印紙税と登録免許税をわかりやすく:かかる文書・税率・軽減の期限

印紙税(いんしぜい)は、売買の契約書や領収書などの文書を作った人が納める国の税金です。登録免許税(とうろくめんきょぜい)は、所有権の移転などの登記を受ける人が納める国の税金です。不動産を買うと、たいてい両方に出会います。

宅建試験でよく使う数字を先に並べます。印紙税は、不動産の売買契約書なら記載された金額で税額が決まり、記載金額が10万円を超えるものは令和9年3月31日までに作る分が軽減されます。印紙をはらないと、過怠税(かたいぜい)で本来の税額の3倍になります。登録免許税は、売買による所有権の移転が本則で1,000分の20、土地の売買は令和11年3月31日まで1,000分の15。個人が自分で住む家の登記には、さらに軽い税率があります(令和9年3月31日まで)。

この記事では、この2つの税を扱います。不動産取得税と固定資産税は不動産の税金の記事、売ったときの所得税は譲渡所得の記事で説明しています。数字は、令和8年度の宅建試験の基準となる令和8年4月1日時点の条文と、国税庁の説明で確かめました。

身近な例で考えると

登場人物は次のとおりです。

人物立場したこと
けんたさん会社員中古の家と土地を買う
たかしさん会社員自宅の家と土地を売る
みゆきさん土地の持ち主空き地を駐車場用に貸す

けんたさんは、たかしさんから、築20年の一戸建て(床面積90㎡)と土地を、代金3,000万円で買います。自分で住むための家です。住宅ローンを組み、家に抵当権を付けます。次の数字は、このサイトで作った計算例です。

契約書と領収書(印紙税)

  1. 売買契約書を2通作り、けんたさんとたかしさんが両方に署名して、1通ずつ持つ。2通とも契約の成立を証明する文書なので、どちらも課税される。
  2. 記載金額は3,000万円。本則の税額は2万円だが、軽減で1通1万円になる。2人で作った文書なので、2人が連帯して納める義務を負う。
  3. 印紙をはったら、文書と印紙にまたがるように、印章か署名で消す(消印〈けしいん〉)。
  4. たかしさんが代金を受け取って書いた領収書には、印紙はいらない。商人でない個人の行為は「営業」にあたらず、営業に関しない領収書は非課税だから(国税庁 No.7105)。

登記(登録免許税)

  1. 土地の所有権の移転:土地の価格(固定資産課税台帳の価格)が1,500万円なら、1,500万円×15/1,000=22万5,000円。
  2. 家の所有権の移転:家の価格が500万円。住宅用家屋の要件を満たすので、500万円×3/1,000=1万5,000円(本則の20/1,000なら10万円)。
  3. 家への抵当権の設定:ローンの額2,500万円が基準。住宅の取得の資金なので、2,500万円×1/1,000=2万5,000円(本則の4/1,000なら10万円)。

一方、みゆきさんは、空き地を駐車場用に会社に貸します。権利金(返してもらわないお金)100万円と、毎月の地代を決めた契約書を作りました。土地の賃貸借の契約書は課税され、記載金額は権利金の100万円です。地代は記載金額に入りません。

たとえると、印紙税は「大事な紙を作ったときの手数料」、登録免許税は「登記簿に名前をのせてもらう手数料」です。ただし本物のルールでは、同じ紙でも中身で課税・非課税が分かれ、登記も原因(売買・相続・贈与)で税率が変わります。

条文ではこう決まっている

印紙税(印紙税法)

  • だれが:課税文書の作成者が納める(3条1項)。2人以上で1つの文書を作ったら、連帯して納める(3条2項)。
  • 何に:別表第一に並んだ文書(課税文書)。不動産の譲渡(売買・交換など)の契約書、地上権・土地の賃借権の設定や譲渡の契約書、請負の契約書、金銭の受取書(領収書)など。
  • かからないもの:国・地方公共団体などが作った文書(5条2号)。建物の賃貸借の契約書は課税対象ではない(国税庁の説明)。
  • 国と私人が一緒に作った文書:国等が保存するものは国等以外の人が作ったものとみなし、国等以外の人が保存するものは国等が作ったものとみなす(4条5項)。つまり、私人が持つ1通は非課税、国等が持つ1通は課税。
  • 納め方:作成の時までに印紙をはり(8条1項)、文書と印紙の彩紋にかけて消す(8条2項)。消すのは、作成者本人か、代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の印章か署名でよい(施行令5条)。
  • 過怠税(20条):はらなかったとき、本来の税額とその2倍=合計3倍。調査を予知せずに自分から申し出たら、本来の税額とその10%=1.1倍。印紙を消さなかったときは、消していない印紙の額面と同じ額。

