで解いたことがあれば、「前に解いたときも、このあたりで疲れた」と分かっているので、驚かずにすみます。

通しの練習は、次のように本番に寄せます。

  • 時刻をそろえる:どちらの試験も午後1時に始まります。休日の午後1時に始め、宅建は2時間、行政書士は3時間、途中で席を立たずに解きます。
  • 道具をそろえる:当日使う鉛筆(シャープペンシル)、消しゴム、腕時計だけを机に置き、スマホは別の部屋に置きます。答えはマークシートに塗ります。
  • 少し圧力を足す:家族に開始と終了の合図をしてもらう、図書館など人のいる場所で解く、会場で受ける模試を使う、などです。模試の選び方や回数は宅建の模試の使い方と行政書士試験の模試の使い方で説明しています。
  • 手が止まったときの手順も練習する:下で説明する「手が止まった瞬間の手順」を、通しの練習の中でわざと使います。本番で初めて使う手順は、うまく働かないことがあるからです。

前の週にやること:新しいことを増やさず、手順を紙にする

試験の前の週は、不安から新しい問題集や予想問題に手を出したくなる時期です。けれども、初めて見る難しい問題で手が止まると、それがそのまま本番の不安になります。前の週は、これまで使ってきた問題集の解き直しと、本番の形の通し練習1回に絞ります。

そのうえで、「当日の手順メモ」を1枚作ります。手のひらに収まるカードくらいの大きさで、次の4つを書きます。

  1. 朝の動き:起きる時刻、家を出る時刻、電車の中で見るもの。
  2. 緊張したときの一文:「体が準備している」など、自分で決めた言葉。
  3. 開始直後にやること:最初に開く問題と、1問にかける時間の上限。
  4. 手が止まったときの手順:下の5つの動きを短く書いたもの。

架空の例で考えます。宅建を受ける会社員のさきさんは、前の週の日曜の午後1時に最後の通し練習をしました。民法の長い事例問題で手が止まり、5分近く同じ問題を読み返したことに気づきました。そこで手順メモに「1問3分で印を付けて次へ。民法の事例は、登場人物を図にしてから読む」と書き足しました。前の週は、こうして手順を直すための時間でもあります。

心配ごとが頭から離れずに勉強が手につかない日があれば、紙に書き出して整理する方法を試験前の不安が強いときで説明しています。試験の前に心配を書き出すと成績が下がりにくかったという研究も、そこで紹介しています。

当日の朝から着席までに、何をするか

当日の朝は、気持ちを上げようとするより、ふだんどおりに動くことを優先します。

  1. 新しい問題は解かない:朝に初めて見る問題で迷うと、そのまま会場に不安を持ち込みます。見るのは、自分で作った間違いノートや、何度も解き直して答えられるようになった肢です。「答えられる」という感覚を持って家を出ます。
  2. 移動中に手順メモを読む:電車の中で、手順メモを2回読みます。特に「手が止まったときの手順」は、声に出さずに順番を言えるようにしておきます。
  3. 心配が強ければ、会場に入る前に書き出す:落ちたらどうしよう、民法が不安だ、といった心配を、駅のベンチや会場近くで数分、紙かスマホに書きます。書いたら閉じます。試験室での携帯電話の扱いは試験案内と当日の指示に従うことになるので、書くのは入室の前に済ませます。
  4. 着席から開始までの時間を決めておく:宅建は12時30分までに着席し、13時に始まります。行政書士は12時20分までに着席し、12時30分から注意の説明があって、13時に始まります。この間、問題は開けません。どきどきしてきたら決めた一文を言い、開始直後の動き(最初に開く問題、1問の上限時間)を頭の中で一度なぞります。

まわりの人が分厚い本を読んでいるのを見て焦ることもあります。ここで新しいことを覚えようとしても、点にはつながりにくいものです。自分の手順に戻ってください。

試験開始の直後は、何から手をつけるか

開始直後は、緊張がいちばん高い時間です。ここで「1問目から全部分かるはず」と思っていると、1問目で迷っただけで崩れます。開始直後の数分は、次の順に動くと決めておきます。

