相続手続きをしないといけないことはわかっているけど何をすればいいの?
相続ってめんどくさい手続きがたくさんありそう
確かに相続が発生すると、何から手を付ければ良いのか迷ってしまいますよね。初めて相続手続きを行う方でも、スムーズに進められるように、今回は相続でやるべきことを10のステップに分けて解説します。できるだけ簡単にまとめましたので、必要な手続きを順番に進めていきましょう。
1. 遺言書の有無を確認する
相続が発生したら、まず確認すべきは遺言書の有無です。遺言書には、遺産の分割方法や特定の財産を誰に渡すかといった重要な指示が書かれています。
遺言書が見つかった場合は、原則的には内容に従って手続きを進めることになります。遺言書には3つの種類があり、それぞれ扱いが異なります。
- 自筆証書遺言: 本人が自筆で作成した遺言書。家庭裁判所での※検認が必要。
- 公正証書遺言: 公証人が作成し、公証役場に保管されている遺言書。検認が不要で信頼性が高い。
- 秘密証書遺言: 内容を秘密にしたまま公証人が関与する遺言書。検認が必要。
※検認とは家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人同席のもと内容を確認するような機会のことを言います。
特に、公正証書遺言の場合は、公証役場に確認すれば遺言書の有無を調べることが可能です。遺言書が発見された場合、まずはその内容を確認し、家庭裁判所での手続きを経て、相続手続きに進みましょう。
2. 相続人を確定する
次に行うべきは、相続人の確定です。法律で定められた相続人は、主に配偶者や子供、親、兄弟姉妹です。相続人を確定するためには、被相続人の生まれたときから亡くなった時点までの戸籍謄本を取り寄せ、相続人の範囲を確認します。
ずっと同じ土地で過ごしてきた方であればスムーズにすべての戸籍が集まる場合が多いですが、お亡くなりになった方が何度も転籍をしている等の場合は複雑になってしまう場合が多いと推察できますので、専門家に相談してもよいかもしれません。
相続人となる可能性のある人一覧(お亡くなりになった人から見て)
- 配偶者: 常に相続人となります。
- 子供: 第一順位の相続人です。子供が既に亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人になります。
- 親: 子供がいない場合に相続人となります。
- 兄弟姉妹: 子供も親もいない場合に相続人となります。
戸籍を集めることで亡くなった人に子どもはいたのか等、相続人に関する情報を集めていきます。そして、必要な戸籍を集め相続人が確定すれば、遺産分割の話し合いを始めるための準備を進めます。
3. 相続財産の調査とリストアップ
相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産(負債)が含まれます。まずは、すべての財産をリストアップし、どの程度の価値があるのかを確認しましょう。調査が必要な財産には以下のようなものがあります。
- 不動産: 固定資産税の納税通知書や登記簿謄本を確認し、所有している不動産の価値を把握します。
- 預貯金: 銀行口座の通帳や残高証明書を確認します。複数の銀行に口座がある場合は、全ての口座をリストアップしましょう。
- 株式や投資信託: 証券会社の取引明細書を確認し、保有する金融商品の価値を調べます。
- 生命保険: 生命保険の契約内容を確認し、受取人や保険金額を把握します。
- 負債: 被相続人が残した借金やローンがある場合、負債としてリストアップします。
このリストアップ作業を丁寧に行うことで、相続財産の全体像を把握でき、次のステップへと進む準備が整います。
ご家族や相続人間の関係性が不安な場合、のちに財産が見つかったり不備があると大きなもめごとに発展してしまう可能性が出てくるため、注意して行う必要があります。
4. 相続放棄や限定承認の検討
相続財産の調査を行った結果、負債が大きい場合や不動産の価値が低い場合、相続を放棄することを検討する必要があります。相続放棄とは、相続人としての権利を放棄し、相続財産を一切受け取らないことを意味します。
- 相続放棄: 相続人が全ての相続財産を放棄し、負債を含む一切の相続権を失います。相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行います。
- 限定承認: プラスの財産を超える範囲でのみ負債を引き継ぐ方法です。プラスの財産を限度として負債を支払い、それ以上の負債を負わないようにすることができます。相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続放棄や限定承認は、慎重に検討する必要があります。負債が多い場合には、専門家のアドバイスを受けながら判断することをおすすめします。
相続放棄や限定承認をする可能性がある場合、亡くなった方の私財(置物や書籍なども含む)を勝手に処分してしまうと相続放棄が認められなくなってしまう可能性があります。
相続放棄される可能性がある場合はまず落ち着いて専門家へ無料相談することをお勧めします。
5. 相続税が発生するか確認する
相続税が発生するかどうかは、相続財産の総額によって決まります。基礎控除額は「3000万円+600万円×相続人の数」で計算され、この額を超える場合は相続税の申告が必要になります。
例えば、おじいさん(90)が亡くなり、おばあさん(85)と長男(62)と長女(60)の3人の相続人がいる場合
- 基礎控除の計算例: 相続人が配偶者と子供2人となるので基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3人)です。
- 相続税の申告期限: 相続開始から10か月以内に、相続税の申告と納税を行う必要があります。
基礎控除額を多少超えたくらいであれば、多少の申告漏れがあったとしてもペナルティで課税される金額もたいしたことはありませんので、それほど神経質になる必要はないかと思います。
しかしながら、仮に1億以上資産があるのに申告漏れがあるとなると追徴課税の金額も高くなってしまう可能性が高いため、相続額が高額の場合は相続に関する専門知識がある税理士に申告書の作成を依頼することも検討するのが良いかと思います。
