相続手続きの弁護士費用は?20事務所を分析し、相場と他士業と違いも徹底解説

相続手続きを考える際、多くの人が「弁護士に依頼すべきか?」という疑問を持ちます。弁護士は法律の専門家であり、紛争が絡む複雑な相続案件では確かに頼りになりますが、その分費用が高額になることもあります。しかし、すべての相続手続きに弁護士を依頼することが本当に必要なのか、他の士業との違いは何かといった点を知ることは非常に重要です。この記事では、相続手続きにおける弁護士費用の内訳や、他の士業との料金比較を通じて、費用対効果の高い選択をするためのポイントを解説します。

1. 相続における弁護士費用の内訳と料金表

1-1. 弁護士費用の基本内訳

弁護士費用は一般的に以下のような内訳で構成されています。

  • 初回相談料:多くの弁護士事務所では、初回相談料を設定しており、無料相談を提供している事務所もあれば、5,000円〜10,000円の範囲で相談料が設定されている場合もあります。
  • 着手金:弁護士に依頼を正式に開始する際に支払う費用で、案件の複雑さや規模によって金額が異なります。一般的に20万円〜50万円程度が相場です。
  • 報酬金:案件が成功した場合に支払う成功報酬で、遺産総額や経済的利益に対してパーセンテージが設定されることが多く、一般的には6%〜12%程度が相場です。

結論から言うと、他の士業と比較するとめちゃくちゃ高額と言えます。相続財産が1億を超えてくるような場合は別ですが、複雑な相続手続きでも大体の案件は50万円もかからずに受けてもらえます。

司法書士や行政書士などの一般的な相続事務所において客単価は20万円から30万円ほどである場合が多く、低い人に関しては10万円かからない程度で済むケースもあります。

一方で弁護士の場合は、着手金だけでも50万円程度かかってくる場合があり、これは相続財産が非常に多い方や森林や不明な土地が多いような複雑な案件の場合にかかってくるような金額です。

これに加えて報酬金まで払うとなると基本的に100万円は超えてくるような形態となるため、正直自分が手続きを依頼するのであれば弁護士に依頼しようとは思いません。

実際知り合いの弁護士さんも「相続は専門外だし、忙しいから」と言って司法書士さんに依頼して手続きを終えていたため、弁護士に依頼しなくても済むなら、そちらの方が安く済むことは間違いありません。

1-2. 首都圏と地方における弁護士事務所の料金表

以下に、首都圏および地方における弁護士事務所の料金表を紹介します。都市圏と地方、大手と個人事務所の違いを比較し、それぞれの特徴を明らかにします。

都市圏の大手弁護士事務所

事務所名初回相談料着手金報酬金備考
A法律事務所無料30万円~経済的利益の10%~遺産総額により変動
B総合法律事務所5,000円50万円~経済的利益の8%~複雑案件は要相談
C弁護士法人無料40万円~経済的利益の12%~分割方法により変動
D法律事務所10,000円35万円~経済的利益の9%~相続人数で加算あり
E弁護士グループ無料45万円~経済的利益の11%~調停・審判は別途

都市圏の個人弁護士事務所

事務所名初回相談料着手金報酬金備考
F弁護士事務所無料20万円~経済的利益の8%~小規模案件に強み
G法律事務所5,000円25万円~経済的利益の7%~柔軟な料金設定
H弁護士事務所無料30万円~経済的利益の9%~丁寧な対応が特徴
I法律事務所3,000円22万円~経済的利益の7.5%~シンプルな案件向け
J弁護士事務所無料28万円~経済的利益の8.5%~地域密着型の対応

地方の大手弁護士事務所

事務所名初回相談料着手金報酬金備考
K法律事務所無料25万円~経済的利益の9%~地域の相場に準拠
L総合法律事務所3,000円35万円~経済的利益の7%~複雑案件は要相談
M弁護士法人無料30万円~経済的利益の10%~遺産規模で変動
N法律事務所5,000円28万円~経済的利益の8%~相続人数で加算あり
O弁護士グループ無料32万円~経済的利益の9.5%~調停・審判は別途

地方の個人弁護士事務所

事務所名初回相談料着手金報酬金備考
P弁護士事務所無料18万円~経済的利益の7%~小規模案件に強み
Q法律事務所3,000円20万円~経済的利益の6.5%~柔軟な料金設定
R弁護士事務所無料22万円~経済的利益の8%~丁寧な対応が特徴
S法律事務所2,000円15万円~経済的利益の6%~シンプルな案件向け
T弁護士事務所無料23万円~経済的利益の7.5%~地域密着型の対応

