土地区画整理組合と保留地:組合の設立・組合員・賦課金・保留地と清算金

土地区画整理組合(とちくかくせいりくみあい)は、区画整理をする地区の土地の持ち主と借地権者が、自分たちで事業を行うために作る法人です。7人以上が共同で定款(ていかん=組合のきまり)と事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けると成立します(土地区画整理法14条1項・21条5項・22条)。

ひとことで言うと、「3分の2以上の同意で作り、作ったら反対した人も全員が組合員になる団体」です。組合員は総会で事業のことを決め、事業の費用の一部を賦課金(ふかきん)として負担します。事業の費用にあてるために、換地として配らずに残す土地が保留地(ほりゅうち)、換地の大きさや価値の釣り合わない分をお金で調整するのが清算金(せいさんきん)です。

当サイトが、不動産適正取引推進機構が公開している過去の試験(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を1問ずつ読んで数えたところ、土地区画整理法が主な論点の問題は40問で、全40回すべてに出ていました。直近10回(令和7年度〜平成30年度。令和2・3年度は10月と12月の2回ずつ)でも毎回1問で、9回は問20、平成30年度は問21です(分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。組合や保留地など、肢ごとの論点までは数えていません)。

区画整理の全体の流れ(施行者の種類、76条の建築の制限、仮換地、換地処分の効果)は土地区画整理法をわかりやすく、仮換地の指定の後の使い方は仮換地の記事で扱っています。この記事は、組合が施行する場合の「組合の中のしくみ」と、保留地・清算金に絞ります。

身近な例で考えると

舞台は、ある市の郊外の、細い道が入り組んだ農地と住宅の混ざる地区です。

人物立場したこと
しげおさん地区の土地の持ち主組合を作る中心になる
のぶこさん地区の土地の持ち主組合の設立に反対した
たかしさんのぶこさんの土地の借地権者借地権の登記をしていない
えりかさん地区の外に住む会社員事業の後に保留地を買う
  1. しげおさんたち8人が、定款と事業計画を作った。設立の認可を申請する前に、地区の土地の所有者と借地権者の、それぞれ3分の2以上の同意を集めた。同意した人の土地の面積の合計も、全体の3分の2以上あった(18条)。
  2. たかしさんの借地権は登記されていない。しげおさんたちの申請で市町村長が公告したので、たかしさんは1か月以内に、地主ののぶこさんと連署するか借地権を証明する書面をつけて、市町村長に申告した(19条)。
  3. 知事が設立を認可し、組合が成立した。設立に反対したのぶこさんも、地区に土地を持っているので組合員になった。借地権者のたかしさんも組合員である(25条1項)。
  4. 総会で、賦課金の額と集め方を決めた。のぶこさんは「組合に貸しているお金があるから、それと差し引きにしたい」と言ったが、賦課金の納付について相殺を組合に対抗することはできない(40条)。
  5. 工事が終わり、換地処分の公告があった。その翌日に、換地計画で定めた保留地は組合のものになり、清算金の額も確定した(104条8項・11項)。組合は保留地をえりかさんに売り、その代金を事業の費用にあてた。

たとえるなら、組合は「地区の土地の持ち主全員が入るクラブ」です。入るかどうかは自分で選べず、地区に土地を持っていれば会員になり、会費(賦課金)も払います。ただし本物のルールでは、クラブを作るには知事の認可がいり、大事なことの決め方も法律で決まっています。

条文ではこう決まっている

組合を作る(14条・18条・19条・21条・22条)

