この記事をご覧のあなたは
- 相続は弁護士か司法書士かどちらに依頼すべき?
- 弁護士と司法書士って何が違うの?
- 弁護士と司法書士の料金は?
というような疑問をお持ちなのではないでしょうか。
実際にいろんなサイトを見ても弁護士は弁護士に相談した方が良いという考えを持っているし、司法書士は司法書士に相談すべきだというため、真実はどうなのか意外とわからない疑問かと思います。
しかし、自分の状況と相場感を把握して、適切な場所に相談しなければ必要以上に高い報酬を気づかぬ間に支払ってしまうことになります。
この記事は実際に相続手続きを経験し、様々な事務所に相談に行った著者の経験をもとにお客さん目線で、弁護士か司法書士のどっちに相談すべきかお伝えします。
1.相続は弁護士、司法書士のどっちに相談すべきかの結論
弁護士さんの意見か、司法書士さんの意見かによって結論が大きく異なる議論ですが、利用者目線で考えた場合、話し合いで解決できるならば司法書士に、できないなら弁護士に依頼すべきです。
話し合いができないくらい揉めている場合は弁護士を入れる、それ以外の場合は司法書士に相談するのが費用面、手続き面どちらの観点からもおすすめです。
以下、実際に様々な事務所で相談した結果わかった弁護士と司法書士の違いや、料金について詳しくお伝えします。
1-1.相続人間で話し合いができるなら司法書士にすべき
確かに弁護士は紛争も含めて対応することができます。しかし、逆に言うと紛争が起きていなければ弁護士も司法書士もできることにほとんど差異はありません。
それどころか、弁護士さんは企業法務から離婚、交通事故、刑事訴訟、著作権侵害など膨大な範囲を扱っており、本当に相続だけを専門にしている弁護士さんはかなり少数で、探すのが大変です。
一方で、司法書士や税理士さんの中には相続専門という先生もそれなりにいるので、ちゃんと探せば複数の候補となる事務所が出てきます。
さらに料金面でもかなり差があります。
弁護士は見積もりが100万円を超えることも多々ありますが、司法書士への依頼だと総額でも25万円~55万円程度となり少なくとも2倍以上金額の差があることがわかりました。
相続人間で争いごとがないのであれば、わざわざ相続専門ではない弁護士に相場の2倍以上する報酬を支払う意味はないなというのが正直な感想です。
1-2.相続専門の事務所に相談するのが重要
法律の分野にはいろんな領域があります。よく聞くところだと債務整理や離婚、労働問題などです。
確かに法律家や士業は優秀な方が多いのですが、これらの範囲を全て正確に理解し、お客さんの状況に合わせて手続きできるかというと決してそういう訳ではありません。
中には、相談内容を聞きながら六法を引いてあやふやな回答をするような弁護士さんや土地の制度について話をしても「税理士に聞いたほうが…」という回答を受けるケースもありました。
弁護士さんも集客に苦労しているので、あまり扱ったことがない分野でも非常に詳しい専門家として振る舞いお客さんを獲得していることも多々あり、詳しい方からすると「うーん」と思うこともしばしばあります。
手続きを誰かに依頼するとしても誰に依頼するのかはお客さん側でしっかりと見極める必要があります。
少なくとも、最低限のポイントとして「相続専門」で実績が豊富かどうか、実際にどれくらいの手続きをしてきたのかは確認しておくことを強くおすすめします。
1-3.相続税や税制について関心がある方は税理士の方が適当
相続問題において、弁護士と司法書士の単純な比較であれば司法書士に依頼したほうが利用者からすると利便性が高いところが多いことは伝わったかと思います。
しかし、そもそも相続においては不動産や株式などの財産をどのように手続きすれば、相続税を減らせるのかが重要となることがあります。
このような知識はやはり、数多くの案件を実際にやってきた税理士や提携先が多くある相続専門の方に任せた方が絶対に良いと思いました。
持っている経験値に明らかに差があるので、相続財産が多く税金について興味関心が強い方は税理士事務所に相談される方が適切だと思います。
1-4.相続放棄をする場合は料金が安いところに依頼する
