宅建の判決文問題の解き方:知らない判例でも読んで解く手順

宅建の判決文問題は、問題の初めに判決文の一部が載り、それを手がかりに肢の正誤を判断する問題です。知らない判例が出ても、慌てる必要はありません。答えの多くは、目の前の判決文の中に書いてあるからです。

解き方は3つの手順です。1つ目、判決文の結論を一行にまとめる。2つ目、肢が判決文の「言い換え」か、「逆」か、「条件を落としたもの」かを照らす。3つ目、判決文に書いていない肢は、民法の知識で判定する。「判決文は読まない」という解き方も聞きますが、当サイトはすすめません。全文を細かく読む必要はありませんが、結論の一文と、その条件の部分は読みます。この記事では、最高裁判所の判決の実際の一節を使って、3つの手順を練習します。

判決文問題とは何か

宅建試験の権利関係(民法など)の問題の中に、判決文を読ませる問題が置かれることがあります。令和3年度(10月)の問題冊子で当サイトが確かめた並びでは、民法の問1〜10の中に、判決文を読ませる問題がふくまれていました(公式の内訳ではありません)。毎年出るか、どの番号に置かれるかの公式の発表はありません。

肢には、だいたい3つの種類が混ざっています。

  • 判決文の内容を言い換えた肢
  • 判決文の内容を逆にしたり、条件を落としたりした肢
  • 判決文には書いていない、関連する民法の規定や判例を問う肢

前の2つは、判決文を読めば判定できます。3つ目だけが、知識の問題です。知らない判例の問題に見えても、知識がいるのは一部の肢だけ、ということが多い作りです。

手順1:判決文の結論を一行にする

判決文は、理由を積み重ねて最後に結論を言う文の形をしています。結論は、文の終わりの「〜と解するのが相当である」「〜すべきである」「〜ことが必要である」のあたりにあります。まず、そこに線を引きます。

次に、結論の前にある条件に印を付けます。「〜ためには」「少なくとも」「〜場合には」「〜など」のような言葉が、条件の目印です。肢は、この条件を落としたり、広げたりして作られることが多いからです。

最後に、「だれが・どんな場合に・どうなるか」を一行で書きます。問題用紙の余白に、10〜20字程度で十分です。

練習:実際の判決の一節で手順をたどる

使うのは、最高裁判所第二小法廷の平成17年12月16日の判決(平成16年(受)第1573号、敷金返還請求事件)です。賃貸住宅を出るときに、ふつうに使っていて生じた傷み(通常損耗)の修理費用を、借りた人に負担させる特約が成立していたかが争われました。判決の理由の中に、次の一節があります(句読点は原文のまま。文の頭の「そうすると,」は省いています)。

「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」

裁判所の判決は、著作権法で権利の目的にならないものとされています(著作権法13条3号)。この記事では、判決の一節だけを引き、問題の形はこのサイトで作っています。

手順1をやってみます。

  • 結論の線:「通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」。
  • 条件の印:「ためには」「少なくとも」「契約書の条項自体に具体的に明記されているか」「口頭により説明し…明確に認識し…合意の内容としたものと認められるなど」。
  • 理由の印:「予期しない特別の負担を課すことになるから」。
  • 一行にすると:借主に通常損耗の修理を負わせるには、範囲を具体的にした特約の明確な合意がいる。

判決はこの一節の前で、通常損耗による価値の減り分は、賃料の中にふくめて支払いを受ける形で回収されている、とも述べています。結論の理由になっている部分です。

手順2・3:肢を照らし、関係ない肢は知識で判定する

次の4つの肢を、上の判決文と民法の規定によって判定してみます。

問1(このサイトのオリジナル問題)
上の判決文によれば、建物の賃借人に通常損耗の補修費用を負担させるには、少なくとも、負担する通常損耗の範囲が契約書に具体的に書かれているか、賃貸人の口頭の説明を賃借人が明確に認識して合意の内容にしたと認められるなど、特約が明確に合意されていることが必要である。

答え:○ ○です。判決文の条件と結論を、そのまま言い換えた肢です。「少なくとも」「など」の限定も残っています。言い換えの肢は、条件の言葉が一つも落ちていないかを確かめてから○を付けます。

問2(このサイトのオリジナル問題)
上の判決文によれば、通常損耗の補修費用は賃料にふくまれていないのが通常であるから、特約がなくても、建物の賃借人がこれを負担する。

答え:✕ ✕です。判決文の理由を逆にした肢です。正しくは、判決文は、通常損耗による減価の回収は賃料にふくめて支払いを受けることで行われているとし、だからこそ賃借人に負担させるのは「予期しない特別の負担」だとしています。結論の理由の向きを入れ替えた形です。

