宅建の勉強を無料でどこまでできるか:公式の過去問・条文・統計の使い方と限界

宅建の勉強は、公式に無料で公開されている材料だけで、かなりの所まで進められます。不動産適正取引推進機構(試験を実施している機関。以下「機構」)のサイトには、昭和63年度から令和7年度までの問題と正解番号(40回分)があります。条文はe-Gov法令検索(国の法令データベース)で、統計は国土交通省や財務省のサイトで、不動産の広告のルールは業界団体のサイトで読めます。

ただし、無料の材料には3つの穴があります。①解説がない、②範囲を順に学ぶ道筋(テキストの役割)がない、③古い問題は改正前の答えのまま、の3つです。無料で進めるなら、「過去問のPDFを解き、迷った肢は条文で根拠を確かめる」を中心にし、解説を読むより時間がかかることを見込んでおきます。お金をかけるなら、まず受ける年度向けの分野別の過去問集(解説つき)からです。

この記事では、公式の材料を一覧にし、それぞれで何ができ、何ができないかを示します。民間のサイトやアプリの順位付けはしません。

公式に無料で手に入るものは何か

2026年10月に当サイトが確かめた、無料で使える公式の材料です。

材料出しているところ使い道足りない所
過去問と正解番号(40回分)機構2時間の通し練習・分野の練習解説がない
合格基準点・合格率機構(試験実施概況)過去問の点数と比べる―
条文e-Gov法令検索答えの根拠を確かめるどこが大事かは書いていない
宅建業法の解釈・運用の考え方国土交通省宅建業法の条文の運用を確かめる業者向けの文書で長い
重要事項説明の様式例国土交通省35条で説明する項目の全体を見る試験用ではない
地価公示・建築着工統計・土地白書国土交通省統計の最新の数字どの数字が問われるか決まっていない
法人企業統計調査財務省統計の最新の数字同上
不動産の表示に関する公正競争規約不動産公正取引協議会連合会表示のルールの原文施行規則・別表まで読むと長い
タックスアンサー国税庁国税の一般的な説明地方税はない

このほか、このサイトにも無料の宅建の5分○✕ドリルがあります。1回10問のオリジナルの○✕で、令和8年4月1日の時点の法令で確かめた肢を出しています。

公式の過去問で、何ができて何ができないか

機構の「宅建試験の問題及び正解番号表」のページで、年度ごとの問題と正解番号表(PDF)が見られます。令和2年度と令和3年度は10月と12月の2回に分けて行われたので、38年度分で40回分です。

できること:

  • 本番と同じ2時間で、50問を通して解く。印刷して紙で解けば、マークシートで答える本番の形に近くなります。
  • 解いた点数を、その年度の合格基準点と比べる。基準点は機構の「試験実施概況」に載っています(直近5年は50問中33〜37点)。
  • 分野ごとに、どんな形で問われたかを見る。

できないこと:

  • なぜその答えになるかを知る:解説は付いていません。機構は「試験問題及び解答内容に関するお問合せには、一切お答えしません」としています。
  • 今の法律で答えを確かめる:機構はページで「法改正により、現在の法律と一致しない場合があります」と注意しています。古い年度の問題には、今の条文では答えが変わっているものがあります。
  • 人に見せる形で使う:機構の「著作権・免責事項」のページは、私的使用や引用など著作権法で認められた行為を除き、サイトの内容の無断転載と無断改変をできないとしています。自分で解くのは自由ですが、問題文を書き写して公開することは避けます。

何年分をどう解くか、改正で答えが変わる所の見分け方は、この記事の最後で紹介する過去問の記事にまとめています。解いた回の問番号から論点を引きたいときは、このサイトの令和7年度の出題論点一覧など、年度ごとの一覧が使えます(問題文と正解は載せていません)。

解説がない分は、条文でどう補うか

公式の過去問を無料で使う人がいちばん時間を使うのは、解説の代わりに根拠を確かめる作業です。手順を決めておくと、迷う時間が減ります。

  1. 肢の中から、主語(だれが)・要件(どんなときに)・数字(期間・面積など)に印を付ける。
  2. 肢に出てくる法律の名前で、e-Gov法令検索を開き、関係する条を探す。
  3. 条文の言葉と肢の言葉を並べ、どこが同じでどこがちがうかを1行で書く。
  4. 正解番号と見比べる。自分の判断と正解がちがったら、その肢が出された年度より後に改正がないかを確かめる。

宅建業法の肢で、条文だけでは判断がつかないときは、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が手がかりになります。条文ごとに、行政がどう運用するかを書いた文書で、令和8年4月1日以降に使う版が公開されています。ただし、宅建業者と行政のための文書なので、試験のために全部を読む必要はありません。迷った条の所だけを引きます。

この作業は、解説を読むより時間がかかります。1肢の根拠を確かめるのに数分かかることもあります。時間が限られている人ほど、あとの見出しの「お金をかける順番」を先に考えてください。

