区分所有法(くぶんしょゆうほう)は、マンションのように、1つの建物を部屋ごとに別々の人が持つときのルールです。正式な名前は「建物の区分所有等に関する法律」です。
ひとことで言うと、「部屋は自分の物、廊下や外壁はみんなの物。みんなの物のことは、集会で決める」という法律です。何を決めるかによって、必要な賛成の割合が変わります。
この法律は令和7年に改正され、令和8年4月1日から新しい条文が施行されています。宅建試験の出題の根拠は、試験の年の4月1日現在施行されている法令です。令和8年度の試験では、改正後の条文が基準になります。改正前の数字で書かれた教材は、決議の割合がちがうことがあるので注意します。
この記事では、専有部分と共用部分、管理者と規約、集会と決議の割合、建替えを扱います。団地のルールや、被災したマンションの特別法は扱いません。
身近な例で考えると
舞台は、20戸の分譲マンション「ひだまり台マンション」です。登場人物は3人です。3階の部屋の持ち主=みさきさん、管理者(管理組合の理事長)=こうへいさん、2階の部屋の持ち主=けいたさんです。
みさきさんの部屋の中(専有部分)は、みさきさんだけの物です。一方、廊下・階段・外壁などは、20戸の持ち主みんなの物(共用部分)です。20戸の持ち主は、法律上、当然に1つの団体になります。管理組合を作る手続をしなくても、この団体はあります。
ある年、こうへいさんが集会(区分所有者の会議)を開くことにしました。
- 会日の1週間以上前に、議題と議案の要領(中身のあらまし)を書いた通知を、各区分所有者に出す。
- 集会の当日。出席は12人(委任状や書面で議決権を使った人も、出席に数える)。
- 議題1「外壁の塗り直し」。建物の形や働きを大きく変えない工事なので、出席者の過半数で決まる。12人のうち7人が賛成し、議決権でも過半数になったので可決。
- 議題2「規約を変えて、ペットの飼育を禁止する」。規約の変更は、出席者の4分の3以上の賛成がいる。12人の4分の3は9人なので、8人の賛成では足りず、否決。
- けいたさんは、夜中に大音量で音楽を流し、何度注意してもやめない。集会で、けいたさんに部屋の使用をやめさせる訴えを起こすかを話し合うことになった。このときは、決議の前に、けいたさんに言い分を述べる機会(弁明の機会)を与えなければならない。
たとえるなら、集会は「クラスの学級会」です。ただし本物のルールでは、人数(区分所有者の数)と議決権(持ち分の大きさ)の両方で数えます。広い部屋の人は議決権が大きくなるので、学級会の「1人1票」とはちがいます。
条文ではこう決まっている
専有部分と共用部分
- 区分所有権(1条・2条):1棟の建物のうち、構造上分かれていて、住居・店舗・事務所などとして独立して使える部分は、それぞれ所有権の対象にできる。この所有権を区分所有権、その部分を専有部分という。
- 共用部分(2条・4条):専有部分以外の建物の部分など。廊下や階段室のように、構造上みんなで使う部分は、区分所有権の対象にならない(法定共用部分)。集会室や管理人室のように、規約で共用部分にした部分もある(規約共用部分)。規約共用部分は、その旨の登記をしないと第三者に対抗できない(4条2項)。
- 共用部分の持分(11条・14条):共用部分は区分所有者全員の共有。持分は、専有部分の床面積の割合による。床面積は、壁などの内側線で囲まれた部分で測る。規約で別の定めもできる。
- 持分は部屋についていく(15条):共用部分の持分は、専有部分を売れば一緒に移る。専有部分と切り離して持分だけを売ることはできない。
- 敷地利用権(22条):土地の権利をみんなで持つ場合、専有部分と敷地利用権(土地を使う権利)を切り離して売ることはできない。ただし、規約に別の定めがあるときは別。
- 共同の利益に反する行為の禁止(6条1項):区分所有者は、建物の保存に有害な行為や、管理・使用について区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。部屋を借りて住む人(占有者)も同じ(6条3項)。
管理者・規約・集会
