宅建をYouTubeで勉強するなら:動画だけで受かるか、見たあとにやること

宅建は、YouTubeなどの動画「だけ」では足りない、というのが当サイトの考えです。動画を見て「わかった」と感じることと、本番で4つの選択肢それぞれの正誤を判定できることは、別の力だからです。話のうまい講師の動画は「よく学べた」という感じを強めますが、テストの成績は変わらなかった、という研究もあります。

動画は、仕組みや流れを理解する入口として使います。そして、1本見終わったら、その範囲の問題を解いてから次の動画に進みます。この記事では、動画で勉強したあとにやること、動画1本ごとに解く問題の量、倍速の扱い、動画に向く分野・向かない分野を示します。チャンネルの名前は挙げません。かわりに、選ぶときに確かめる点を書きます。

動画で「わかった」と、本番で解けるはどう違うか

講師の話し方が学びにどう影響するかを調べた実験があります(Carpenterら、2013年)。大学生が、同じ講師が同じ内容を話す約1分の動画のどちらかを見ました。一方は、講師が姿勢よく立ち、前を見て、メモを見ずに滑らかに話す動画。もう一方は、前かがみで原稿を読み、たどたどしく話す動画です。

滑らかな講師の動画を見た人のほうが、「あとでどれだけ覚えているか」を高く見積もりました。講師の評価も高くなりました。ところが、実際のテストの成績には、はっきりした差が出ませんでした。わかりやすく感じる講義は、学べたという感じを高めても、覚えている量まで高めるとは限らないということです。

もう一つの手がかりは、読み返しの研究です。大学生が短い文章を学んだ実験(Roediger & Karpicke、2006年)では、学んだ5分後のテストでは、くり返し読んだ組のほうがよくできました。ところが1週間後のテストでは、思い出して書き出す練習をした組のほうがよく覚えていました。くり返し読むことは「覚えている」という自信を高めましたが、1週間後の成績は高めませんでした。

動画を見ることは、読み返しと同じく、情報を受け取る勉強です。この実験は動画で調べたものではないので、そのまま当てはめることはできません。それでも、「見て分かった」の感じで勉強の進み具合を判断しないこと、見たあとに自分で思い出す時間を作ることは、両方の研究から言えます。思い出す練習のやり方は読むより「思い出す」ほうが覚えるで説明しています。

動画の途中で止めて思い出すと、何が変わるか

長い講義動画を区切って、間に小テストを入れた実験があります(Szpunar、Khan & Schacter、2013年)。約21分の統計学の講義を約5.5分ずつ4つに区切り、はじめの3つの区切りのあとに次のどれかをしました(4つ目のあとは、全員が小テストを受けました)。

  • 直前の区切りの内容の小テストを受ける組
  • 問題と答えを読むだけの組
  • 講義と関係のない計算問題を解く組

講義の途中で「いま講義と関係ないことを考えていたか」をたずねると、小テストを受けた組は19%、読むだけの組は39%、計算問題の組は41%でした。メモを取ったスライドの割合は、小テストの組が24%、ほかの2つの組は9%と7%でした。区切りごとに思い出す組のほうが、講義に注意を向け続けていたということです。

宅建の動画に置きかえると、区切りのよい所(当サイトの目安は15分前後)で一度止めて、いま見た内容を白紙に3行書く、またはその範囲の○✕を数問解く、という使い方になります。止めずに1時間見続けるより、途中で思い出すほうが、見ている間の注意も保ちやすくなります。

動画1本ごとに、どれだけ問題を解くか

動画の長さに合わせて、見たあとにやることを決めておきます。次は当サイトの目安です。

動画の長さ見終わった直後2〜3日後1週間後
15分まで白紙に3行+○✕10問印の肢を解き直す単元の過去問を通す
30分前後15分で1回止めて3行、終わったら単元の過去問印の肢を解き直す単元の過去問を通す
60分以上15分ごとに止めて3行、1日1本まで印の肢を解き直す単元の過去問を通す

「白紙に3行」は、動画を止めて、いま見た内容の要点を何も見ずに書き出すことです。書けなかった所が、次に問題を解くときに注意して読む所になります。

問題を解くときは、4つの肢それぞれについて、正しいか誤りかと、その理由を言えるかで確かめます。正解しても理由があいまいだった肢は△、まちがえた肢は✕として印を付けます。印の付け方と、どの印をいつ解き直すかは「できたつもり」を防ぐで説明しています。

大事なのは、次の動画に進む前に、今の動画の範囲の問題を解くことです。動画を何本も先に見て、問題をあとでまとめて解くと、問題を解くころには動画の中身を思い出せず、もう一度見ることになりかねません。

倍速で見てもよいか

講義動画の速さを変えた実験があります(Murphyら、2022年)。アメリカの大学生231人が、不動産鑑定(約13分)と古代ローマの歴史(約14分)の講義動画を、1倍・1.5倍・2倍・2.5倍のどれかの速さで見て、直後と1週間後に、選んで答える形と正誤を答える形のテストを受けました。

  • 1倍・1.5倍・2倍の間では、成績にはっきりした差は出ませんでした。
  • 2.5倍では、1倍より成績が下がりました。
  • 別の実験では、1倍で1回見た組と、2倍で2回見た組(2回目は1週間後のテストの直前)を比べ、2倍で2回見た組のほうが1週間後のテストの成績が高くなりました。2倍で続けて2回見て、すぐテストを受けた実験では、1倍で1回見た組と差がありませんでした。

