「去年出た論点は、今年は出ない」。宅建の勉強で、よく聞く言い方です。当サイトが平成19年度から令和7年度までの21回分の出題を数えて確かめたところ、全体では、この言い方は当たっていませんでした。
- 前の回に主な論点として出た論点が、次の回にも出た割合は50%(343組のうち171組)。
- 前の回に出なかった論点が、次の回に出た割合は46%(357組のうち166組)。
- はっきりした「交互」が見えたのは、税の問24(固定資産税と不動産取得税)と問25(地価公示法と不動産鑑定評価)です。
- 民法で「続けて出たことがない」論点(債権譲渡など)は、出た回数が少なく、偶然でも起きる範囲でした。
この記事は、過去の出題の事実を数えたものです。令和8年度に何が出るかの予想には使えません。数え方と、数字の読み方を順に説明します。
確かめた言い伝えと、数えた範囲
確かめたのは、「ある論点が前の回に出たら、次の回には出にくい」という言い方です。もし当たっているなら、前の回に出た論点が次の回にも出る割合は、前の回に出なかった論点が次の回に出る割合より、はっきり低くなるはずです。
数えた範囲は、平成19年度から令和7年度までの21回です。令和2年度と令和3年度は、10月と12月に別の問題で試験があったので、それぞれ2回と数え、10月試験→12月試験→次の年度の順に並べました。21回の並びの中で、となり合う2回(前の回と次の回)を20組つくり、論点ごとに「前の回に出たか」「次の回に出たか」を見ています。
この数字は、どうやって数えたのか
不動産適正取引推進機構が公開している宅建試験の問題(昭和63年度〜令和7年度の40回、2,000問)を、当サイトが1問ずつ読み、主な論点と副の論点に分けて数えました。分け方は当サイトの判断で、公式の分類ではありません。4回分200問を別の担当が読み直し、主な論点の一致は97.5%でした(食い違った問は直してから数えています)。
「主な論点」は、その問が全体として何を聞いているかで1つだけ決めたものです。この記事の「出た」は、主な論点として出たことを指します。ほかの論点の問の中に肢として混ざった場合(副の論点)は数えていません。建築基準法や宅建業法には、1問の中にいくつもの規定の肢が混ざる「総合」型の問があります。その中の論点は副の論点として記録されるので、この記事の数には入っていません。総合型の中身まで見るときは、副の論点の数もあわせて見ます(下の「この数字の使い方」で案内する出題論点ランキングに載せています)。
対象にしたのは、21回のうち2割〜8割(5〜16回)に主な論点として出た35の論点です。毎回のように出る論点(借地借家法・区分所有法・35条書面など)は、前の回に出たかどうかに関係なく次も出るので、比べる意味がありません。反対に、21回で1〜4回しか出ていない論点は、組の数が少なすぎます。35論点×20組で、700組を数えました。
全体の結果:前の回に出たかどうかで、ほとんど差はなかった
| 前の回 | 組の数 | 次の回に出た | 割合 |
|---|---|---|---|
| 出た | 343組 | 171組 | 50% |
| 出なかった | 357組 | 166組 | 46% |
前の回に出た論点のほうが、次の回にも出た割合が少し高いくらいで、「出たら次は出にくい」という傾向は全体では見えませんでした。
分野の問数が今と同じになった平成21年度以降の19回だけで数え直しても(対象は38論点)、前の回に出た論点が次も出た割合は51%(334組のうち171組)、出なかった論点が次に出た割合は45%(350組のうち159組)で、結果は変わりません。
はっきり交互だったのは、税の問24と問25
論点ごとに見ると、前の回に出たときと出なかったときで、次の回に出る割合が大きく違う論点がありました。上位はすべて税・その他です。
| 論点 | 前の回に出た次の回 | 前の回に出なかった次の回 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 1/9組 | 9/11組 |
| 不動産取得税 | 1/10組 | 8/10組 |
| 不動産鑑定評価 | 3/10組 | 7/10組 |
| 地価公示法 | 3/10組 | 7/10組 |
