新築住宅の売主は、柱や屋根などの大事な部分の欠陥について、引き渡してから10年間、責任を負います(住宅の品質確保の促進等に関する法律〈品確法〉95条1項)。住宅瑕疵担保履行法(じゅうたくかしたんぽりこうほう)は、この責任を本当に果たせるよう、売主の宅建業者にお金の備え(資力確保)を義務づける法律です。備え方は、保証金を供託所に預ける「供託」か、「住宅販売瑕疵担保責任保険契約」を結ぶかのどちらか(組み合わせも可)です。
義務を負うのは、宅建業者が自ら売主になり、買主が宅建業者でない新築住宅の売買だけです。この記事では、宅建試験の宅建業法の分野で問われる宅建業者(売主)側のルールを扱います。正式な法律名は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」です。条文は e-Gov 法令検索の現行の条文で確かめています。
身近な例で考えると
建売住宅(たてうりじゅうたく=家を建ててから土地と一緒に売る住宅)を売る会社と、その買主の話です。
| 人物 | 立場 | したこと |
|---|---|---|
| あおば住宅 | 宅建業者(愛知県知事の免許) | 新築の建売住宅を自分で売る |
| そらさん | 会社員(宅建業者ではない) | あおば住宅から新築の家を買った |
| もり不動産 | 別の宅建業者 | 転売するために新築の家を買った |
- あおば住宅は、そらさんと売買契約を結ぶ前に、保証金を預けている供託所の所在地などを書いた書面を渡して説明した。
- あおば住宅は、そらさんに新築の家を引き渡した。ここから10年間、柱や屋根などの欠陥について責任を負う。
- 同じ年、あおば住宅はもり不動産にも新築の家を1戸売った。買主が宅建業者なので、この家は資力確保の対象に入らない。
- 3月31日(基準日)が来た。あおば住宅は、過去10年間に業者でない買主へ引き渡した新築住宅の数に応じた保証金を、基準日から3週間を経過する日までの間に供託所に預けておく。
- あおば住宅は、基準日から3週間以内に、供託などの状況を愛知県知事に届け出た。
- 数年後、そらさんの家で雨もりが見つかった。あおば住宅が倒産していても、そらさんは保証金から、ほかの債権者より先に支払いを受けられる。
たとえると、保証金の供託は「将来の修理代を、国の金庫に前もって積んでおく」仕組みです。ただし本物のルールでは、積む額は修理代の見積もりではなく、引き渡した戸数から決まります。また、積んだお金を受け取るには、裁判などで請求権が確かめられているといった条件があります。
条文ではこう決まっている
前提:売主の10年の責任(品確法95条)
- 新築住宅の売買では、売主は買主に引き渡した時から10年間、「住宅の構造耐力上主要な部分等」の瑕疵(かし=欠陥)について責任を負う(95条1項)。
- 「構造耐力上主要な部分等」とは、「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」(94条1項)。柱や基礎のように建物を支える部分と、屋根や外壁のように雨を防ぐ部分です。
- これに反する特約で買主に不利なものは無効(95条2項)。
- 「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人が住んだことのないもの。ただし、建設工事の完了の日から1年を経過したものは除く(品確法2条2項。履行法2条1項も同じ意味で使う)。
だれが・何を備えるか(履行法2条・11条)
- 宅建業者は、毎年、基準日から3週間を経過する日までの間、基準日前10年間に自ら売主として買主に引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金を供託していなければならない(11条1項)。
- 基準日は3月31日(3条1項のかっこ書き「三月三十一日をいう。以下同じ。」)。
- ここでいう買主からは、宅建業者が除かれている(2条7項)。業者どうしの売買は対象外。
- 供託する額は、引き渡した新築住宅の合計戸数をもとに政令で決まる「基準額」以上(11条2項)。政令の表では、1戸以下なら2,000万円で、戸数が増えるほど1戸あたりの額は小さくなる。上限は120億円(施行令5条・別表)。
- 住宅販売瑕疵担保責任保険契約を結び、その証明となる書面を買主に交付・提供した住宅は、戸数に数えない(11条2項)。
- 床面積の合計が55平方メートル以下の住宅は、2戸で1戸と数える(11条3項、施行令6条)。
- 国債・地方債などの有価証券で預けてもよい(11条5項)。預ける先は、その業者の主たる事務所(本店)の最寄りの供託所(11条6項)。
住宅販売瑕疵担保責任保険契約の条件(2条7項)
供託のかわりになる契約は、次の条件をすべて満たすものに限られます。