これらの表からわかるように、初回相談料や着手金、報酬金において、都市圏と地方、大手と個人事務所の間には料金差があります。特に都市圏の大手事務所では高額な費用がかかる一方で、地方の個人事務所では比較的リーズナブルな料金設定となっています。

1-3. 料金差が生じる要因

弁護士費用において料金差が生じる要因はいくつかあります。

  1. 案件の複雑さ:紛争が絡む相続案件や、複数の不動産や遺産分割に関わる案件では、手続きが複雑になるため費用が高額になりがちです。
  2. 事務所の規模と所在地:都市圏にある大手弁護士事務所は、運営コストやスタッフの人件費が高いため、地方の個人事務所よりも費用が高く設定される傾向にあります。
  3. 弁護士の経験と専門性:経験豊富な弁護士や、特定の分野で専門性を持つ弁護士に依頼すると、その分費用が高くなることがあります。

2. 相続の弁護士費用は本当に高い?他士業との料金比較

2-1. 弁護士と他士業の報酬体系の違い

相続手続きにおいて弁護士に依頼する場合、その費用は他の士業と比べてどう違うのでしょうか。例えば、司法書士や行政書士も相続登記や遺産分割協議書の作成といった相続手続きを行っていますが、費用感はどれくらいなのでしょうか。

結論からお伝えすると、ざっくり20万円から30万円程度かかる場合が多いです。弁護士に比べるとかなり低めに設定されています。

税理士も相続税がかかる方を対象としていることから単価が高い場合が多く、20万から30万円というレンジには入りませんがこちらも弁護士よりは費用が低い傾向にあります。

2-2. 都市圏と地方での弁護士費用の違い

弁護士費用は、その事務所の所在地によっても大きく変わることがあります。一般的に、都市圏の弁護士事務所は、地方に比べて料金が高めに設定されていることが多いです。

これは、都市部における事務所の運営コストが高いことや、お客さんの資産も高額かつ多数にわたる場合が多く、相続手続きが複雑になりやすいことが影響しています。

一方、地方の弁護士事務所では、競争が少ないこともあり、料金がやや低めに設定されていることがあります。しかし、地方でも大手の弁護士事務所の場合は、都市部に引けを取らない高額な料金設定となっていることがあるため、事前の調査や見積もりが非常に重要です。

2-3. 大手事務所と個人事務所の料金比較

弁護士事務所には、大手の法律事務所と個人経営の事務所があり、それぞれの料金体系にも違いがあります。大手事務所は、規模が大きく、複数の専門家が在籍しているため、複雑な案件や大規模な相続に対応できる体制が整っています。しかし、その分、費用が高額になりやすいです。

一方、個人事務所は、規模が小さいため柔軟な対応が可能であり、費用も大手に比べて比較的低めに設定されていることが多いです。

ただし、個人事務所の場合、特定の分野に強い弁護士を見つけることが困難であり、こと相続となると未経験まではいかなくとも経験が豊富とは言い難い人の方が多い印象があります。

3. 弁護士に依頼する必要があるケースとは?

3-1. 紛争が絡む場合の必要性

相続に関する紛争が発生した場合、弁護士を依頼することが非常に重要です。例えば、相続人同士で遺産分割の意見が対立し、話し合いがまとまらない場合や、遺言書の有効性を巡って争いが起こる場合などが該当します。

弁護士は、こうした法的な紛争を解決するための専門知識とスキルを持っており、法的な手続きを代行してくれるだけでなく、交渉や調停、場合によっては裁判での代理も行ってくれます。紛争がこじれると、解決までに多くの時間と費用がかかるため、早めに弁護士に相談することでリスクを最小限に抑えることができます。

3-2. 複雑な遺産分割の場合

遺産分割が複雑な場合、弁護士のサポートが非常に有効です。相続人が多い場合や、遺産の種類が多岐にわたる場合(不動産、株式、会社の経営権など)、手続きが煩雑になることが多いためです。

弁護士は、相続人全員が納得できるような分割案を法的に適切に作成し、相続人間のトラブルを未然に防ぐための調整を行います。特に、不動産が複数ある場合や、相続財産に会社経営権が含まれている場合などは、適切な分割が難しく、法的なアドバイスが欠かせません。

3-3. 遺言書に関する争いがある場合

遺言書が複数存在する場合や、その内容が不明確である場合、遺言書の有効性を巡って争いが生じることがあります。このようなケースでは、弁護士に依頼することで、遺言書の有効性を法的に確認し、相続人全員が納得する形で遺産分割を進めることが可能です。