| 登録免許税 | 0/5組 | 6/15組 |
固定資産税は、前の回に出たときの次の回に出たのが9組のうち1組だけでした。前の回に出なかったときは、11組のうち9組で次の回に出ています。不動産取得税も同じ形です。問24には固定資産税か不動産取得税のどちらかが来ることが多く、片方が出た次の回は、もう片方が来ていた、ということです。問25の地価公示法と不動産鑑定評価にも同じ向きの差があります。問ごとの年の並びは、宅建の税・その他の出題傾向の表で確かめられます。
固定資産税の差が偶然かどうかも確かめました。21回のうち10回出る論点を、21回の中にでたらめに散らしたとき、続けて出た組が1組以下になる並びは、すべての並べ方の0.6%しかありません。固定資産税と不動産取得税の交互は、偶然とは考えにくい並びです。地価公示法の「10回出て、続けて出たのが3組」は、でたらめに散らしても24%の確率で起きる並びで、交互と言い切れるほどではありません。
ただし、2つ注意があります。
- 令和2年度と令和3年度は、どちらも10月試験が不動産取得税、12月試験が固定資産税でした。この記事では10月→12月の順に並べたので、この4回の交互には、2回の試験の分け方が入っています。
- 交互にならなかった回もあります。令和3年度12月試験と令和4年度はどちらも固定資産税、令和5年度と令和6年度はどちらも不動産取得税でした。
民法の「続けて出たことがない」は、偶然でも起きる
民法には、21回の中で続けて出たことが一度もない論点がありました。
| 論点 | 21回で出た回 | 続けて出た組 | でたらめに散らしても起きる確率 |
|---|---|---|---|
| 債権譲渡 | 6回 | 0組 | 15% |
| 相隣関係 | 5回 | 0組 | 30% |
| 請負 | 5回 | 0組 | 30% |
6回しか出ない論点なら、21回の中にでたらめに散らしても、15%の確率で一度も続けて並びません。5回なら30%です。この3つの「続けて出ない」は、出題の決まりがあると言えるほどの差ではなく、偶然と区別できません。民法の論点ごとの数は宅建の権利関係の出題傾向にまとめています。
続けて出ているように見える論点は、ほぼ毎回出る論点
反対に、前の回に出た次の回にもよく出ていたのは、広告(15組のうち13組)と監督処分・罰則(16組のうち13組)でした。どちらも21回のうち16回出ています。ほぼ毎回出る論点は、続けて出るのが当たり前で、16回をでたらめに散らしても、続けて出た組が13組以上になる確率は11%ほどあります。「前に出たから次も出る」というより、「ほとんど毎回出る」と読むのが数に合います。
この数字の使い方
この記事の数から言えるのは、次の3つです。
- 「前の回に出た論点は次の回に出ない」は、全体では当たっていません。前の回に出たことを理由に、論点を勉強から外す根拠にはなりません。
- 税の問24(固定資産税と不動産取得税)と問25(地価公示法と不動産鑑定評価)は、交互に出た時期が長く続いていました。ただし例外の回もあり、どちらが来るかを決め打ちできるほどではありません。どちらが来ても答えられるように、両方を準備しておくのが数字に合った備え方です。
- 民法の「続けて出ない」は、偶然と区別できません。
勉強の順番を考えるときは、まず問数の多い分野(当サイトの数え方で宅建業法20問、権利関係14問)と、直近10回で毎回出ている論点から固めます。どの論点が毎回出ているかは宅建の出題論点ランキングに、分野ごとの点の取り方は宅建試験の得点戦略にあります。覚えた論点は、1回で終わらせずに間をあけてもう一度当たると忘れにくくなります(復習の間隔の決め方)。論点を混ぜた○✕は、宅建の5分○✕ドリルで続けて解けます。
参考にした公式の情報(2026年10月確認)
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(宅建試験の実施機関)
- 同「宅建試験の問題及び正解番号表」(昭和63年度〜令和7年度の問題と正解番号表のPDF。当サイトの集計の出典)
- 同「試験概要」(50問・四肢択一式、出題の根拠は試験を行う年度の4月1日現在施行の法令)
働く人の法律試験ノート