- 宅建業者が費用を負担する契約であること。
- 業者が責任を果たしたときの損害を塡補(てんぽ=穴うめ)すること。業者が相当の期間を過ぎても責任を果たさないときは、買主の損害を塡補すること。
- 塡補される金額が2,000万円以上であること。
- 買主が新築住宅の引渡しを受けた時から10年以上の期間にわたって有効であること。
- 国土交通大臣の承認がなければ、変更や解除ができないこと。そのほか国土交通省令の基準に合うこと。
届出と、届け出ないときの契約の制限(12条・13条)
- 基準日ごとに、保証金の供託と住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況を、免許をくれた大臣か知事に届け出る(12条1項)。期限は基準日から3週間以内(施行規則16条1項)。
- 供託と届出をしないと、基準日の翌日から数えて50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を結んではならない(13条本文)。
- ただし、基準額に足りない分をあとから供託し、免許をくれた大臣か知事の確認を受ければ、確認を受けた日からは契約できる(13条ただし書)。
契約前の説明と、買主が受け取れるお金(14条・15条)
- 保証金を供託している業者は、新築住宅の買主に、売買契約を結ぶまでに、供託所の所在地など省令で決めた事項を書いた書面を交付して説明する(15条1項)。買主の承諾を得れば、書面のかわりに電磁的方法(メールなど)で提供できる(15条2項・10条2項)。
- 欠陥で損害を受けた買主は、代金の返還や損害賠償の請求権について、保証金から「他の債権者に先立って弁済を受ける権利」を持つ(14条1項)。
- 実際に受け取る(還付)には、裁判などで請求権を確かめた(債務名義を取った)とき、請求権があることを業者と合意して公正証書にしたとき、業者が死亡などで支払えず国土交通大臣の確認を受けたときなど、決められた場合に限られる(14条2項)。
- 還付などで保証金が基準額より少なくなったら、業者は不足分を省令で決めた日から2週間以内に供託し、届け出る(16条で準用する7条)。
これらの義務に違反すると、宅建業法の監督処分の対象になります。とくに11条1項(供託)、13条(契約の制限)、16条で準用する7条1項(不足分の供託)の違反は、業務停止の理由として宅建業法65条2項2号に書かれています。処分の流れは監督処分と罰則をわかりやすくで説明しています。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる例:あおば住宅が、会社員のそらさんに新築の建売住宅を売って引き渡した。業者が自ら売主で、買主が業者でない新築住宅なので、資力確保の対象です。
- 当てはまらない例:あおば住宅が、宅建業者のもり不動産に新築住宅を売った。2条7項で買主から宅建業者が除かれているので、対象外です。
- 当てはまらない例:あおば住宅が、ほかの人どうしの新築住宅の売買を仲介(媒介)しただけ。11条は「自ら売主となる売買契約」の住宅が対象なので、媒介した業者に義務はありません。
- 当てはまらない例:あおば住宅が、前の持ち主が5年住んだ中古の家を売った。人が住んだことのある住宅は「新築住宅」ではないので対象外です。
- ひっかけやすい例:工事が終わってから1年半、だれも住まないまま売れ残った家を売った。まだ人が住んでいなくても、完了の日から1年を経過しているので「新築住宅」にあたりません(品確法2条2項)。
- ひっかけやすい例:あおば住宅が、床面積50平方メートルの住宅を2戸引き渡した。55平方メートル以下なので2戸で1戸と数えます(11条3項)。
似ているルールとの違い
同じ「供託所にお金を預ける」仕組みとして、宅建業法の営業保証金があります。目的も額の決め方も違います。
| 項目 | 営業保証金 | 住宅販売瑕疵担保保証金 |
|---|---|---|
| 守るもの | 宅建業の取引で生じた債権 | 新築住宅の欠陥による代金返還・損害賠償 |
| 必要な業者 | 保証協会に入らない、すべての業者 | 新築住宅を自ら売主として業者以外に引き渡した業者 |
| 額の決め方 | 事務所の数(本店1,000万円、支店1つ500万円) | 過去10年に引き渡した戸数 |
| 預ける先 | 本店の最寄りの供託所 | 本店の最寄りの供託所 |
営業保証金の仕組みは営業保証金と保証協会をわかりやすくで説明しています。どちらも有価証券で預けられる点は同じです。
