宅建試験の勉強時間に、公式の目安はありません。試験を実施している一般財団法人 不動産適正取引推進機構(以下「機構」)の試験概要にも、よくある質問にも、勉強時間や勉強法の記載はありません。合格した人の勉強時間の統計も公表されていません。ネットで見かける「宅建は◯時間」という数字は、公式の数字ではありません。
そこで当サイトは、時間を人の数字から決めずに、やる量から逆算することをすすめます。「基本書の単元の数×1単元にかかる時間×回す回数」で自分に必要な時間を見積もり、それを1週間にとれる時間で割ります。初心者でも独学でも、出てきた数字がその人の答えです。計算のしかたを見せるための当サイトの仮の数字では、範囲を1周するだけで約110時間、解き直しと通し練習まで足すと約220時間になりました(合格に足りる時間の目安ではありません。計算は下の表)。
先に当サイトの立場を書いておきます。宅建は、範囲を一通り学び、問題集を何度も解き直して、ようやく点が安定する試験です。少ない時間で足りるとは書きません。残りが1〜2か月しかない人には、その年に受けるか、翌年に回すかを、自分の数字で決める方法を示します。
「宅建は◯時間」という数字は当てになるのか
当てにしすぎないほうが安全です。理由は2つあります。
- 公式の統計がない:機構は合格者の勉強時間を公表していません。ネットの数字は、だれを何人数えたのか、1時間で何をしたのかが分かりません。
- 人によって前提が違う:民法を学んだことがある人と初めての人では、同じ単元にかかる時間が違います。同じ1時間でも、読んでいるだけか、問題を解いて根拠を確かめているかで、進み方が違います。
一方で、公式に決まっていて、時間の見積もりに使える事実はあります。
- 試験は年1回、10月の第3日曜日。令和8年度は10月18日(日)13時〜15時です。
- 50問の四肢択一式(4つから1つを選ぶ問題)。合格基準点は毎年変わり、直近5年は50問中33〜37点でした(令和7年度は33点、令和6年度は37点)。
- 出題の範囲は宅地建物取引業法施行規則8条の7つの事項です。分野ごとの問題数の公式な内訳はありません。
必要な量はどう見積もるか:範囲×1単元の時間×回数
見積もりに使う数字は3つです。どれも、自分の教材と自分の手で測ります。
① 範囲:基本書の単元を、分野ごとに数える
基本書(テキスト)の目次を開き、分野ごとに単元の数を数えます。1単元は、本の1章か、それより少し小さいまとまりです。分野は、施行規則8条の号に合わせて5つに分けます。宅建業法(七号)、権利関係(二号)、法令上の制限(三号)、税・価格(四号・六号)、免除科目(一号・五号)です。登録講習を終えて5問免除を受ける人は、免除科目を数えません。
問題数ではなく単元の数で数えるのは、分野ごとの問題数の公式な内訳がないからです。勉強にかかる時間は、問題の数より、学ぶ中身の量で決まります。
② 1単元の時間:最初の2週間で測る
1単元の時間は、「基本書で1単元を読む+その単元の分野別過去問を解く+まちがえた肢(し=選択肢)の根拠を条文で確かめる」までにかかった時間です。読むだけの時間では測りません。最初の2週間は、計画どおりに進めることより、宅建業法と権利関係で1単元ずつ実際に測ることを目的にします。権利関係(民法)は、ほかの分野より時間がかかることがあるので、別に測ります。
③ 回数:何周するか
当サイトでは、分野別の過去問を、肢ごとに根拠を言えるようになるまで回すことをすすめています。2周目はまちがえた肢と迷った肢だけ、3周目はまだ言えない肢だけを解くので、周を重ねるほど量は減ります。くわしい回し方は宅建の過去問の使い方で説明しています。これに、本番と同じ2時間で解く通し練習を足します。
計算の例(仮の数字)
計算のしかたを見せるために、仮の数字で計算します。単元の数は基本書によって違い、1単元の時間は人によって違います。この数字は合格に足りる時間の目安ではありません。自分の数字に置きかえて使ってください。
| 分野 | 単元の数(仮) | 1単元の時間(仮) | 1周目 |
|---|---|---|---|
| 宅建業法 | 20 | 1.5時間 | 30時間 |
| 権利関係 | 25 | 2時間 | 50時間 |
| 法令上の制限 | 12 | 1.5時間 | 18時間 |
| 税・価格 | 6 | 1.5時間 | 9時間 |
| 免除科目 | 4 | 1時間 | 4時間 |
| 合計 | 67 | 111時間 |
次に、回す回数を足します。2周目以降の割合は、当サイトの目安です。
| やること | 中身 | 1周目に対する量 | 時間(例) |
|---|---|---|---|
| 1周目 | すべて読んで解く | そのまま | 111時間 |
