株式と株主の権利をわかりやすく:株主平等・譲渡制限・自己株式の最低限

株式(かぶしき)とは、株式会社の持ち主としての立場を、細かく同じ大きさに分けた単位です。株式を持つ人を株主といいます。ひとことで言うと、株主は①配当を受ける、②会社をたたむときに残った財産を受け取る、③株主総会で議決権を使う、という3つの権利を持ちます(会社法105条1項)。責任は、株を引き受けたときに出すと約束した額までです(104条)。

株式は自由に人にゆずれるのが原則です(127条)。例外として、ゆずるのに会社の承認がいる株式(譲渡制限株式)があります。この記事では、株主の権利、株主平等、譲渡と譲渡制限、株主名簿と株券、自己株式までを扱います。新しい株の発行、株式の併合・分割などは扱いません。

商法・会社法は、令和3年度の問題で当サイトが数えると5問でした(公式の内訳ではありません)。深追いせず、条文の「原則と例外」で点になる所にしぼります。全体の時間の配り方は商法・会社法は捨てていいかで扱っています。

身近な例で考えるとどうなるか

舞台は、いちご農園を営むみどり農園株式会社です。取締役会は置いていません。全部の株式に「ゆずるには会社の承認がいる」という定款(ていかん=会社の基本ルール)の定めがあります。登場人物は、社長のはるとさん(代表取締役で株主)、株主のちさとさん(はるとさんの友人)、株を買いたいそうすけさんです。

  1. ちさとさんは、会社をつくるときに株を引き受け、10万円を払いました。会社がもし大きな借金をかかえても、ちさとさんが失うのは最大でこの10万円です(104条)。
  2. 1年後、いちごがよく売れ、会社に利益が出ました。株主総会で剰余金(じょうよきん=会社に積み上がった利益など)の配当を決め、ちさとさんは持っている株の数に応じて配当を受けました(105条1項1号)。
  3. ちさとさんは引っ越すことになり、株をそうすけさんに売りたいと考えました。株には譲渡制限が付いているので、会社に「そうすけさんがゆずり受けることを承認するか決めてほしい」と請求します(136条)。
  4. 取締役会がない会社なので、承認するかどうかは株主総会の決議で決めます(139条1項)。会社が承認すれば、そうすけさんに株をゆずれます。
  5. そうすけさんは、株主名簿(会社が作る株主の一覧)に自分の名前と住所を書いてもらいます。これをしないと、会社に「自分が株主だ」と言えません(130条1項)。

たとえるなら、株式は「会社というケーキを同じ大きさに切り分けた一切れ」です。切れの数が多いほど、配当や議決権も多くなります。ただし本物のルールでは、株主はケーキ(会社の財産)を直接持っているわけではありません。会社の畑やお金は会社のものです。株主が持つのは、会社に対する権利です。

条文ではどう決まっているか

株主の責任と3つの権利(104条・105条)

  • 104条:「株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。」これを有限責任といいます。
  • 105条1項:株主は、①剰余金の配当を受ける権利、②残余財産(会社をたたんだときに残った財産)の分配を受ける権利、③株主総会における議決権、その他この法律で認められた権利を持つ。
  • 105条2項:①と②の権利の全部を与えないという定款の定めは、効力を持たない。株主がお金の面で何も受け取れない株はつくれない、ということです。

株主平等の原則(109条)

  • 1項:会社は、株主を、持っている株式の内容と数に応じて平等に扱わなければならない。一人一票ではなく、株の数に応じて扱う、という意味の平等です。
  • 2項:公開会社でない会社は、105条1項の3つの権利について、株主ごとに違う扱いをすると定款で定めることができる。たとえば「創業者は株の数にかかわらず配当を多くする」といった定めです。

「公開会社」は上場会社のことではありません。発行する株式の全部または一部について、譲渡制限の定めを置いていない会社のことです(2条5号)。言いかえると、定款上、自由にゆずれる株式が1種類でもある会社です。みどり農園のように全部の株式に譲渡制限があれば、公開会社でない会社です。

株式の内容と種類(107条・108条)

  • 107条1項:会社は、発行する全部の株式の内容として、①譲渡に会社の承認がいること、②株主が会社に取得を請求できること、③一定の事由が生じたら会社が取得できること、を定めることができる。
  • 108条1項:会社は、配当・残余財産・議決権を使える事項・譲渡制限など9つの事項について、内容の違う2種類以上の株式(種類株式)を発行できる。たとえば「配当は多いが議決権はない株」です。ただし、指名委員会等設置会社と公開会社は、9号(種類株主総会で取締役・監査役を選ぶ株)を発行できない。