相続放棄の場合、相続財産はもらわないということですから、手続き費用は当然ながらすべて自己負担となります。
さらに、土地の価値をどう割り出すのかや相続税の細かい制度についての理解は必要ないため、料金と手続きの速さが重要です。
弁護士と司法書士を比較すると、どうしても司法書士の方が報酬は安い場合が多いですが、もし同じくらいの金額で請け負ってくれる弁護士がいれば、依頼しても問題はありません。
2.相続を弁護士に依頼する2つのメリット
続いて、司法書士と比較した場合に弁護士に依頼するメリットについて記載していきます。
2-1.法的な権利を正確に主張できる
司法書士は、交渉や代理人となって依頼人の利益のために弁護活動をすることができません。したがって、すでに話し合いが難しいような状況でも中立的な立場しか取れません。
力づくで、交渉し話を前進させないといけない状況なのであれば司法書士よりも弁護士が適任かと思われます。
ただし、金銭的な理由で弁護士に依頼するのであれば弁護士に支払う報酬もしっかりと考慮に入れたうえで判断することをおすすめします。
単純な話、相続財産が1億円あって紛争が起きているとした場合、相続人全員が弁護士をつけてしまうと数千万円単位の報酬を支払わないといけないこともあるということです。
法的な主張をしたとしても実際に手残りの財産の多くが弁護士報酬となってしまっては意味がないため、手取りを残したいのであれば正確に試算した上で依頼することをおすすめします。
2-2.仲が悪い相続人と直接やり取りしなくてもよい
関係性が悪い相手方と延々話し続けることはかなりの苦痛を伴います。ましてや、感情的に怒鳴られるだけで、話し合いにならないような時にはなおさら、らちが明きません。
ただでさえ、身内の方が亡くなったばかりの状況で揉め事の当事者として話し合いを続けることは精神的にも負荷が大きいため、交渉や話し合いのすべてを弁護士に任せられるのは心強い点と言えます。
3.相続を弁護士に依頼する3つのデメリット
依頼人に代わって、権利の交渉ができるのは弁護士しかいないため、交渉や紛争解決に弁護士は有用な一方で、弁護士に依頼するデメリットも存在します。
3-1.相続手続きの費用としては報酬が高すぎる
相続の相談を弁護士にする場合、基本的には下記の料金がかかります。
- ・相談料1時間1万円(相談料は無料の事務所もある)
- ・着手金20万円〜40万円(分割できる場合もある)
- ・報酬(相続財産によって3%から16%乗じて算出)
- ・実費(郵送費、戸籍請求費用、登録免許税等)
もし、相続財産が1000万円と仮定すると、料金は下記の通りです。
- 一般的な弁護士事務所であればどれだけ安くても80万円
- 相続専門の安価な弁護士事務所で50万円~60万円
- 一般的な司法書士事務所で20万円~30万円
弁護士に事務所に依頼するだけで、相続手続き相場の2倍~3倍ほどの報酬となるため、できれば弁護士に依頼したくないというのが正直なところだと思います。
3-2.弁護士を入れることでむしろ揉めるケースも多い
あえて、すごく嫌な言い方をしますが弁護士からすると依頼人同士が揉めてくれた方が都合が良いというのが事実です。なぜなら、依頼人が円満でもめる要素がないのであれば弁護士は必要ないからです。
つまり、弁護士を入れることで、例えば遺言をきちんと残して話し合いがついていたのに「遺留分侵害請求権を使えばあなたはもっと財産もらえますよ」と言ってみたり、依頼人の利益を優先するためといい、必要のない揉め事を起こすきっかけになる場合があるということです。
他にも、弁護士は依頼人にとって有利になるよう交渉を進めることが仕事なので、仲の良い家庭の相続や関係性が良い人同士の場においては本来不向きです。
弁護士は一般的に揉め事や紛争の代理人ということは知られているため、弁護士をいれるだけで他の相続人は警戒し、まとまりそうだった話し合いが紛争模様になることもあります。
実際に仲の良かった兄弟同士が弁護士に依頼することで、険悪になり絶縁してしまったということもそれなりに起きているようです。
揉めそうだからといって安易に弁護士に依頼するのではなく、相手の出方や話し合いで解決できないかタイミングを見計らいながら慎重に依頼することが大事です。