| 2周目 | ✕と△の肢を解き直す | 半分ほど | 約56時間 |
| 3周目 | まだ言えない肢だけ | 4分の1ほど | 約28時間 |
| 通し練習 | 2時間+見直し2時間×6回 | ― | 24時間 |
| 合計 | 約219時間 |
この仮の数字では、合計はおよそ220時間です。残業や体調で止まる週を見込むなら、2割ほど足しておくと計画が崩れにくくなります(当サイトの目安)。その場合はおよそ260時間です。
大事なのは、1単元の時間が少し変わるだけで、合計が大きく動くことです。測ってみて1単元の時間が仮の数字の1.5倍かかった人は、同じ計算で1周目が約167時間、合計が約315時間になります。人の「◯時間」を借りずに自分で測る理由は、ここにあります。見積もりは1か月ごとに測り直し、ずれが小さいうちに直します。
見積もった量を、働く人の1週間に落とすと
次に、1週間にとれる時間で割ります。机に向かう時間だけを数え、通勤や昼休みの一問一答は数えません。すき間の時間は、机の時間の代わりではなく上乗せとして使います。
| 週の組み方 | 平日 | 休日 | 220時間に要る期間 |
|---|---|---|---|
| A:週11時間 | 机1時間×5日 | 3時間×2日 | 約20週(5か月ほど) |
| B:週6.5時間 | 机30分×5日 | 2時間×2日 | 約34週(8か月ほど) |
| C:週15.5時間 | 机1.5時間×5日 | 4時間×2日 | 約14週(3か月あまり) |
4月の初めから始めると、10月の第3日曜日の試験まではおよそ28週です。仮の数字で見ると、Aなら間に合い、予備の2割を足しても入ります。Bでは間に合いません。平日の机の時間が30分ほどだと、休日に2時間ずつとっても、前の年の秋ごろから始めるくらいの期間が要るということです。当サイトが「1日30分ほどの勉強では範囲を回しきれない」と考えるのは、この計算からです。
Aの1週間の中身は、たとえば次のようになります。
| 曜日 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 月〜金 | 机で1時間 | 新しい単元を読み、その単元の過去問を解く |
| 土 | 3時間 | その週の✕と△の解き直し(後半は2時間の通し練習と見直し) |
| 日 | 3時間 | 遅れの調整と、前に学んだ分野の解き直し |
平日・すき間・休日のそれぞれに何をするかは、働きながら受かる時間の使い方でくわしく説明しています。ここで決めておきたいのは、週の時間の合計と、その合計で見積もりを割った週の数です。
「1か月」「2か月」「100時間」で受かるのか
検索でよく見かける疑問に、上の仮の数字を使って、これから勉強を始める人の場合で答えます。自分で測った数字があれば、そちらで同じ計算をしてください。
- これから始めて1か月(4週):Aの週11時間なら44時間、Cの週15.5時間でも62時間ほどです。仮の数字の1周目(111時間)にも届きません。1か月で範囲を一通り学ぶのは難しい、というのが当サイトの見方です。
- これから始めて2か月(9週ほど):Aなら約99時間、Cなら約140時間です。1周目は終わっても、解き直しと通し練習まで回りません。法律の勉強の経験があって1単元の時間が短い人でも、余裕はありません。
- 100時間:仮の数字では、1周目だけで100時間をこえます。範囲を一通り学ぶだけで使い切り、解き直しの時間が残らない可能性が高いと考えます。
- 初心者の場合:法律を初めて学ぶ人は、権利関係の1単元に時間がかかりやすく、見積もりは仮の数字より大きくなることがあります。最初の2週間で測った数字を、まず信じてください。
どの答えも「受からない」と決めつけるものではありません。ただ、短い期間・少ない時間で足りると考えて計画を立てると、途中で範囲を回しきれないことに気づくことになります。それを先に数字で確かめるのが、この記事の目的です。
残り1〜2か月なら、どう選ぶか
まず日付の事実を確かめます。宅建試験の申込は7月です(令和8年度はインターネットが7月1日〜31日、郵送が7月1日〜15日)。試験まで残り2か月半を切る8月に入った時点で、その年の申込はもう締め切られています。ですから「残り1〜2か月でどうするか」は、すでに申し込んでいる人の問題です。申し込んでいないなら、その年の試験は受けられないので、翌年に向けた計画を立てます。
申し込んでいる人は、「試験までに使える時間(残りの週×週の時間)」と「残っている量(まだ1周していない単元×1単元の時間+解き直し)」を比べて、次の3つから選びます。
| 比べた結果 | 選び方 | やること |
|---|---|---|
