防火地域・準防火地域をわかりやすく:建てられる建物の規模と看板・屋根のルール

防火地域(ぼうかちいき)と準防火地域(じゅんぼうかちいき)は、建物が密集した街で、火事が燃え広がるのを防ぐために定める地域です(都市計画法9条21項)。この中で建物を建てるときは、規模に応じて火に強いつくりにしなければなりません(建築基準法61条、施行令136条の2)。防火地域では「階数3以上か延べ面積100平方メートル超」、準防火地域では「地階を除く階数4以上か延べ面積1,500平方メートル超」で、いちばん厳しい耐火建築物等が求められます。

ほかに、屋根のつくり(62条)、外壁を隣地との境界線に接して建てられる場合(63条)、看板(64条)、地域にまたがる建物(65条)のルールがあります。この記事ではこれらを扱います。建ぺい率の緩和の計算は建ぺい率と容積率の記事で扱います。条文は令和8年4月1日時点のものです。

身近な例で考えると

登場人物は2人です。駅前の商店街に店と住まいを建てたい人=たくみさんと、設計を頼まれた建築士=あやさんです。

  1. たくみさんの土地は防火地域にある。最初の案は、2階建て・延べ面積90平方メートルの店舗兼住宅。あやさんは「2階以下で100平方メートル以下なので、準耐火建築物等でよい」と説明した。
  2. たくみさんが「3階建てにしたい」と言った。防火地域では階数3以上で耐火建築物等が必要になる。延べ面積が100平方メートル以下でも同じ。
  3. 次に、地下1階・地上2階の案を考えた。防火地域では地階もふくめて階数を数えるので、階数は3。やはり耐火建築物等になる。
  4. 店の屋上に、高さ2メートルの看板を置くことにした。防火地域で屋上に設けるので、看板の主な部分を不燃材料(燃えない材料)でつくるか、おおう必要がある。
  5. 外壁を耐火構造(火に長く耐えるつくり)にした。そのため、外壁を隣の土地との境界線に接して建てられた。

たとえると、防火地域は「花火大会の会場のすぐそば」、準防火地域は「そのまわり」です。会場に近いほど燃えにくい服装を求められます。ただし本物のルールでは、どこまで火に強くするかは場所だけでなく、建物の階数と延べ面積の組み合わせで決まります。

条文ではこう決まっている

地域の決め方(都市計画法8条・9条・15条)

  • 防火地域・準防火地域は、都市計画で定める地域地区の一つ(8条1項5号)。市街地で火事の危険を取り除くために定める(9条21項)。
  • 決めるのは市町村(都道府県が決める都市計画の一覧=15条1項に入っていない)。
  • 準都市計画区域では定められない(8条2項の一覧に入っていない)。

規模ごとに求められる建物(建築基準法61条、施行令136条の2)

61条は、防火地域・準防火地域の建物について、外壁の開口部で延焼(えんしょう=火が燃え移ること)のおそれのある部分に防火戸などの防火設備を付けることと、規模に応じた政令の基準に合うことを求めています。具体的な区分は施行令136条の2です。

地域建物の規模求められる建物
防火地域階数3以上か、延べ100㎡超耐火建築物等
防火地域階数2以下で、延べ100㎡以下準耐火建築物等
準防火地域地階を除く階数4以上か、延べ1,500㎡超耐火建築物等
準防火地域地階を除く3階(1,500㎡以下)か、500㎡超1,500㎡以下準耐火建築物等
準防火地域地階を除く階数2以下で、延べ500㎡以下木造等:外壁・軒裏を防火構造など。木造以外:開口部に防火設備
  • 耐火建築物等:耐火建築物か、それと同じ以上に火の燃え広がりを防げる建物。準耐火建築物等も同じ考え方で、準耐火建築物か、それと同じ以上の建物。
  • 防火地域の区分は単に「階数」と書かれているので、地階(地下の階)も数に入る。準防火地域は「地階を除く階数」で数える。なお、地階の倉庫・機械室などで、面積が建築面積の8分の1以下のものは階数に入れない(施行令2条1項8号)。
  • 準防火地域の小さな木造の建物(2階以下・500平方メートル以下)は、外壁と軒裏(のきうら)で延焼のおそれのある部分を防火構造にし、開口部には20分間火を通さない防火設備を付ける(施行令136条の2第3号)。
  • 例外:高さ2メートル以下の門・塀と、準防火地域の木造等以外の建物に付いている門・塀は、61条の対象外(61条1項ただし書)。防火地域の建物か、準防火地域の木造等の建物に付いている高さ2メートル超の門・塀は、延焼を防ぐうえで支障のないつくりにする(施行令136条の2第5号)。