記載金額の決め方(国税庁の通達・説明)

  • 売買は売買金額。交換は、双方の価額が書いてあれば高いほう、交換差金だけなら差金(印紙税法基本通達23条)。
  • 贈与は対価がないので、記載金額のない契約書として扱う(同23条)。
  • 土地の賃借権の設定は、後で返さない権利金などの額。地代と、後で返す敷金・保証金は入らない(同23条、国税庁 No.7107)。地代だけなら記載金額のない契約書。
  • 金額を変える契約書は、もとの契約書があることが分かる形なら、増やすときは増えた額、減らすときは記載金額のないものになる(同30条)。
  • 消費税額がはっきり分けて書いてあれば、不動産の譲渡の契約書・請負の契約書・領収書では、消費税額を記載金額に入れない(国税庁 No.7122)。
  • 写しやコピーでも、相手方の署名・押印や「原本と相違ない」などの証明があれば課税される。ただのコピーは課税されない(国税庁 No.7120)。

印紙税の税額と軽減(別表第一、租税特別措置法91条)

不動産の譲渡の契約書は、記載金額1万円未満が非課税、記載金額のないものは200円です。記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作られるものは、次のように軽くなります(主な区分だけ)。

記載金額本則軽減後
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超1億円以下6万円3万円

軽減は「不動産の譲渡」の契約書と、建設工事の請負の契約書(100万円超)が対象です。土地の賃貸借の契約書は対象に入っていません。

登録免許税(登録免許税法)

  • だれが:登記を受ける者。2人以上いれば連帯して納める(3条)。
  • 基準(課税標準):不動産の登記は、登記の時の不動産の価額(10条1項)。当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格をもとにできる(登録免許税法附則7条)。抵当権の設定は、価額ではなく債権金額(別表第一1号(五))。
  • 本則の税率(別表第一1号):所有権の保存4/1,000。所有権の移転は、相続・法人の合併4/1,000、共有物の分割4/1,000、その他(売買・贈与など)20/1,000。地上権・賃借権の設定10/1,000。抵当権の設定4/1,000。登記の抹消は不動産1個につき1,000円。

登録免許税の軽減(租税特別措置法)

  • 土地の売買(72条):売買による土地の所有権の移転は15/1,000。期限は令和11年3月31日まで。令和8年4月1日施行の改正で、それまでの「令和8年3月31日まで」から延びました。
  • 住宅用家屋の保存(72条の2):1.5/1,000。個人が新築するか、まだだれも住んでいない住宅用家屋を取得し、自分で住み、新築か取得から1年以内に登記するもの。期限は令和9年3月31日まで。
  • 住宅用家屋の移転(73条):3/1,000。個人が取得して自分で住み、取得から1年以内に登記するもの。取得の原因は売買か競落(けいらく=競売で買うこと)に限る(施行令42条3項)。期限は令和9年3月31日まで。
  • 住宅ローンの抵当権(75条):1/1,000。個人が住宅用家屋の新築や取得の資金を借りて自分で住み、1年以内に登記するもの。期限は令和9年3月31日まで。
  • 住宅用家屋の要件(施行令41条・42条):床面積が50㎡以上で、もっぱら自分の住宅に使うもの。市町村長などの証明がいる。中古なら、昭和57年1月1日以後に建てられたものか、地震に対する安全性の基準に合うもの。

国税庁の税額表では、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などにも、さらに軽い税率(令和9年3月31日まで)が示されています。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる例:土地Aと土地Bの交換契約書に、Aが3,000万円、Bが2,500万円と書いた。記載金額は高いほうの3,000万円で、軽減後の税額は1万円です。
  2. 当てはまる例:けんたさんが中古の家を買って住み、1か月後に移転の登記をした。個人・自分で住む・売買・1年以内・床面積90㎡・昭和57年以後の建築なので、移転の税率は3/1,000です。
  3. 当てはまらない例:アパートの一室を借りる賃貸借の契約書。建物の賃貸借は印紙税の課税対象ではありません。
  4. 当てはまらない例:けんたさんが親から家を贈与されて住んだ。73条の軽減は売買か競落による取得だけなので、贈与による移転は本則の20/1,000です。
  5. 当てはまらない例:会社が社宅用に家を買った。住宅用家屋の軽減は「個人が」「自分で住む」ときなので、会社には使えません。
  6. ひっかけやすい例:土地の売買の移転登記に、住宅用家屋の3/1,000を使う。住宅用家屋の軽減は建物の登記です。土地の売買は72条の15/1,000です。
  7. ひっかけやすい例:契約書に「売買代金3,000万円、うち手付金300万円」と書いた。記載金額は売買金額の3,000万円です。手付金の額は記載金額にあたらないものとして扱われます(印紙税法基本通達28条)。
  8. ひっかけやすい例:市とけんたさんが土地の売買契約書を2通作り、1通ずつ持った。けんたさんが持つ1通は非課税、市が持つ1通は課税です(印紙税法4条5項)。