| 解き直しまで回る | 計画どおり受ける | ✕と△を減らし、通し練習を週1回 |
| 1周目は終わるが、解き直しが足りない | 得点源を絞って受ける | 宅建業法と法令上の制限の解き直しに集める |
| 1周目の残りにも届かない | 本命を翌年に置く | 今年は本番の形を知る回として受ける |
得点源を絞るときは、宅建業法と法令上の制限を何度も解き直して固め、権利関係は土地・建物の売り買い・貸し借り・相続の基本にとどめます。これは宅建試験の得点戦略の「権利関係を基本にとどめる型」にあたります。分野の中でどこを深追いしないかは、宅建試験で捨ててもいい所・捨てないほうがいい所で整理しています。ただし、この型はほかの分野でほとんど落とせない型です。勉強の量が減るわけではありません。
本命を翌年に置く場合も、今年の試験は受ける価値があります。2時間で50問を解く本番の流れ、会場の雰囲気、自分がどの分野で時間を使いすぎるかは、本番でしか分からないからです。試験のあとは、この記事の手順で翌年の見積もりを立て直します。宅建試験は年1回なので、翌年の試験までは1年ほどあります。4月から始めるなら、表のAの組み方で、仮の数字の量と予備まで入ります。
期間と週の時間を選んで、見通しと進め方をまとめて確かめたい人は、宅建試験:自分に合う進め方を選ぶを使ってください。そこでの「時間の見通し」は、期間と週の時間の段階から出した目安の幅で、すでに勉強を進めている人もふくめた大まかな判定です。この記事の表と同じではないので、出た見通しは、ここでの計算で自分の単元の数と1単元の時間に置きかえて確かめてください。
法律の勉強をしたことがある人は、どこが変わるか
行政書士試験の民法などを勉強したことがある人は、見積もりの「1単元の時間」が分野によって変わります。全部が短くなるわけではありません。
- 短くなりやすい所:権利関係のうち民法の部分です。意思表示、代理、時効、抵当権、契約不適合責任、相続などは、行政書士試験と共通です。
- 変わらない所:宅建業法、法令上の制限、税・価格です。行政書士試験の範囲にはない法律なので、初めての人と同じ時間を見込みます。
- 宅建で足す所:権利関係でも、借地借家法など、土地・建物のために民法に足して学ぶ法律があります。ここは新しく学ぶ範囲です。
仮の数字で計算すると、権利関係の1単元が2時間から1時間になれば、1周目は111時間から86時間になり、合計は約220時間から約175時間になります。短くはなりますが、100時間を大きくこえます。民法の経験があるから少ない時間で足りる、とは考えないでください。
答え方の違いもあります。宅建は50問を2時間で解くので、1問にかけられるのは平均2分少々です。条文の数字や要件を正確に選べるかが問われます。両方の試験の範囲の重なりと、どちらから受けるかは行政書士と宅建、どちらから受けるかで説明しています。
なお、宅建業で働いている人は、仕事で見覚えのある言葉が多いかもしれません。それでも、試験で問われる条文の数字や要件を言えることとは別です。測った1単元の時間で判断してください。5問免除の人は、免除科目の単元を外して計算します(仮の数字なら1周目は107時間です)。
今日からやること
- 基本書の目次を開き、5つの分野ごとに単元の数を数えて書き出す。
- 宅建業法と権利関係で1単元ずつ、「読む+解く+根拠を確かめる」までの時間を測る。
- 「単元の数×1単元の時間」で1周目を出し、2周目・3周目・通し練習を足して合計を出す。
- 机に向かえる週の時間を決め、合計を割って、試験日までの週の数と比べる。
- 残り1〜2か月なら、上の表で「計画どおり」「得点源を絞る」「本命を翌年に」のどれかを決める。
このサイトで次に読むなら、宅建の過去問:公式で見られる年度・何年分・過去問だけで受かるかがおすすめです。見積もりの「回数」にあたる、何周どう回すかを具体的に決められます。10月18日の試験を受ける人は、直前1か月の復習の配分で残りの日の使い方を確かめてください。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(毎年10月の第3日曜日、50問・四肢択一式、出題の範囲)
- 同「よくある質問」(勉強時間・勉強法・教材についての記載はない)
- 同 試験日程の案内(令和8年度の試験日・申込期間)
- 同「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」(PDF)(合格基準点)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」8条(試験の内容)、10条の14(試験の一部免除)
働く人の法律試験ノート