  • 設立の認可(14条1項):組合を設立しようとする者は、7人以上共同して、定款と事業計画を定め、その組合の設立について都道府県知事の認可を受ける。
  • 事業計画より先に作る場合(14条2項):必要があれば、7人以上共同して、定款と事業基本方針を定めて認可を受けることもできる。
  • 同意(18条):認可を申請する前に、施行地区となる区域内の宅地について、所有権を持つ人と借地権を持つ人の、それぞれ3分の2以上の同意を得る。同意した人の宅地の地積と、同意した借地権者の借地の地積の合計も、区域内の宅地の総地積と借地の総地積の合計の3分の2以上でなければならない。
  • 未登記の借地権(19条):登記していない借地権者は、市町村長の公告の日から1か月以内に、宅地の所有者と連署するか借地権を証明する書面をつけて、市町村長に申告する。申告がなければ、18条の同意を数えるときは、その借地権はないものとみなされる(19条4項)。
  • 成立と公告(21条):組合は、知事の認可によって成立する(5項)。知事は認可をしたら遅滞なく公告し、公告があるまでは、組合の成立や定款・事業計画を、組合員その他の第三者に対抗できない(7項)。
  • 法人(22条):組合は法人とする。

組合員(25条・25条の2・26条)

  • 組合員(25条1項):「施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。」設立に反対した人も入る。
  • 参加組合員(25条の2):都市再生機構や地方住宅供給公社などで、事業への参加を希望し、定款で定められたものは、参加組合員として組合員になる。
  • 権利義務の移転(26条1項):組合員から宅地の所有権や借地権を受け継いだ人がいれば、その組合員がその権利について組合に対して持っていた権利義務は、受け継いだ人に移る。借地権が消えたときは、地上権なら宅地の所有者に、賃借権なら宅地の賃貸人に移る(26条2項)。

役員・総会・総代会(27条・31条・34条・36条・38条)

  • 役員(27条):理事5人以上、監事2人以上。原則として、組合員(法人なら、その役員)の中から総会で選挙する。
  • 総会で決めること(31条):定款の変更、事業計画の決定と変更、借入金、経費の収支予算、賦課金の額と賦課徴収の方法、換地計画、仮換地の指定、保留地の処分方法、事業の引継ぎへの同意など。
  • ふつうの決め方(34条1項):定款に特別の定めがなければ、組合員の半数以上が出席しないと開けず、議事は出席組合員の過半数で決める。可否同数なら議長が決める。
  • 重い決め方(34条2項):定款の変更・事業計画の変更のうち政令で定める重要な事項、事業の引継ぎへの同意、組合の解散と合併は、組合員の3分の2以上が出席し、出席した組合員のうち宅地の所有者と借地権者の、それぞれ3分の2以上で決める。地積の3分の2以上という18条後段の要件も準用される。
  • 総代会(36条):組合員が100人を超える組合は、総会に代わって権限を行う総代会を設けられる。
  • 議決権(38条):組合員と総代は、それぞれ1個の議決権と選挙権を持つ。

お金と終わり方(40条・41条・45条)

  • 賦課金(40条):組合は、事業の経費にあてるため、参加組合員以外の組合員から賦課金を集められる。額は、宅地や借地の位置・地積などを考えて公平に定める。組合員は、賦課金の納付について、相殺をもって組合に対抗できない。
  • 滞納(41条):組合は督促し、期限までに納めない人がいれば、市町村長に滞納処分を申請できる。市町村長が申請から30日以内に手をつけないか、90日以内に終えないときは、組合の理事が知事の認可を受けて自ら滞納処分ができる。
  • 解散(45条):設立の認可の取消し、総会の議決、定款で定めた解散の事由、事業の完成かその完成の不能、合併、事業の引継ぎで解散する。総会の議決・定款の事由・事業の完成や不能による解散は、知事の認可がいる。借入金があれば、債権者の同意もいる。

保留地と清算金(94条・96条・104条・110条)