- 団体(3条):区分所有者全員で、建物などの管理を行う団体を作る。集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる。
- 管理者(25条・26条):規約に別の定めがなければ、集会の決議で選んだり辞めさせたりする。管理者は、共用部分を保存し、集会の決議を実行する。規約や集会の決議があれば、区分所有者のために原告や被告になれる。
- 規約(30条・31条・33条):建物などの管理・使用について、区分所有者どうしの決まりを定める。書面か電磁的記録で作る。規約を作る・変える・なくすには集会の特別決議がいる。ある人の権利に特別の影響があるときは、その人の承諾がいる。規約は管理者が保管し、利害関係人から求められたら、正当な理由がない限り閲覧させる。
- 集会の招集(34条・35条・36条):管理者が招集し、少なくとも毎年1回開く。区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を持つ人は、管理者に招集を求められる(この人数は規約で減らせる)。通知は会日の少なくとも1週間前に、議案の要領も示して出す。この期間は規約で伸ばせる(短くはできない)。全員の同意があれば、招集の手続なしで開ける。
- 議決権(38条):規約に別の定めがなければ、14条の割合(床面積の割合)による。
- 所在等不明区分所有者の除外(38条の2):誰が持ち主か分からない、どこにいるか分からない区分所有者がいるとき、裁判所の裁判を受けると、その人は議決権を持たないものとして決議を進められる。
- 決議の原則(39条):この法律や規約に別の定めがなければ、「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」で決める。代理人や書面で議決権を使った人は出席に数える。
- 議事録(42条)・書面決議(45条):議長は議事録を作る。書面で作るときは、議長と、集会に出席した区分所有者2人が署名する。全員の承諾があれば、集会を開かずに書面や電磁的方法で決議できる。
- 決議の効力(46条):規約と集会の決議は、部屋を買った人(特定承継人)にも効く。部屋を借りて住む人も、建物の使用方法については区分所有者と同じ義務を負う。借りて住む人は、利害関係のある議題なら集会に出て意見を述べられる(44条)が、議決権はない。
決議に必要な割合(令和8年4月1日施行の条文)
| 決めること | 定足数(出席が必要な数) | 必要な賛成 | 条文 |
|---|---|---|---|
| ふつうの管理(下の表以外) | 定めなし | 出席者の過半数 | 39条 |
| 共用部分の変更(形や働きを大きく変える) | 区分所有者・議決権の過半数 | 出席者の4分の3以上 | 17条 |
| 規約を作る・変える・なくす | 区分所有者・議決権の過半数 | 出席者の4分の3以上 | 31条 |
| 管理組合法人になる | 区分所有者・議決権の過半数 | 出席者の4分の3以上 | 47条 |
| 部屋の使用禁止・競売の訴え | 区分所有者・議決権の過半数 | 出席者の4分の3以上 | 58条・59条 |
| 建物価格の2分の1をこえる滅失からの復旧 | 区分所有者・議決権の過半数 | 出席者の3分の2以上 | 61条 |
| 建替え | 定めなし | 区分所有者・議決権の5分の4以上 | 62条 |
表の「区分所有者・議決権」は、どちらも各割合を満たす必要があるという意味です。数えるときは、議決権を持たない人(38条の2で除外された人など)を除きます。
- 共用部分の変更の特例(17条5項):次の2つの変更は、4分の3が3分の2に下がる。①共用部分の欠陥で、他人の権利を侵害している(おそれがある)ものを取り除く工事。②高齢者や障害者などの移動の負担を軽くし、便利さと安全を高める工事。
- 建替えの特例(62条2項):建物が次のどれかにあたるときは、5分の4が4分の3に下がる。①地震に対する安全性の基準に合わない。②火災に対する安全性の基準に合わない。③外壁などがはがれて落ち、周りに危害を生じるおそれがある。④給水・排水などの配管が古くなり、衛生上著しく害がある(またはそのおそれがある)。⑤高齢者・障害者などの移動の円滑化の基準に合わない。