株式の譲渡と譲渡制限(127条・136条〜145条)

  • 127条:「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」自由に譲渡できるのが原則です。
  • 136条:譲渡制限株式の株主は、他人にゆずるとき、会社に「ゆずり受けることを承認するか決めて」と請求できる。ゆずり受けた人が請求する方法もあります(137条)。
  • 138条1号ハ:この請求をするとき、「承認しないなら、会社か会社が指定する買取人(指定買取人)が買い取ってほしい」と求めることもできる。株主がお金に換えられなくなるのを防ぐためです。
  • 139条1項:承認するかどうかの決定は、株主総会の決議。取締役会設置会社では取締役会の決議。ただし、定款で別に定めることができる。
  • 145条1号:会社が請求の日から2週間以内(定款でもっと短くできる)に決定の内容を通知しないと、承認したものとみなす。

株主名簿と株券(130条・128条・214条)

  • 130条1項:株式の譲渡は、取得した人の氏名(名称)と住所を株主名簿に記載・記録しなければ、会社その他の第三者に対抗(たいこう=自分の権利だと言い張る)できない。
  • 214条:会社は、株券を発行すると定款で定めることができる。定めがなければ株券は発行しないのが基本の形です。定めのある会社を株券発行会社といいます。
  • 128条1項:株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付(こうふ=渡すこと)しなければ効力を生じない。
  • 130条2項:株券発行会社では、株主名簿の記載がないと対抗できない相手は「会社」だけになる。第三者には、株券を持っていることで示せるからです。

議決権と自己株式(308条・155条・156条・453条)

  • 308条1項:株主は、株式1株につき1個の議決権を持つ。単元株式数を定款で定めた会社では、1単元につき1個。ただし、株主である別の会社の議決権の4分の1以上をこちらの会社が持っているなど、こちらの会社がその株主の経営を実質的に支配できる関係にあるとき(法務省令で定める株主)は、その株主は議決権を持たない(相互保有株式)。
  • 155条:会社が自分の会社の株式(自己株式)を取得できるのは、条文に並んだ場合に限られる。
  • 156条1項:株主との合意で有償で取得するには、あらかじめ株主総会の決議で、取得する株式の数、引き換えに渡す金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年を超えられない)を決める。
  • 308条2項・453条:会社は、自己株式については議決権を持たない。剰余金の配当も、株主のうち会社自身は除かれる。

1株でも使える権利と、まとまった株がいる権利

株主の権利は、1株でも使える単独株主権と、一定の割合以上の株がいる少数株主権に分けて説明されます。これは説明のための分け方で、条文の言葉ではありません。最低限、次の2つで「割合」「6か月」「公開会社でない会社の扱い」を押さえます。総会の招集請求は割合がいる少数株主権、責任追及の請求は1株でも使える単独株主権ですが、どちらも公開会社では6か月の保有期間がいります。

  • 株主総会の招集の請求(297条):総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き持つ株主は、取締役に株主総会の招集を請求できる(割合と期間は定款で下げられる)。公開会社でない会社では、6か月の要件がない(2項)。
  • 責任追及等の訴え(847条):6か月前から引き続き株式を持つ株主は、会社に、取締役などの責任を追及する訴えを起こすよう請求できる。会社が請求の日から60日以内に訴えを起こさないと、その株主が会社のために訴えを起こせる(3項。株主代表訴訟と呼ばれます)。公開会社でない会社では、6か月の要件がない(2項)。

当てはまる例・当てはまらない例

  1. 当てはまる(109条2項):公開会社でないみどり農園が、「はるとさんは株の数にかかわらず議決権を多くする」と定款で定める。公開会社でない会社なので、株主ごとの違う扱いを定款で定められます。
  2. 当てはまらない(105条2項):みどり農園が、ある種類の株について「配当も残余財産の分配も一切しない」と定款で定めた。2つの権利の全部を与えない定めは効力を持ちません。どちらか一方だけをなくす、なら別です。
  3. 当てはまる(145条1号):ちさとさんが承認を請求したのに、会社が2週間たっても決定を通知しなかった。会社は承認したものとみなされます。
  4. ひっかけやすい(139条1項):取締役会を置いている別の会社で、承認するかどうかを株主総会で決めた。原則は取締役会の決議です。ただし定款に別の定めがあれば、それに従います。
  5. ひっかけやすい(130条):そうすけさんが株を買ったが、株主名簿の書換えをしていない。売買そのものはちさとさんとの間で有効です。ただ、会社などに「自分が株主だ」と対抗できないだけです。
  6. 当てはまらない(308条2項):みどり農園が自己株式を買い戻し、その分の議決権を株主総会で使おうとした。自己株式に議決権はありません。