問3(このサイトのオリジナル問題)
上の判決文によれば、建物の賃貸借契約書に「賃借人は、退去するときに建物を原状に回復する」とだけ書かれていれば、通常損耗についても賃借人が補修費用を負担する特約が明確に合意されたことになる。

答え:✕ ✕です。条件を落とした肢です。判決文は、負担する通常損耗の「範囲」が「具体的に明記されているか」などを求めています。正しくは、「原状に回復する」とだけ書かれていても、通常損耗の範囲が具体的でなければ、この条件を満たしません。「契約書に書いてある」という点だけを残して、「範囲を具体的に」を落とした形です。

問4(このサイトのオリジナル問題)
民法の規定によれば、建物の賃借人は、賃貸借が終わったとき、賃借物の経年変化(年月がたつことによる変化)については、原状に回復する義務を負わない。

答え:○ ○です。判決文には書いていない、民法の知識を問う肢です。民法621条は、賃借人が原状に回復する損傷から、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」を除いています。この規定は、平成29年の民法改正(令和2年4月1日施行)で置かれたもので、判決が示した考え方と同じ向きの内容です。判決文を何度読み返しても答えは出ないので、判決文と関係ない肢だと気づいたら、すぐ知識で判定に切りかえます。

4つの肢を分けると、問1が言い換え、問2が逆、問3が条件落ち、問4が判決文と関係ない知識の肢です。この型を見分けるだけで、判例を覚えていなくても、問1〜3は判決文から判定できます。

「判決文は読まない」は是か非か

「判決文は長いので読まず、肢だけを知識で解けばよい」という解き方を聞くことがあります。当サイトの答えは「全文を細かく読む必要はないが、読まないのはすすめない」です。理由は2つあります。

  • 言い換え・逆・条件落ちの肢は、判決文が答えそのもの:上の練習の問1〜3は、知識がなくても判決文で判定できました。読まなければ、取れるはずの肢を知識の勝負にしてしまいます。
  • 知らない判例の肢は、知識では判定できない:判決文問題には、受験生が覚えていない判例が使われることがあります。その場合、判決文を読む以外に判定の手がかりがありません。

一方で、全文を最初から丁寧に読むと時間がかかります。当サイトがすすめる読む順番は次のとおりです。

  1. 問いの文(「判決文によれば」「民法の規定によれば」など)を読み、何を根拠に判定するかを確かめる。
  2. 4つの肢をざっと見て、どの肢が判決文の話で、どの肢が知識の話かを分ける。
  3. 判決文は、結論の一文と、その前の条件の部分を中心に読む(手順1)。
  4. 判決文の話の肢を、言い換え・逆・条件落ちの3つの型で照らす。知識の話の肢は、知識で判定する。

ふだんの勉強で、判決文に慣れる

  • 判決の裁判要旨を一行にする練習:裁判所のウェブサイトの判例検索では、判決の「裁判要旨」と全文が見られます。民法の勉強で出てきた判例の裁判要旨を開き、10〜20字で一行にまとめる練習をします。一行にできない判決は、条件を読み落としていることが多いので、「ためには」「場合には」に印を付け直します。
  • 条文になった判例から始める:上の判決のように、のちの改正で条文に考え方が取り入れられたものは、条文と判決文を見比べると、言い換えの感覚がつかめます。賃貸借のルールは賃貸借をわかりやすくで扱っています。
  • 肢を自分で作ってみる:判決文の一節から、言い換え・逆・条件落ちの3つの肢を自分で作ります。作る側に回ると、本番でどこが入れ替えられるかが見えます。ひっかけの型全体は宅建のひっかけ問題のパターンにまとめています。

判例をどこまで覚えるかは、権利関係の勉強全体の中で決めます。優先順位は宅建の権利関係(民法)の勉強法で説明しています。権利関係の○✕は、このサイトの宅建の5分○✕ドリルの「権利関係」で続けて解けます。肢を読むたびに「条件の言葉はどこか」に印を付ける練習としても使えます。場面を読んで決め手を探す練習は、権利関係の一問一答の20問でもできます。

この練習も、勉強の量を減らすためのものではありません。判決文から取れる肢を取りこぼさないようにしつつ、知識の肢に答えるための民法の勉強は、別にまとまった時間が要ります。

今日からやること

  • 判決文を読むときは、まず「相当である」「必要である」の結論の一文に線を引く、と決める。
  • 結論の前の「ためには」「少なくとも」「場合には」「など」に印を付ける。
  • 勉強した判例の裁判要旨を1つ選び、10〜20字の一行にまとめる。
  • 判決文の一節から、言い換え・逆・条件落ちの肢を1つずつ自分で作ってみる。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

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