6. 遺産分割協議を行う
相続人全員で、相続財産の分割方法を話し合うことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議では、相続財産をどのように分けるかを相続人全員で合意する必要があります。
遺産分割協議2つの原則
- 合意が必要: 全ての相続人が合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。
- 遺産分割協議書の作成: 協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書に書面でまとめます。相続人全員の署名と実印が必要です。
協議が難航する場合は、専門家に相談し、調整を依頼することもできます。紛争が起きてしまうと弁護士に依頼して解決するしかありません。
当メディアでは相続の相談を弁護士にすることは推奨しておりません。理由は2点あります。
まずは、弁護士は紛争が起こらないと仕事にならないことが多いため、あえて紛争が起きるような提案をする方が立場的に都合がよい状況だからです。報酬も極めて高額なので、お客さんにとって良いことでは決してないと思います。
続いて、相続人の方に対しても紛争が起こらないような合意形成や家族間の会話を重視してほしいという思いがあるからです。
家族の問題で紛争が起きるということ自体そもそも良いことだとは全く思わないので、こと相続に関してだけは弁護士と関わるご家庭は少ない方が社会にとって善であると考えています。
とはいえ、司法書士や行政書士、税理士はあくまで専門家として「このような分割にするのが良いと思いますよ」という範囲内での助言はできても説得などはできないので、ご家族間の対話と努力が重要なことは言うまでもありません。
7. 名義変更や財産の移転手続きを行う
遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が完成したら、相続財産の名義変更や移転手続きを行います。名義変更が必要な財産には、以下のようなものがあります。
- 不動産: 相続登記を行い、名義を相続人に変更します。法務局での手続きが必要です。
- 預貯金: 銀行で相続手続きを行い、口座の解約や名義変更を行います。必要書類は銀行によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
- 株式や証券: 証券会社での手続きが必要です。株式の移転には、相続人全員の同意が求められる場合もあります。
これらの手続きをスムーズに進めるためには、必要な書類を事前に揃えておくことが重要です。手続きに時間がかかる場合もあるため、早めに取り掛かりましょう。
①亡くなった方の出まれた時から亡くなった時までの戸籍
②各相続人の現在の戸籍
③不動産を相続する相続人の住民票
④亡くなった方の住民票除票または戸籍の附票(登記上の住所とのつながりが分かるもの)
⑤法定相続以外の割合で名義変更する場合は、遺産分割協議書
⑥遺産分割などを行っている場合は、各相続人の印鑑証明書
⑦対象となる不動産の固定資産評価証明書
8. 相続税の申告と納税を行う
相続税が発生する場合、申告書を作成し、税務署に提出します。申告には、相続財産の評価や、相続税の控除制度の適用など、専門的な知識が必要です。相続税の申告書作成や納税は、以下のステップで行います。
- 相続財産の評価: 不動産や株式、預貯金など、すべての相続財産を評価します。評価額に基づいて、相続税額が決定されます。
- 申告書の作成: 相続税申告書を作成し、税務署に提出します。控除制度を活用することで、税負担を軽減することが可能です。
- 納税: 申告書の提出と同時に、相続税を納税します。納税方法には、現金一括払い、分割払い、物納(不動産や株式などで納税)があります。
相続税の申告や納税は期限が決まっているため、早めに手続きを進めることが重要です。専門家に相談して、適切な方法で申告と納税を行いましょう。
9. 相続登記を行う
不動産を相続する場合、相続登記が必要です。相続登記は、不動産の名義を相続人に変更する手続きであり、法務局で行います。相続登記を怠ると、不動産の売却や担保設定ができなくなるため、早めに手続きを完了させることが求められます。
- 必要書類: 遺産分割協議書、被相続人の戸籍謄本、相続人の住民票などが必要です。
- 登記申請: 法務局に必要書類を提出し、登記を申請します。手続きが完了すると、相続人の名義で不動産の登記が行われます。
相続登記には費用がかかる場合がありますが、登記を行わないと後々の手続きが複雑になることがあるため、必ず行うようにしましょう。
10. 各種手続きと相続後の対応
相続が完了した後も、いくつかの手続きを行う必要があります。これらの手続きは、相続人の生活に直結するものが多いため、忘れずに行うようにしましょう。
- 保険金の受け取り: 生命保険や死亡保険の保険金を受け取るための手続きを行います。保険会社に連絡し、必要書類を提出します。
- 公共料金や各種契約の名義変更: 電気、ガス、水道などの公共料金や、携帯電話やインターネット契約の名義を変更します。契約者が亡くなった場合、名義変更手続きを行わないと、契約が無効になることがあります。
- 預貯金口座の管理: 被相続人の預貯金口座を解約し、相続人の口座に資金を移す手続きを行います。銀行によっては、特別な手続きが必要な場合があります。
これらの手続きを確実に行うことで、相続後の生活をスムーズに始めることができます。
相続でやることはご家族によって変わる
相続手続きは複雑で、多くのステップを踏む必要がありますが、このチェックリストを参考にすれば、初心者の方でもある程度はスムーズに進められるはずです。
しかしながら、財産状況やご家族の状況によってはかなり複雑の手続きを行わなければならないこともあります。まずは、基本の流れを把握した上で情報整理も踏まえて、無料で相談ができる専門家へ聞いてみるのがお勧めです。
ご自身の状況を正確に把握し、できそうなことはご自身で手続きし、難しそうな範囲のみ依頼することで比較的安く必要なサービスを受けることができます。
この記事が、あなたの相続手続きを円滑に進めるための一助となれば幸いです。