似ているルールとどう違うか

株券があるかないかで、譲渡の決まりが変わります。

比べる点株券を発行しない会社株券発行会社
何で決まるか定款に定めがない(214条)定款で定めた(214条)
譲渡の効力当事者の合意株券の交付が必要(128条1項)
名簿に載せないと対抗できない相手会社その他の第三者会社だけ(130条2項)

「公開会社でない会社」だけの例外も、まとめて覚えます。

ルール原則公開会社でない会社
株主平等(109条)内容と数に応じて平等株主ごとの違う扱いを定款で定められる
総会の招集請求(297条)3%以上を6か月前から6か月の要件なし
責任追及の請求(847条)6か月前から6か月の要件なし

公開会社かどうかは、取締役会を置く義務や取締役の任期にもかかわります。そちらは株式会社の機関をわかりやすくで整理しています。また、会社をつくるときに株を引き受ける流れは株式会社の設立をわかりやすくで扱っています。

試験ではここをまちがえやすい

  • 株主平等を「一人一票」にすりかえる型:109条1項の平等は、株式の内容と数に応じた平等です。
  • 109条2項を公開会社に広げる型:株主ごとの違う扱いを定款で定められるのは、公開会社でない会社だけです。
  • 105条2項の「全部」を落とす型:効力がないのは、配当と残余財産の分配の両方の全部を与えない定めです。「配当をしない株は発行できない」とすると誤りになります。
  • 承認機関の入れかえ:譲渡の承認は、株主総会(取締役会設置会社は取締役会)。定款で別に定められる点も忘れずに。
  • 名義書換を「効力の条件」にする型:株主名簿の記載は、会社や第三者に対抗するための条件です。株券発行会社で譲渡の効力に必要なのは、株券の交付です。
  • 株券を「発行しなければならない」とする型:214条は「定款で定めることができる」です。
  • 数字の入れかえ:譲渡承認のみなし承認は2週間、株主代表訴訟は6か月と60日、総会の招集請求は100分の3と6か月。公開会社でない会社では6か月の要件がない。

行政書士試験では、株式の分野から、条文の原則と例外を入れかえた選択肢を見分ける形が考えられます。とくに「公開会社かどうか」で答えが変わる所は、機関の分野と組み合わさりやすいところです。この論点は宅建試験の範囲ではありません。

○✕でたしかめよう

問1(このサイトのオリジナル問題)
全部の株式に譲渡制限の定めがあるみどり農園株式会社は、取締役会を置いていない。株主のちさとさんが株をそうすけさんにゆずるための承認を請求した場合、定款に別段の定めがなければ、承認するかどうかは代表取締役のはるとさんが一人で決める。

答え:✕ 承認するかどうかの決定は、株主総会の決議によります。取締役会設置会社なら取締役会の決議です(139条1項)。

問2(このサイトのオリジナル問題)
公開会社でない株式会社は、剰余金の配当を受ける権利について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

答え:○ 公開会社でない会社は、105条1項の3つの権利について、株主ごとに違う扱いをする旨を定款で定められます(109条2項)。

問3(このサイトのオリジナル問題)
株式会社が自己株式を持っている場合、その会社は、自己株式についても株主総会で議決権を使うことができる。

答え:✕ 会社は、自己株式については議決権を持ちません(308条2項)。

まとめ

  • 株主の責任は引受価額まで(104条)。権利は配当・残余財産・議決権(105条1項)。配当と残余財産の両方の全部をなくす定めは無効(同条2項)。
  • 株主平等は「内容と数に応じて」。公開会社でない会社は、株主ごとの違う扱いを定款で定められる(109条)。
  • 譲渡は自由が原則(127条)。譲渡制限株式の承認は株主総会(取締役会設置会社は取締役会)。2週間で通知しないと承認したとみなす。
  • 株主名簿に載せないと会社・第三者に対抗できない(130条)。株券は定款で定めたときだけ。自己株式に議決権・配当なし。

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参考にした公式の情報(2026年10月確認)

条文は、令和8年4月1日時点で施行されている内容を、e-Gov法令検索で確かめています。

  • e-Gov法令検索「会社法」(第2条第5号、第104条、第105条、第107条、第108条、第109条、第127条、第128条、第130条、第136条、第137条、第138条、第139条、第145条、第155条、第156条、第214条、第297条、第308条、第453条、第847条)