屋根・外壁・看板(62条〜64条)

  • 屋根:防火地域・準防火地域の建物の屋根は、市街地の火事の火の粉で燃えないための政令の基準に合うものにする(62条)。
  • 外壁:防火地域・準防火地域の建物で、外壁が耐火構造のものは、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる(63条)。
  • 看板:防火地域の中の看板・広告塔・装飾塔などで、建物の屋上に設けるものか、高さ3メートルを超えるものは、主な部分を不燃材料でつくるか、おおう(64条)。準防火地域には、この条文はない。

地域にまたがる建物(65条)

  • 防火地域(または準防火地域)と、指定のない区域にまたがる建物:建物全体に、防火地域(または準防火地域)のルールを使う(1項)。
  • 防火地域と準防火地域にまたがる建物:建物全体に、防火地域のルールを使う(2項)。
  • 例外:厳しいほうの地域の外で、防火壁(ぼうかへき=建物の中を区切る燃えにくい壁)で区切られていれば、その外側の部分には緩いほうのルールを使う。

防火地域・準防火地域ではないが屋根の決まりがある区域(22条)

  • 特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築の許可などをする自治体)は、防火地域・準防火地域以外の市街地で、屋根の決まりを使う区域を指定できる(22条1項。「22条区域」と呼ばれることがある)。
  • この区域の建物の屋根も、火の粉で燃えないための基準に合うものにする。ただし、茶室・あずまやなどや、延べ面積10平方メートル以内の物置・納屋などは、延焼のおそれのある部分以外の屋根が対象外。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(防火地域の小さな3階建て):防火地域に、3階建て・延べ面積90平方メートルの住宅を建てる。面積は100平方メートル以下ですが、階数が3以上なので耐火建築物等が必要です。
  2. 当てはまらない(準防火地域の3階建て):準防火地域に、地上3階・延べ面積300平方メートルの住宅を建てる。地階を除く階数が3で1,500平方メートル以下なので、準耐火建築物等でよく、耐火建築物等までは求められません。
  3. ひっかけやすい(地下の階の数え方):防火地域で、地下1階・地上2階・延べ面積90平方メートルの建物を建てる。防火地域は地階もふくめて数えるので階数3。耐火建築物等が必要です。同じ建物が準防火地域なら、地階を除く階数は2なので、500平方メートル以下の区分になります。
  4. ひっかけやすい(看板):準防火地域の建物の屋上に看板を設ける。64条は防火地域だけの規定なので、この条文による不燃材料の決まりはかかりません。
  5. ひっかけやすい(またがる建物):建物の一部が防火地域、残りが準防火地域にかかっている。防火壁で区切っていなければ、建物全体に防火地域のルールを使います。「面積の大きいほうのルール」ではありません。
  6. 当てはまらない(門・塀):防火地域の住宅に、高さ1.8メートルのブロック塀をつくる。高さ2メートル以下の塀は61条の対象外です。

似ているルールとの違い

防火地域・準防火地域と22条区域は、どれも火事を防ぐための区域ですが、決める人とルールの範囲が違います。

比べる点防火地域準防火地域22条区域
決める人市町村(都市計画)市町村(都市計画)特定行政庁
耐火建築物等が必要3階以上か100㎡超地階を除く4階以上か1,500㎡超61条の区分はない
看板の64条ありなしなし
建ぺい率の1/10加算耐火建築物等耐火・準耐火建築物等なし