- 規約で割合を変えられるか(17条1項・31条1項):定足数(過半数の出席)は、規約で上げることだけができる。共用部分の変更の「4分の3」は、規約で下げられる(2分の1をこえる割合まで)。規約の変更の「4分の3」には、規約で下げられるという定めがない。
- 建替えの集会の手続(62条6項・8項):建替え決議をする集会の招集通知は、会日の少なくとも2か月前に出す(規約で伸ばせる)。会日の少なくとも1か月前までに、説明会を開く。
- 小さな滅失(61条1項):建物価格の2分の1以下の部分が滅失したときは、各区分所有者が、滅失した共用部分と自分の専有部分を復旧できる。
- 保存行為(18条1項):共用部分の小さな修理などの保存行為は、各区分所有者が1人でできる。
当てはまる例・当てはまらない例
- 当てはまる(規約の変更と特別の影響):1階で店を開いているゆかさんの営業だけを禁止するよう、規約を変える。出席者の4分の3以上の賛成があっても、ゆかさんの権利に特別の影響があるので、ゆかさんの承諾がいる(31条1項)。
- 当てはまらない(保存行為):みさきさんが、こわれた共用廊下の電球を自分で取りかえた。小さな修理は保存行為なので、集会の決議はいらない(18条1項ただし書)。
- 当てはまる(買った人への効力):みさきさんが部屋を売った。買った人は、規約や、前に行われた集会の決議に従わなければならない(46条1項)。前の持ち主が滞納していた管理費も、買った人に請求できる(8条)。
- ひっかけやすい(出席者の数え方):区分所有者20人のうち、出席(委任状・書面を含む)が8人だけだった。外壁の塗り直しのようなふつうの管理なら、出席者の過半数で決まる。一方、規約の変更は、区分所有者の過半数(11人以上)と議決権の過半数が出席していないので、決議ができない。
- ひっかけやすい(スロープの工事):エントランスの段差をなくすスロープを付ける工事が、形や働きを大きく変える変更にあたるとき。高齢者などの移動の負担を軽くする工事なので、出席者の3分の2以上で決められる(17条5項)。
似ているルールとの違い
民法の共有(共有をわかりやすく)と比べると、区分所有法の特徴が見えます。
| 比べる点 | 民法の共有 | 区分所有法の共用部分 |
|---|---|---|
| 持分だけを売る | できる | できない(15条) |
| 管理の決め方 | 持分の価格の過半数 | 集会の決議(人数と議決権) |
| 登記 | 177条の対抗要件がいる | 177条は適用しない(11条3項) |
マンションの部屋を売るとき、宅建業者は、敷地の権利や規約の定めなどを重要事項として説明します。説明する項目は重要事項説明(35条)で扱っています。また、新しく建てたマンションの登記(区分建物の表題登記)は、1棟の全部の部屋をまとめて申請するルールがあります(不動産登記法をわかりやすく)。
改正前の説明との違い
法務省の説明資料によれば、改正前は、多くの決議で、集会に来なかった人や返事をしない人も含めた全員を母数にしていました。改正後は、建替えのように区分所有権の処分をともなう決議を除き、修繕などの決議は出席者の多数決で決めます。あわせて、裁判所が認めた所在等不明区分所有者を、すべての決議の母数から除く制度ができました(38条の2)。建替えの4分の3の特例ができ、大きな滅失からの復旧の割合も4分の3から3分の2に下がりました。
試験ではここをまちがえやすい
- 母数を「全員」にする型:改正後、普通決議や規約の変更などは「出席した区分所有者とその議決権」で数えます。一方、建替えは区分所有者全体の5分の4です。どちらで数えるかを入れかえた選択肢に注意します。
- 定足数を落とす型:規約の変更・共用部分の変更・使用禁止・競売・復旧の決議には、区分所有者と議決権の過半数の出席がいります。この定足数は、規約で上げることはできますが、下げることはできません。
- 招集通知の期間の型:会日の少なくとも1週間前。規約で「伸ばす」ことはできますが、短くはできません。
- 集会の招集請求の型:区分所有者の5分の1以上「かつ」議決権の5分の1以上。この人数は規約で減らせます。