もう一つまぎらわしいのが、8種制限の「契約不適合責任の特約の制限」(宅建業法40条)です。40条は、業者が自ら売主のとき、通知の期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約などを除き、買主に不利な特約を禁じるルールです。一方、品確法95条は新築住宅の柱や屋根などの部分について、引渡しから10年の責任を決め、これより不利な特約を無効にしています。新築住宅の大事な部分については、10年のルールが働くと整理しておきます。40条の中身は8種制限をわかりやすくで扱っています。
試験ではここをまちがえやすい
宅建試験では、数字と「だれに義務があるか」を入れかえた形で問われやすいテーマです。次の型に注意します。
- 対象のすりかえ:媒介業者や、買主が宅建業者の場合にも義務があるかのように書く形。義務があるのは「自ら売主」で「買主が業者でない」ときだけです。
- 日数の取りちがえ:基準日は3月31日。供託は基準日から3週間を経過する日までの間にしていること、届出は基準日から3週間以内、契約の制限は基準日の翌日から数えて50日を経過した日以後。
- 説明の時期と方法:供託所の所在地などの説明は「売買契約を結ぶまで」に「書面を交付して」行います。引渡しのときではありません。
- 供託所の場所:物件の近くではなく、業者の本店(主たる事務所)の最寄りの供託所です。
- 戸数の数え方:55平方メートル以下は2戸で1戸。住宅販売瑕疵担保責任保険契約を結んで書面を渡した住宅は、供託の戸数に入りません。
- 10年の意味:品確法の責任は「引き渡した時から10年間」。住宅販売瑕疵担保責任保険契約の有効期間も「引渡しから10年以上」です。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
宅建業者が、別の宅建業者に新築住宅を売って引き渡したときも、売主の宅建業者は、その住宅について住宅販売瑕疵担保保証金の供託か住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結をしなければならない。
答え:✕
住宅瑕疵担保履行法の「買主」からは宅建業者が除かれています(2条7項)。業者どうしの売買は資力確保の対象外です。
問2(このサイトのオリジナル問題)
新築住宅を自ら売主として引き渡した宅建業者は、基準日ごとに、保証金の供託などの状況を、基準日から3週間以内に免許をくれた大臣か知事に届け出なければならない。
答え:○
12条1項と施行規則16条1項のとおりです。届出をしないと、基準日の翌日から数えて50日を経過した日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を結べなくなります(13条)。
問3(このサイトのオリジナル問題)
保証金を供託している宅建業者は、新築住宅を引き渡すときまでに、買主に供託所の所在地などを説明すればよい。
答え:✕
説明の時期は「売買契約を締結するまでに」です(15条1項)。供託所の所在地などを書いた書面を交付して説明します。
まとめ
- 対象は、宅建業者が自ら売主で、買主が宅建業者でない新築住宅(人が住んだことがなく、完成から1年以内)。
- 備えは「保証金の供託」か「住宅販売瑕疵担保責任保険契約」(2,000万円以上・引渡しから10年以上)。組み合わせも可。
- 基準日は3月31日。供託は基準日から3週間を経過する日までの間にしていること、届出は3週間以内、しないと翌日から数えて50日を経過した日以後は新たな契約ができない。
- 供託先は本店の最寄りの供託所。55平方メートル以下は2戸で1戸。有価証券も可。
- 契約を結ぶまでに、供託所の所在地などを書面で説明する。
このサイトで次に読むなら、同じ「業者が自ら売主のとき」のルールをまとめた8種制限をわかりやすくがおすすめです。手付や契約不適合責任のルールと並べると、売主業者に何が求められるかが一続きで見えてきます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(e-Gov 法令検索):2条、3条、7条、10条、11条、12条、13条、14条、15条、16条。
- 同法施行令(e-Gov 法令検索):5条・別表(基準額)、6条(55平方メートル)。
- 同法施行規則(e-Gov 法令検索):16条1項(届出は基準日から3週間以内)。
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律(e-Gov 法令検索):2条2項、94条1項、95条。
- 宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索):65条(監督処分の理由として履行法の規定を挙げている)。
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」:出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているもの。
働く人の法律試験ノート