  1. 解答用紙の受験番号などの記入を、当日の説明どおりに済ませて確かめる。手を動かす作業から入ると、注意が紙の上に戻ります。
  2. 手順メモで決めた「最初に開く問題」に進む。問題1から解くか、得意な分野から解くかは、当日の記事で選んだ型のとおりにします。
  3. 最初の数問は、問題文の「正しいもの」「誤っているもの」「いくつあるか」を指でなぞってから選択肢を読む。緊張していると、問われていることを読み違えやすいからです。
  4. 1問の上限時間を守る。上限に来たら、迷っていても印を付けて次へ進みます。

最初の数問で迷うのは、めずらしいことではありません。合格には満点がいらないことを思い出してください。宅建の合格基準点は、令和3年度から令和7年度まで50問中33〜37点でした。行政書士は、令和7年度の基準で300点中180点以上(法令等122点以上・基礎知識24点以上)です。1問で迷っても、試験はそこで決まりません。

手が止まった・頭が真っ白になった瞬間の手順

同じ問題文を何度読んでも頭に入らない。知っているはずの言葉が出てこない。そう気づいたら、次の5つを順にやります。手順メモには、この5つを短く書いておきます。

  1. 止まったと気づく:鉛筆をいったん置き、心の中で「止まった」と言います。止まっていることに気づかないまま読み返すのが、いちばん時間を失う形です。
  2. 息を長く吐く:ゆっくり吐く呼吸を2〜3回します。体を落ち着かせる効果を約束するものではなく、心配の流れをいったん区切るための合図です。あわせて、決めた一文(「体が準備している」)を言います。
  3. その問題から離れる:迷った問題の印を付け、次の問題に進みます。印の付け方と見直しの順番は当日の記事のとおりにします。問題冊子への書き込みの扱いは、当日の説明に従います。
  4. 答えやすい問題で手を動かす:次の問題も重く感じたら、自分の得意な分野の短い問題に移ります。宅建なら宅建業法の数字を問う問題、行政書士なら行政法の条文の知識を問う短い問題などです。1問を解き切ると、注意が問題に戻ってきます。
  5. 読み方を変えて戻る:飛ばした問題に戻るときは、読み方を変えます。事例の問題なら、登場人物と矢印を余白に書いてから読みます(書き込みの扱いは当日の説明に従います)。選択肢は、一つずつ「○・✕・分からない」に分けて、分からないものだけを考えます。

架空の例をもう一つ挙げます。行政書士試験を受けるけんじさんは、民法の問題を3問続けて迷い、「このままだと足切りかもしれない」と考え始めました。そこで鉛筆を置き、息を2回吐いて、3問に印を付けて行政法の問題に移りました。行政法の短い問題を2問解いたところで、問題文がふつうに読めるようになりました。印を付けた民法の3問は、残りの時間で一つずつ見直しました。通しの練習で同じことを2回試していたので、本番でも手順を思い出せました。

途中で「もうだめだ」と感じても、試験が終わるまでは点が決まっていません。宅建も行政書士も、途中で席を立って出ることには制限があります。最後まで、取れる問題を一つずつ取りにいくことが、その日にできるいちばんのことです。

なお、試験の前から眠れない日が長く続く、体に強い症状が出る、気分の落ち込みが続く、というときは、勉強だけで乗り切ろうとせず、医療機関や相談窓口に相談してかまいません。

今日からやること

  • 緊張したときに心の中で言う一文を決め、手帳かスマホのメモの先頭に書く。
  • 次の休日の午後1時に、本番と同じ時間・同じ道具で通して解く予定を入れる(宅建は2時間、行政書士は3時間)。
  • 「手が止まった瞬間の手順」の5つを、カードに書き写す。
  • 通しの練習で、迷った問題に1回はわざと手順を使い、止まっていた時間と戻れたかどうかを1行で記録する。
  • 練習の記録を見て、手順メモの「1問の上限時間」と「最初に開く問題」を書き直す。

このサイトで次に読むなら、本番の前から不安が強く、勉強そのものが手につかない人は試験前の不安が強いときがおすすめです。心配を書き出し、変えられることだけを次の一歩にする手順をまとめています。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)