独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」)は、民間の金融機関が貸した住宅ローンを買い取るなどして、長い期間・固定金利の住宅ローンを支える組織です。代表的な商品が、民間の金融機関と機構が組んで提供する「フラット35」です。
機構が自分で直接お金を貸すのは、災害で壊れた家の建て直しなど、民間の金融機関だけでは足りない分野が中心です。宅建試験では、機構の業務に「入るもの・入らないもの」が問われやすいといえます。
この記事では、独立行政法人住宅金融支援機構法(以下「機構法」)の目的と業務、フラット35の主な条件を扱います。住宅ローン控除などの税は不動産を売ったときの税金をわかりやすく、住宅ローンを借りるときの抵当権は抵当権をわかりやすくで説明しています。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文(令和8年4月1日施行の改正を反映したもの)で確かめました。
身近な例で考えると
登場人物は2人と、1つの銀行です。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| そうたさん | 会社員 | 新築の一戸建てを買う |
| みどり銀行 | 民間の金融機関 | そうたさんにフラット35を貸す |
| みのりさん | 被災した人 | 大雨で壊れた家を建て直す |
そうたさんがフラット35で家を買う
- そうたさんは、みどり銀行でフラット35(買取型)を申し込む。返済は35年、金利はずっと変わらない(全期間固定金利)。
- みどり銀行が、そうたさんにお金を貸す。
- 機構が、みどり銀行から、そうたさんへの貸付債権(かしつけさいけん=お金を返してもらう権利)を買い取る。
- 機構は、買い取った債権を担保に債券を出して、長い期間のお金を集める。
- そうたさんは、そのあとも、みどり銀行の窓口などで返済を続ける。
銀行が自分だけで35年もの固定金利のお金を用意するのは大変です。そこで機構が債権を買い取り、そのお金を債券で集めます。たとえるなら、町のお店(銀行)が売った長期の分割払いを、大きな問屋(機構)が引き取るイメージです。ただし本物のルールでは、そうたさんとのやりとりは、債権を買い取ったあとも銀行の窓口が続けることがあります。機構は業務の一部を金融機関に委託できるからです(機構法16条)。
みのりさんが家を建て直す
みのりさんの家は大雨で壊れました。建て直すお金は、機構が直接貸すことができます(災害復興建築物の建設などの資金。機構法13条1項5号)。民間の金融機関だけでは足りないところを補う業務です。
条文ではこう決まっている
機構の目的(機構法4条)
- 一般の金融機関による住宅の建設などの資金の融通を「支援するための貸付債権の譲受け等の業務」を行う。
- あわせて、一般の金融機関による融通を「補完するための災害復興建築物の建設等に必要な資金の貸付けの業務」を行う。
- つまり、中心は民間の支援で、直接貸すのは民間を補う分野です。
機構の業務(機構法13条1項)
- 債権の買取り:住宅の建設や購入に必要な資金について、金融機関の貸付債権を譲り受ける(1号)。フラット35(買取型)はこの業務です。
- 債務の保証:金融機関の貸付債権を担保にして発行される債券などについて、支払いを保証する(2号。特定債務保証)。
- 情報の提供・相談:住宅を建てる人などに、資金の調達や良い住宅の設計・建設などの情報を提供し、相談にのる(4号)。
- 直接の貸付け:次のような資金を貸し付ける(5号〜11号)。災害復興建築物の建設・購入や被災した建物の補修。災害予防のための移転や、耐震性を高める改良。合理的土地利用建築物の建設やマンションの共用部分の改良。マンションの更新。子育て世帯や高齢者世帯に適した賃貸住宅の建設や改良。高齢者が自ら住む住宅の、高齢者向けの改良。住宅の省エネ性能を高める改良。
- 亡くなったときの返済:貸付けを受けた人が亡くなったときなどに支払われるお金を、残りの借金の返済に充てる契約を結ぶ(12号)。借りた人が亡くなっても、家族に借金が残りにくくするための業務です。
- このほか、財形住宅の貸付け(勤労者財産形成促進法による貸付け)なども行う(13条2項)。
業務の委託(機構法16条)
- 機構は、13条の業務のうち政令で定める業務を、次の者に委託できる。①主務省令で定める金融機関、②債権回収会社、③地方公共団体その他政令で定める法人。
- ただし、情報の提供・相談(13条1項4号)は、委託できる業務から除かれています(16条1項かっこ書き)。
フラット35の主な条件(機構の案内)
フラット35の条件は、法律ではなく機構の商品のルールです。2026年10月に機構のサイトで確かめた内容は次のとおりです。
- 使いみち:申し込む本人か親族が住む、新築住宅の建設・購入、または中古住宅の購入。投資用の物件は対象外。借換えの商品もある。
- 申し込める人:申込時に満70歳未満(親子リレー返済を使う場合は70歳以上でも可)。
- 借入額:100万円以上1億2,000万円以下で、建設費または購入価額以内。
- 借入期間:15年以上(満60歳以上は10年以上)。上限は35年と「80歳−申込時の年齢」の短いほう。
- 収入の条件:年収に占める年間返済額の割合(総返済負担率)が、年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。
- 住宅:機構が定めた技術基準に合うこと。床面積は一戸建てなどが50㎡以上、マンションなどの共同建てが30㎡以上。
- 保証人・保証料:いらない。繰上返済の手数料もいらない。
- 金利:全期間固定。ただし、金利や融資手数料は取り扱う金融機関ごとに違う。