特に、自筆証書遺言の場合、形式的な不備があると無効とされることがあるため、弁護士のサポートが必要です。また、遺言執行者として弁護士を指定しておくことで、相続手続きが円滑に進むことが期待できます。

4. 相場より高い費用で相続手続きを弁護士に依頼するメリットは少ない

4-1. 紛争案件以外は他の士業でも対応できる

相続手続きのすべてにおいて、必ずしも弁護士を依頼する必要はありません。例えば、遺産分割協議書の作成や相続登記などの専門的な内容であっても司法書士や行政書士で対応することが可能です。

紛争に関しては弁護士しか立ち入りできない範囲ですが、相続人間での争いや揉め事が絡まない相続手続きでは、他の士業に依頼することで費用を節約することができます。

特に、相続登記においてはこれまで基本的に司法書士が専門的に対応していることから、迅速かつ正確な手続きを進められる専門家が多いのが業界的には通説となっています。

一方、弁護士は、相続を専門でやっている事務所はほとんどなく件数も1000件以上の事務所は非常にまれです。弁護士からするとM&A等の法人案件に従事できた方が収益性も高いため、そもそも相続案件自体の優先順位が高くありません。

ですので、正直相場の2倍からそれ以上の金額を支払ってわざわざ相続手続きをするメリットはないのではないかなというのが率直な意見です。

4-2. 節税や各種控除、制度は税理士が最適

相続税の申告や節税対策に関しては、税理士に依頼する方が適切です。税理士は、税務の専門家として、相続税の計算や申告書の作成、節税のアドバイスなどを行います。

また、配偶者控除や小規模宅地の特例の適用についても、税理士が最も詳しい知識を持っています。弁護士に依頼する場合、税務に関する部分は税理士に外部委託するケースが多く、その分費用が重複する可能性があります。

そのため、相続税の申告のみが必要な場合や、節税を重視する場合には、直接税理士に依頼する方がコストパフォーマンスが高いと言えます。

4-3. 弁護士は紛争解決の専門家相続には本来不向き

弁護士の強みは、何と言っても紛争解決にあります。したがって、相続手続きの中でも紛争が発生する可能性が高い場合には、弁護士に依頼することで安心感を得ることができます。

これは逆に言うと、家族や親族間でもめるケースには弁護士が関与することになるという意味ですが、相続で家族が揉めるって亡くなった方が浮かばれないと思いませんか?

せっかく、大事な家族のために財産を残したのにそれを大事な親族間が争うなんて本末転倒で、できるだけ揉め事なんて起こらない方がいいに決まっています。

下手に依頼してしまうと弁護士は中立ではなく依頼人の利益を優先するため、それこそ争いの火種になりかねませんし、前提として家族で起きたことは家族間で解決したほうがスムーズに済みます。

法律で保障された権利という意味合いでは弁護士は言うまでもなく優秀ですが、人間関係の亀裂を修復してくれるわけではないので、極力紛争という形にはならない努力が必要だと私は考えます。

5. 弁護士に依頼する際の注意点とコストパフォーマンスを考えた選び方

5-1. 弁護士を選ぶ際のポイント

信頼できる弁護士を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。まず、相続問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。過去の実績や、専門分野として相続に力を入れている弁護士を選ぶことで、適切なサポートを受けることができます。

また、初回の相談時に、弁護士の対応や説明のわかりやすさを確認することも大切です。弁護士との相性も、長期的な手続きの中で重要な要素となるため、信頼感を持てるかどうかを確認しましょう。

5-2. 見積もりを取る際の注意点

弁護士に依頼する際には、必ず複数の事務所から見積もりを取りましょう。見積もりを比較することで、料金の透明性を確保できるだけでなく、必要以上に高額な費用を避けることができます。

見積もりを取る際には、料金の内訳が明確に示されているかを確認し、追加費用が発生する可能性についても確認することが重要です。また、弁護士の対応スピードや、過去の依頼者からの評価も参考にすることで、より適切な弁護士を選ぶことができます。

5-3. 費用対効果を高める方法

弁護士に依頼する際、費用対効果を最大限に高めるためには、依頼内容を明確にし、必要なサービスだけを選択することが重要です。また、弁護士に依頼する部分と、他の士業に依頼する部分を明確に分けることで、全体のコストを抑えることができます。

例えば、相続税の申告は税理士に任せ、遺産分割に関する紛争のみを弁護士に依頼することで、効率的に手続きを進めることが可能です。このように、各専門家の強みを生かしながら、無駄のない相続手続きを実現しましょう。

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