建ぺい率の緩和(53条3項・6項)では、防火地域の耐火建築物等なら1/10が加わり、建ぺい率8/10の地域なら制限そのものがなくなります。準防火地域では耐火建築物等か準耐火建築物等で1/10が加わります。計算例は建ぺい率と容積率の記事で確かめてください。

もう一つは、民法とのちがいです。民法234条1項は、建物を建てるときは境界線から50センチメートル以上離すと定めています。一方、建築基準法63条は、防火地域・準防火地域で外壁が耐火構造の建物なら、外壁を隣地境界線に接して設けられると定めています。民法の側のルールは相隣関係と地役権の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

宅建試験の法令上の制限では、建築基準法の中で、数字の区分と「どちらの地域の規定か」が文章で問われやすい論点です。

  • 数字の組み合わせ:防火地域は「3階・100平方メートル」、準防火地域は「4階・1,500平方メートル」で耐火建築物等。準防火地域の準耐火建築物等は「3階」と「500平方メートル超1,500平方メートル以下」。
  • 「超える」と「以下」:防火地域でちょうど延べ100平方メートル・2階建てなら、準耐火建築物等の区分です。
  • 地階の数え方:防火地域は地階もふくめた階数、準防火地域は地階を除く階数。
  • 看板は防火地域だけ:屋上に設けるか、高さ3メートル超。準防火地域の看板に64条はかからない。
  • 63条は両方の地域:防火地域・準防火地域のどちらでも、外壁が耐火構造なら隣地境界線に接して建てられる。
  • またがる建物:厳しいほうのルールを建物全体に。防火壁で区切れば外側は緩いほう。敷地の過半で決める用途地域のルール(建築基準法91条)と混同しない。
  • 建築確認の10平方メートルの例外:防火地域・準防火地域の中では使えない。くわしくは建築確認の記事で扱っています。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
防火地域の中で、地上2階・延べ面積120平方メートルの住宅を建てる場合は、耐火建築物等としなければならない。

答え:○
防火地域では、階数3以上か、延べ面積100平方メートル超の建物は耐火建築物等が求められます(施行令136条の2第1号)。2階建てでも、延べ面積が100平方メートルを超えるので当てはまります。

問2(このサイトのオリジナル問題)
準防火地域の中にある建物の屋上に設ける広告塔は、その主要な部分を不燃材料でつくるか、おおわなければならない。

答え:✕
看板・広告塔などの64条は「防火地域内」の規定です。準防火地域の広告塔には、この条文の決まりはかかりません。

問3(このサイトのオリジナル問題)
建物が防火地域と準防火地域にまたがり、防火壁で区切られていない場合は、建物全体に防火地域内の建物に関する規定が適用される。

答え:○
65条2項のとおりです。防火地域の外で防火壁で区切られている場合だけ、その外側の部分には準防火地域のルールを使います。

まとめ

  • 防火地域・準防火地域は市町村が都市計画で定める。準都市計画区域には定められない。
  • 防火地域:階数3以上(地階をふくむ)か延べ100㎡超は耐火建築物等、それ以外は準耐火建築物等。
  • 準防火地域:地階を除く4階以上か1,500㎡超は耐火建築物等、地階を除く3階か500㎡超1,500㎡以下は準耐火建築物等。
  • 屋根(62条)と、外壁が耐火構造なら境界線に接して建てられる(63条)は両方の地域。看板の不燃材料(64条)は防火地域だけ。
  • またがる建物は厳しいほうを全体に。防火壁の外側は緩いほう。

このサイトで次に読むなら、建築確認をわかりやすくがおすすめです。防火地域・準防火地域の中かどうかで、小さな増築に確認がいるかどうかが変わります。2つの記事を続けて読むと、建築基準法の数字が整理しやすくなります。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構)。条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容をe-Gov法令検索で確かめました。