  • 保留地(96条1項):個人・組合・区画整理会社が施行する事業の換地計画では、事業の費用にあてるため、または規準・規約・定款で定める目的のために、一定の土地を換地として定めず、保留地として定められる。
  • 公的な施行者の保留地(96条2項・3項):都道府県・市町村・国土交通大臣などが施行する場合は、事業の後の宅地の価額の総額が事業の前の総額を超えるときに限り、費用にあてるため、その差額に相当する価額までしか定められない。定めるときは土地区画整理審議会の同意がいる。
  • 清算金(94条):換地を定めた場合や定めなかった場合に不均衡が生じるときは、位置・地積・土質・水利・利用状況・環境などを総合的に考えて、お金で清算する。その額は換地計画で定める。
  • いつ決まるか(104条8項・11項):換地処分の公告があった日の翌日に、清算金が確定し、保留地は施行者が取得する。
  • 集めることと払うこと(110条):施行者は、換地処分の公告があったら、確定した清算金を集めるか払う。政令の定めにより、利子をつけて分割して集めたり払ったりできる。

施行者で変わる保留地の決まり

保留地は、だれが施行者かで、定められる目的と量が違います。

施行者保留地を定められる目的量の上限手続
個人・組合・区画整理会社事業の費用、または規準・規約・定款の目的条文に上限なし―
都道府県・市町村・大臣など事業の費用だけ価額が増えた分まで審議会の同意

都道府県や市町村が施行するときは、土地の持ち主が自分で始めた事業ではないので、事業で土地の価値が増えた分の範囲でしか保留地をとれない、という作りです。組合施行の保留地は、組合員が定款で目的を決められるぶん、自由度が大きくなっています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(反対した人):のぶこさんは設立に反対したが、施行地区内に土地を持っているので組合員になる。反対しても組合から抜けることはできない(25条1項)。
  2. 当てはまらない(地区の外の人):えりかさんは、施行地区内の宅地の所有権も借地権も持っていないので、組合員ではない(25条1項)。
  3. ひっかけやすい(同意の数え方):所有者の3分の2以上が同意しても、借地権者の同意が3分の2に届かなければ認可の申請はできない。所有者と借地権者は「それぞれ」数える。さらに、面積の合計でも3分の2以上が必要(18条)。
  4. 当てはまる(土地を買った人の賦課金):のぶこさんが賦課金を払わないまま土地をほかの人に売った。組合員としての権利義務は買った人に移る(26条1項)。
  5. ひっかけやすい(総会の重い決め方):組合の解散を総会で決めるときは、組合員の3分の2以上の出席と、所有者・借地権者それぞれの3分の2以上の賛成がいる(34条2項)。さらに知事の認可も必要(45条)。
  6. 当てはまらない(都道府県が施行する場合の保留地):都道府県が施行する区画整理では、「将来の公園の整備資金を積み立てる」といった目的で保留地を定めることはできない。公的な施行者が保留地を定められるのは、事業の費用にあてるためだけ(96条2項)。

区分所有法の「管理組合」との違い

宅建試験の権利関係には、マンションの区分所有者の団体(いわゆる管理組合)も出てきます。「組合」という同じ言葉でも、しくみはかなり違います。

比べる点土地区画整理組合マンションの区分所有者の団体
できるとき7人以上が申請し、知事の認可で成立区分所有の建物なら当然にある(区分所有法3条)
法人か法人(22条)特別決議と登記で法人になれる(区分所有法47条)
議決権1人1個(38条)原則は専有部分の床面積の割合(区分所有法38条・14条)

「組合員は全員が入る」という点だけは共通です。管理組合が法人になる手続は管理組合法人の記事で扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 設立の人数と認可権者:7人以上で、都道府県知事の認可。市町村長の認可や国土交通大臣の認可とする形に注意します。
  • 同意の数え方:所有者と借地権者の「それぞれ」3分の2以上、そのうえ面積でも3分の2以上。「合わせて3分の2」とする形は誤りです。
  • 組合員の範囲:施行地区内の宅地の所有者と借地権者は、反対した人も含めて全員が組合員。「同意した人だけが組合員」とする形は誤りです。
  • 権利義務の移転:組合員から土地を買った人は、組合に対する権利義務も引き継ぎます。
  • 賦課金と相殺:賦課金の納付について、相殺を組合に対抗できません。
  • 総会の決め方:ふつうは「半数以上の出席・出席者の過半数」、解散や合併などは「3分の2以上の出席・所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上」。
  • 保留地の取得の時期:換地処分の公告の「翌日」に施行者が取得します。公告の日が終わった時に消える権利(換地を定めなかった土地の権利など)と混ぜないようにします。