- 借りて住む人の型:占有者は、利害関係のある議題について集会で意見を述べられますが、議決権はありません。
- 弁明の機会の型:部屋の使用禁止や競売の決議の前には、相手に弁明の機会を与えます。
- 分離処分の型:専有部分と敷地利用権は、規約に別の定めがない限り、切り離して売れません。共用部分の持分は、専有部分と切り離して売れません。
宅建試験では、権利関係の中で、決議の割合や集会の手続を4肢択一で問う形が考えられます。令和8年度は改正後の条文が基準なので、古い教材や過去問の解説にある「区分所有者及び議決権の各4分の3」をそのまま覚えないようにします。過去問は機構自身が「法改正により、現在の法律と一致しない場合があります」と注記しています。
○✕でたしかめよう
問1(このサイトのオリジナル問題)
区分所有者が30人のマンションで、区分所有者20人(議決権も全体の過半数)が出席した集会が開かれた。この集会で規約を変更する決議は、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の賛成で成立する。なお、規約の変更で特別の影響を受ける区分所有者はいないものとする。(令和8年4月1日施行の条文による)
答え:○ 規約の設定・変更・廃止は、区分所有者と議決権の過半数が出席したうえで、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の多数で決めます(31条1項)。20人の出席は30人の過半数なので、定足数も満たしています。なお、ある区分所有者の権利に特別の影響があるときは、その人の承諾もいります。
問2(このサイトのオリジナル問題)
集会の招集の通知は会日の少なくとも1週間前に出さなければならないが、この期間は規約で3日前まで短くすることができる。
答え:✕ 35条1項ただし書は、この期間を規約で「伸長」できるとしています。規約で短くすることはできません。
問3(このサイトのオリジナル問題)
マンションの部屋を借りて住んでいる人は、集会の議題について利害関係があるときは、集会に出席して意見を述べることができ、決議に加わって議決権を行使することもできる。
答え:✕ 占有者は、利害関係のある議題について集会に出席して意見を述べられます(44条1項)。しかし議決権は区分所有者のもので、占有者は決議に加われません。
まとめ
- 部屋の中は専有部分(自分の物)、廊下や外壁は共用部分(みんなの物)。共用部分の持分や敷地利用権は、部屋と切り離して売れないのが原則。
- 令和8年4月1日から、ふつうの決議は「出席者の過半数」、規約の変更などの特別決議は「過半数の出席+出席者の4分の3」。
- 建替えは区分所有者全体の5分の4(耐震性の不足などの5つの場合は4分の3)。大きな滅失からの復旧は出席者の3分の2。
- 招集通知は1週間前(規約で伸長のみ)。招集請求は5分の1。全員の同意で招集の手続を省略、全員の承諾で書面決議。
- 規約と決議は部屋を買った人にも効く。借りて住む人は意見を言えるが議決権はない。
次に読むなら、不動産登記法をわかりやすくがおすすめです。規約共用部分の登記や、新築マンションの表題登記など、区分所有の建物を登記の面から見ると、この記事の内容が具体的になります。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています(e-Govの改正履歴で、令和7年法律第47号による改正の施行日が2026年4月1日であることを確認)。
- e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」(1条、2条、3条、4条、6条、8条、11条、14条、15条、17条、18条、22条、25条、26条、30条、31条、33条、34条、35条、36条、38条、38条の2、39条、42条、44条、45条、46条、47条、58条、59条、61条、62条)
- 法務省民事局「区分所有法・被災区分所有法の改正について」(説明資料、令和8年4月)(施行日、出席者の多数決、所在等不明区分所有者の除外、建替え・復旧の割合)
- 不動産適正取引推進機構「試験概要」(出題の根拠となる法令の基準日)
働く人の法律試験ノート