印紙税と登録免許税はどこが違うか

項目印紙税登録免許税
かかる場面課税文書を作ったとき登記を受けるとき
納める人文書の作成者登記を受ける者
2人以上なら連帯して納める連帯して納める
金額の基準文書の記載金額不動産の価額か債権金額
主な軽減の期限令和9年3月31日土地の売買は令和11年3月31日、住宅用家屋は令和9年3月31日

同じ「家を買うときの税」でも、不動産取得税の新築住宅の控除は床面積40㎡以上240㎡以下、登録免許税の住宅用家屋は50㎡以上(上限の定めは施行令41条にありません)と、面積の条件が違います。不動産取得税の数字は不動産の税金の記事で確かめてください。登記の種類(保存・移転・抵当権の設定)そのものは不動産登記法の記事で説明しています。

宅建試験ではここをまちがえやすい

このテーマは宅建試験の「税」の論点です。次のような形で問われやすい論点です。

  • 記載金額:交換は高いほう(差金だけなら差金)、贈与は記載金額なし、土地の賃貸借は権利金(地代・敷金は入らない)、消費税は分けて書けば除く。
  • 課税・非課税:建物の賃貸借は課税されない。土地の賃貸借は課税される。国等と私人の共同作成は「私人が持つほうが非課税」。
  • 過怠税:はらなかったら3倍、自分から申し出たら1.1倍、消さなかったら額面と同じ額。
  • 消印:作成者本人に限らず、代理人や従業者の印章・署名でもよい。
  • 軽減の範囲:印紙税の軽減は不動産の譲渡の契約書(10万円超)だけで、土地の賃貸借の契約書は入らない。
  • 登録免許税の基準:売買の値段ではなく、固定資産課税台帳の価格がもと。抵当権は債権金額。
  • 住宅用家屋の要件:個人、自分で住む、床面積50㎡以上、1年以内の登記、中古は昭和57年1月1日以後か耐震基準。移転は売買・競落だけ。法人・贈与・相続には使えない。
  • 期限:土地の売買の15/1,000は令和11年3月31日まで(古い教材の「令和8年3月31日まで」から延びた)。住宅用家屋と印紙税の軽減は令和9年3月31日まで。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
土地の交換契約書に、交換する土地の価額がそれぞれ4,000万円と3,000万円と書かれているとき、印紙税の記載金額は差額の1,000万円である。

答え:✕
双方の価額が書いてあるときは、高いほうの4,000万円が記載金額です。差額(交換差金)で判断するのは、交換差金だけが書かれているときです(印紙税法基本通達23条)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
課税文書に印紙をはらなかった作成者が、税務調査を予知せずに自分から申し出たときは、過怠税は本来の印紙税額の1.1倍になる。

答え:○
自分から申し出た場合の過怠税は、納めなかった税額とその100分の10の合計です(印紙税法20条2項)。申し出なければ3倍です(同条1項)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
個人が、自分で住むために中古住宅を親から贈与で取得し、1年以内に所有権の移転の登記を受けるときは、住宅用家屋の軽減税率(1,000分の3)が使える。

答え:✕
住宅用家屋の移転の軽減は、売買か競落による取得に限られます(租税特別措置法73条、施行令42条3項)。贈与による移転は本則の1,000分の20です。

まとめ

  • 印紙税は文書の作成者が納める。建物の賃貸借は非課税、土地の賃貸借は課税。国等と私人の共同作成は私人が持つほうが非課税。
  • 記載金額は、交換なら高いほう、贈与はなし、土地の賃貸借は権利金。過怠税は3倍(申し出れば1.1倍)。
  • 印紙税の不動産譲渡契約書の軽減は、10万円超・令和9年3月31日までに作るもの。
  • 登録免許税は登記を受ける者が納め、基準は固定資産課税台帳の価格(抵当権は債権金額)。売買の移転は本則20/1,000、土地の売買は15/1,000(令和11年3月31日まで)。
  • 住宅用家屋は保存1.5/1,000・移転3/1,000・抵当権1/1,000(令和9年3月31日まで)。個人・自分で住む・50㎡以上・1年以内が要件。

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参考にした公式の情報(2026年10月確認)