機構は令和7年12月23日に、借入額の上限を8,000万円以下から1億2,000万円以下へ、一戸建てなどの床面積を70㎡以上から50㎡以上へ見直す予定(令和8年4月)を発表しました。古い教材には前の数字が載っていることがあります。
当てはまる例・当てはまらない例
当てはまる例
- 中古マンションを買う:そうたさんの同僚が、自分で住む中古マンションを買う。フラット35は中古住宅の購入にも使えます。
- 高齢の親が自宅を直す:そうたさんの親が、自分で住む家を高齢者向けに改良する。機構が直接貸せる分野です(13条1項10号)。
- マンションの共用部分の改良:マンションの廊下や外壁などを直す資金も、直接の貸付けの対象です(13条1項7号)。
当てはまらない例
- 人に貸すためのマンションを買う:投資用の物件は、フラット35の対象外です。
- ふつうの家の購入資金を機構から直接借りる:一般の住宅の購入は、民間の金融機関が貸し、機構がその債権を買い取る形が中心です。機構が直接貸すのは、災害復興など法律に書かれた分野です。
ひっかけやすい例
- 金利はどこでも同じ?:フラット35は全期間固定金利ですが、金利は取り扱う金融機関ごとに違います。
- 窓口は機構だけ?:機構は業務の一部を金融機関などに委託できます(16条)。返済の窓口が金融機関のことがあります。
- 買取型と保証型:保証型では、機構は債権を買い取りません。金融機関が貸したまま、機構が後ろから支えます。
似ているルールとの違い
フラット35には、機構が債権を買い取る「買取型」と、機構が保証する「保証型」があります。機構の案内では、次のように違います。
| 項目 | 買取型 | 保証型 |
|---|---|---|
| お金を貸す人 | 金融機関 | 金融機関 |
| 機構がすること | 債権を買い取り、それを担保に債券を出す | 返せなくなったときの穴埋めと、債券の支払いの保証 |
| 抵当権者 | 機構 | 金融機関 |
もう一つ、機構の業務は「民間を支える業務」と「自分で貸す業務」に分けると整理しやすくなります。
| 分け方 | 主な業務 | 条文 |
|---|---|---|
| 民間を支える | 債権の買取り・債務の保証・情報提供 | 13条1項1号・2号・4号 |
| 自分で貸す | 災害復興・耐震・マンション・子育て高齢者向け賃貸・高齢者の改良・省エネ改良 | 13条1項5号〜11号 |
宅建試験ではここをまちがえやすい
住宅金融支援機構の問題は、「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務」(宅建業法施行規則8条5号)にあたる内容と考えられます。この5号は、登録講習修了者が免除される範囲です(問46〜50)。くわしくは宅建試験の5問免除(登録講習)をわかりやすくで説明しています。行政書士試験の中心となる範囲ではありません。宅建では、次のような入れ替えの形で問われやすいといえます。
- 直接融資の範囲を広げる:一般の住宅の購入資金を機構が直接貸すかのように書く形。直接貸すのは、災害復興・耐震・マンション・子育て高齢者向け賃貸・高齢者の改良などです。
- 直接融資の範囲を狭める:災害復興や、高齢者が自ら住む住宅の改良の貸付けを「業務に入らない」とする形。
- 金利の一律:フラット35の金利が全国一律とする形。金融機関ごとに違います。
- 投資用:人に貸すための住宅にも使えるとする形。対象外です。
- 委託:業務の委託ができないとする形。金融機関・債権回収会社・地方公共団体などに委託できます(16条)。
- 亡くなったときの返済:機構がこの仕組みの業務を行わないとする形。13条1項12号にあります。
- 古い数字:借入額の上限8,000万円、一戸建て70㎡以上は、見直し前の数字です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題) 住宅金融支援機構は、一般の住宅の購入資金を個人に直接貸し付けることを中心の業務としており、災害で壊れた住宅の建て直しの資金は貸し付けていない。
答え:✕ 機構の中心は、民間の金融機関の貸付債権の譲受けなど、民間を支える業務です(機構法4条・13条1項1号)。災害復興建築物の建設などの資金は、機構が直接貸し付ける業務に入っています(13条1項5号)。
問2(このサイトのオリジナル問題) フラット35(買取型)は全期間固定金利の住宅ローンなので、どの金融機関で借りても金利は同じである。
答え:✕ 機構の案内では、金利や融資手数料は取り扱う金融機関ごとに異なります。全期間固定とは、借りたあと返し終わるまで金利が変わらないという意味です。
問3(このサイトのオリジナル問題) 住宅金融支援機構は、高齢者が自ら住む住宅について、高齢者向けに改良するための資金を貸し付けることができる。
答え:○ 高齢者が自ら居住する住宅を高齢者向けに改良する資金の貸付けは、機構の業務です(機構法13条1項10号)。
まとめ
- 機構の中心は、民間の金融機関の住宅ローンを支えること(債権の買取り・債務の保証)。フラット35(買取型)は債権の買取り。
- 直接貸すのは、災害復興・耐震・マンション・子育て高齢者向け賃貸・高齢者の改良・省エネ改良などの分野。
- 亡くなったときに支払われるお金で借金を返す仕組みや、情報提供・相談も業務に入る。業務は金融機関などに委託できる。
- フラット35は全期間固定金利。金利は金融機関ごとに違う。投資用は対象外。
- フラット35の借入額は1億2,000万円以下、一戸建ての床面積は50㎡以上(令和8年4月からの見直し後)。
このサイトで次に読むなら、同じ「税・その他」の地価公示と不動産鑑定評価をわかりやすくがおすすめです。こちらは5問免除の範囲に入らないので、登録講習を受けた人も解く分野です。
働く人の法律試験ノート