宅建試験では、土地区画整理法は毎回1問出ています。直近10回の問は、10回のうち7回が「誤っているもの」を選ぶ形でした。組合の設立・組合員・総会の決め方は数字の入れ替えで誤りを作りやすいので、「7人」「それぞれ3分の2」「全員が組合員」を正確に覚えておきます。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
土地区画整理組合の組合員Aは、組合に対して100万円の貸金債権を持っている。Aは、組合から賦課金の納付を求められたとき、この貸金債権と相殺したことを組合に主張して、賦課金の納付を免れることができる。

答え:✕ 分かれ目は、賦課金について相殺が許されるかどうかです。土地区画整理法40条は、組合員は「賦課金の納付について、相殺をもつて組合に対抗することができない」としています。正しくは、Aは相殺を組合に主張できず、賦課金を納めなければなりません。お互いに同じ種類の債務があれば相殺できるという民法の原則(505条)と取り違えた文です。

問2(このサイトのオリジナル問題)
土地区画整理組合の組合員Aが、施行地区内に持つ宅地をBに売却した。Aが組合に対して負っていた賦課金の支払義務のうち未納の分がある場合、その義務は、宅地の所有権とともにBに移転する。

答え:○ 分かれ目は、組合に対する権利義務が、土地を受け継いだ人に移るかどうかです。土地区画整理法26条1項は、宅地の所有権や借地権を承継した者があるときは、組合員がその権利について組合に対して持っていた権利義務は、承継した者に移転するとしています。売主の借金は買主に移らない、と考えると✕にしてしまいます。Bは施行地区内の宅地の所有者になるので、25条1項により組合員にもなります。

問3(このサイトのオリジナル問題)
土地区画整理組合が総会で組合の解散を決める場合、定款に特別の定めがなければ、組合員の半数以上が出席し、出席組合員の過半数で議決すれば足りる。

答え:✕ 分かれ目は、解散の議決に重い決め方が要るかどうかです。土地区画整理法34条2項は、組合の解散と合併などの議事は、組合員の3分の2以上が出席し、出席した組合員のうち宅地の所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上で決するとしています。正しくは、半数の出席と過半数では足りません。「半数以上の出席・出席組合員の過半数」は34条1項のふつうの議事の決め方で、それと取り違えた文です。総会の議決による解散には、さらに知事の認可がいります(45条)。

この分野の○✕は、宅建の5分○✕ドリルの「法令上の制限」で続けて解けます。

まとめ

  • 組合は、7人以上で定款と事業計画を定め、都道府県知事の認可で成立する法人。所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意と、面積の3分の2以上がいる。
  • 施行地区内の宅地の所有者と借地権者は、反対した人も全員が組合員。土地を受け継いだ人には、組合に対する権利義務も移る。
  • 総会はふつう「半数以上の出席・過半数」、解散や合併などは「3分の2以上の出席・所有者と借地権者のそれぞれ3分の2以上」。100人を超えれば総代会を置ける。
  • 賦課金は相殺で対抗できない。滞納には市町村長の滞納処分。
  • 保留地は換地処分の公告の翌日に施行者が取得し、清算金もその日に確定する。公的な施行者の保留地は、価額が増えた分まで。

次に読むなら、仮換地の記事がおすすめです。組合が総会で決める仮換地の指定の後に、土地の使い方や売り方がどう変わるかを、同じ事業の流れの中で確かめられます。

参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索(API。基準日2026-04-01)で確かめています。

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