統計の問題は、どこで最新の数字を確かめるか

出題の範囲には「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。」(宅地建物取引業法施行規則8条5号)があります。当サイトでは、機構が公開している宅建試験の問題(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読み、主な論点ごとに数えました(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません)。統計を主な論点とする問題は40回中38回にあり、直近10回(令和7年度〜平成30年度)は10回とも問48でした。

その統計の問題で、令和7年度の選択肢に出てきた資料は次の4つでした(当サイトが機構公開の問題冊子で確かめた資料の名前です)。どれも無料で公開されています。

資料出しているところ公表の時期(確かめたもの)
地価公示国土交通省毎年1月1日時点の価格を3月に公示
建築着工統計調査報告(年計)国土交通省令和7年計は令和8年1月30日に公表
年次別法人企業統計調査財務省原則として毎年9月上旬
土地白書国土交通省令和8年版は令和8年7月10日に公表

令和7年度の選択肢では、地価公示・土地白書・建築着工統計はその年(令和7年)に公表された版、法人企業統計は前の年に公表された版(令和5年度分)でした。どの年の、どの資料の、どの数字が問われるかは、公式に決まっていません。当サイトでは予想しません。言えるのは、統計は毎年新しい数字になるので、過去問の答えを覚えても使えないことです。試験の前に、それぞれの最新の公表を開き、全体の増減(前の年より増えたか減ったか)と、大きな数字の桁を確かめておきます。なお、5号は登録講習修了者の免除の範囲なので、5問免除を受ける人は解かなくてかまいません。

表示規約・税・土地建物は、無料でどこまでできるか

  • 不動産の表示:不動産公正取引協議会連合会のサイトで、「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」の本文(2022年9月1日付の変更を反映したもの)がPDFで見られます。原文に当たれるのは強みですが、別表まで含めると長いので、問題でまちがえた所だけを引きます。
  • 税:国税(印紙税・登録免許税・所得税など)は、国税庁のタックスアンサーで一般的な説明が読めます。ページごとに「〇年〇月〇日現在法令等」と時点が書かれているので(たとえば「登録免許税の税額表」は2026年10月の確認で令和8年4月1日現在)、試験の基準日(その年度の4月1日)と見比べます。不動産取得税や固定資産税の地方税は、地方税法の条文をe-Gov法令検索で確かめます。
  • 土地・建物:地形と災害、建物の構造の問題は、一つにまとまった公式の資料がありません。ここは無料の材料だけで進めにくい分野で、基本書の章を使うほうが早く進みます。

無料の材料だけでは足りない3つのこと

ここまでをまとめると、無料の公式の材料で足りないのは次の3つです。

  • 範囲を順に学ぶ道筋:過去問も条文も、どの順で学べばよいかは示していません。法律を初めて学ぶ人が、権利関係(民法など)をいきなり過去問と条文で学ぶのは、時間がかかります。
  • 解説:上の手順で条文から補えますが、時間がかかります。
  • 改正後の答え:古い問題の答えを今の法律に合わせる作業は、自分でする必要があります。

無料の模試には解説がついているものがあり、2つ目の穴を一部埋められます(何がついているかは模試ごとに確かめます)。使い方と選び方は宅建の模試の使い方にまとめています。アプリを使うときに確かめる点(更新日、法改正への対応、過去問の出典の表示)は宅建のアプリの選び方で説明しています。

お金をかけるなら、どの順番か

無料の材料を中心にしながら、お金をかける順番は、当サイトの考えでは次のとおりです。

  1. 受ける年度向けの分野別の過去問集:解説と、改正への対応の2つの穴を同時に埋めます。いちばん時間を節約できる教材です。
  2. 基本書(テキスト):範囲を順に学ぶ道筋です。法律を学んだことがある人は、まちがえた所だけ引く辞書として使えます。
  3. 年度別の過去問集:機構の無料のPDFで代えられます。解説がほしい人だけ買います。

教材にかける予算ごとの組み合わせは宅建のテキスト・問題集の選び方にまとめています。どの順を選んでも、勉強の時間そのものは減りません。無料で進めると、お金の代わりに、根拠を確かめる時間を使うことになります。

今日からやること

  • 機構の過去問ページを開き、通し練習に使う新しい年度のPDFを決める。
  • e-Gov法令検索で、宅地建物取引業法を一度開き、条の探し方を試す。
  • 国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の置き場所を、ブックマークしておく。
  • 受ける年度向けの分野別の過去問集を買うかどうかを、上の順番で決める。
  • 統計は、試験の前に確かめる資料の名前(地価公示・建築着工統計・法人企業統計・土地白書)をメモしておく。

このサイトで次に読むなら、宅建の過去問がおすすめです。無料の過去問を何年分、どの順で解くか、古い問題の答えが変わる所をどう見分けるかを具体的に決められます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)