ただし、条件に注意が必要です。動画は15分ほどの短いもので、法律の講義ではありません。2倍で2回見た組がよかったのは、2回目をテストの直前に見たことも影響しています。ここから言えるのは、「短い講義なら、2倍までの倍速で理解が大きく落ちるとは限らない」までです。

当サイトのすすめは、次のとおりです。

  • 初めて学ぶ単元は1〜1.5倍にする。条文の言葉が出てくる所で、聞き取れないまま進まないためです。
  • 一度学んだ単元の見直しは、2倍までにする。
  • 倍速で浮いた時間は、もう1本見る時間ではなく、問題を解く時間に回す。

動画に向く分野・向かない分野

動画が役に立つのは、図や流れで見ると分かりやすい中身です。反対に、数字を覚える所や、毎年変わる所は、動画に向きません。次は当サイトの判断で、研究で決まったものではありません。

中身動画に向くか代わりにやること
権利関係の登場人物の関係向く見たあとに自分で図を描く
都市計画法の区域の全体の地図向く白紙に区域の関係を書く
手続の流れ(建築確認など)向く白紙に矢印で流れを書く
宅建業法の数字・期間向かない表の数字を隠して言う
法令上の制限の面積向かない似た数字を同じ表に並べる
統計の数字向かない最新の公表資料で確かめる

権利関係(民法など)は、売主・買主・第三者の関係を図にしながら説明する動画が理解の助けになります。ただし、図を見て分かることと、自分で描けることは別です。動画を止めて、同じ図を自分で描けるかを試します。

数字は、動画で聞いても、聞き流したあとに残りにくい所です。宅建業法の期間や法令上の制限の面積は、表にして数字の列を隠し、制度の名前を見て言う練習のほうが向いています。

チャンネルを選ぶときに、何を確かめるか

当サイトは、チャンネルの名前を挙げて比べません。かわりに、選ぶときに確かめる点を挙げます。

  • いつの法令の動画か:宅建試験は、試験を行う年度の4月1日に施行されている法令から出題されます。令和9年度の試験なら、2027年4月1日の時点です。動画の公開日と、何年度の試験向けかを確かめます。改正のあった所は、古い動画では答えが変わっていることがあります。
  • 条番号を示しているか:説明に根拠の条番号があれば、e-Gov法令検索(国の法令データベース。無料)で、今の条文を確かめられます。
  • 自分の基本書の単元と対応するか:1本の動画の範囲が、使っている基本書の1単元と対応していると、「動画→問題」の流れが作りやすくなります。
  • 1つに絞れるか:チャンネルを2つ3つ行き来すると、同じ単元を何度も見ることになり、問題を解く時間が減ります。

講義を決まった順番で見たい人には、動画の講義とテキスト・問題がまとまった通信講座という選び方もあります。予算ごとの教材の組み合わせは宅建のテキスト・問題集の選び方にまとめています。

動画だけで受かるか

当サイトの答えは、「動画は入口にはなるが、動画だけでは足りない」です。足りなくなるのは、次の3つです。

  • 肢を判定する練習:本番は、4つの肢それぞれの正誤を判断する試験です。動画を見るだけでは、この練習になりません。
  • 2時間で50問を解く練習:時間配分と、事例を読み取る速さは、本番と同じ形で解かないと身につきません。機構(不動産適正取引推進機構)のサイトで、昭和63年度から令和7年度までの問題と正解番号が無料で見られるので、印刷して2時間で解きます。
  • 数字を思い出す練習:数字は、聞くより、隠して言う練習で残ります。

動画は、分野別の過去問集など問題を解く教材と組み合わせて使います。スマホで問題を解くアプリを選ぶときの見方は宅建のアプリの選び方で説明しています。

今日からやること

  • 見る動画を1本決め、その範囲の分野別の過去問を手元に用意してから再生する。
  • 15分ごとに一度止めて、白紙に要点を3行書く。
  • 見終わったら、次の動画に進む前に、その範囲の問題を解き、肢ごとに○・△・✕を付ける。
  • 初めての単元は1〜1.5倍、見直しは2倍まで。浮いた時間は問題に回す。
  • 動画の公開日と、何年度の試験向けかを確かめる。

このサイトで次に読むなら、読むより「思い出す」ほうが覚えるがおすすめです。動画を見たあとの「思い出す」時間を、テキストと問題集を使ってどう組むかを具体的に説明しています。

参考にした研究・資料(2026年10月確認)

  • Carpenter, S. K., Wilford, M. M., Kornell, N., & Mullaney, K. M. (2013). Appearances can be deceiving: Instructor fluency increases perceptions of learning without increasing actual learning. Psychonomic Bulletin & Review, 20(6), 1350–1356.(DOI)
  • Szpunar, K. K., Khan, N. Y., & Schacter, D. L. (2013). Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6313–6317.(DOI)
  • Murphy, D. H., Hoover, K. M., Agadzhanyan, K., Kuehn, J. C., & Castel, A. D. (2022). Learning in double time: The effect of lecture video speed on immediate and delayed comprehension. Applied Cognitive Psychology, 36(1), 69–82.(DOI)
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.(DOI)
  • 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行のもの)、同「宅建試験の問題及び正解番号表」