3-3.相続手続き専門の弁護士は少ない
弁護士業務は離婚問題、労働訴訟、法人、知的財産、ITなど非常に幅が広く、わざわざ相続を専門にする弁護士は多くないのが実情です。
実際に相続に強い弁護士と銘打っていても、ホームページ等を見ると離婚問題や交通事故など他の案件にも手を出していることがザラです。
相続問題は、細かい部分が多くどれだけ手続きや申告をやってきたか、制度や税制について理解があるかも非常に重要です。
税金のことは税理士しかアドバイス等ができませんが、経験がある専門家は正確に理解した上で手続きを進めてくれます。
高い報酬を支払うのであれば、その点まで理解をしている専門家に依頼し適切に進めてもらう方がお客さん側にとってはメリットが大きいです。
4.相続を司法書士に依頼する2つのメリット
弁護士と比較して相続を司法書士に依頼するメリットは大きく分けて2点あります。
4-1.料金の相場が弁護士の半分以下
司法書士事務所もすべての事務所が同じ料金体で運営しているわけではありませんが、一般的には弁護士事務所の半分以下の金額で手続きすることが可能です。
相続放棄でも数万円~10万円程度で受任してもらえるので、弁護士事務所よりも安いことは間違いありません。
依頼人の利益を最大化して報酬をもらうのではなく、あくまで手続きを代行することで報酬をもらっているため安価にな上、公平・中立に業務を進めてくれるというメリットもあります。
4-2.相続専門の割合が高い
弁護士が離婚や労働問題など様々な分野を扱っていることが大半なのに対して、司法書士であれば相続専門でやっている事務所も比較的見つけやすいです。
相続専門といっても最終的には担当する専門家の経験や知識が高いのかが重要なのですが、少なくとも事務所単位で年間に200件以上手続きしているところと10件程度では明らかに質が異なってきます。
交渉や裁判ではなく相続の手続きという点では、司法書士の事務所の方が経験がある場合が多く、スムーズに的確なアドバイスをもらうことができます。
5.相続を司法書士に依頼する3つのデメリット
料金や専門性では司法書士に優位性がある一方で、交渉面等ができないという点は状況によってはデメリットとなります。以下、詳しくお伝えします。
5-1.中立的な立場にしかなれない
司法書士や税理士等は交渉はできないため、常に公平でいる必要があります。
従って「あなたの弟さんは生前に1,000万円の贈与を受けているからあなたの取り分はもっと多いはずだ」というような事を荒立てるアドバイスはできません。
これを良しとするか、悪しとするかは状況次第ですが、法定相続分でどうしても納得できないし、話し合いの余地もないという場合は弁護士に依頼するしかありません。
どうしてもあなた個人の利益を最大化してほしいということであれば、莫大な報酬を払って弁護士に依頼するしかありません。
5-2.当事者の話し合いで解決してもらう必要がある
弁護士であれば調停や裁判という手段も使えますが、司法書士は基本的に代理の交渉権を持ち合わせていません。
ですので、相続人同士の話し合いや合意はあなた自身で行わないといけません。
相続人の中で以下のようなヤバい人がいても、自分たちで話をして合意をする必要があります。
私がすべての財産をもらうのじゃ。それ以外は認めん。はんこ押せ。
司法書士が公平な立場で意見を伝えることはできますが、代理人として交渉を進めることはできないため、あくまで相続人全員が合意している必要があります。
5-3.後から揉めると弁護士に再依頼する必要がある
相続手続きをしている途中で
やっぱり、合意はできない!ハンコは絶対に押さないからな。
という人が現れた場合、司法書士は「まあまあ、落ち着いて、法定相続分以上を請求しても取り分そこまで増えないですよ。」というくらいが精一杯です。
ですので、説得やアドバイスに応じてもらえないとなると、手続きが止まってしまい、それ以上進めることができなくなってしまいます。
その結果、一切話し合いができなくなったりすると結局は弁護士に依頼して紛争として解決するしかなくなってしまいます。
司法書士の報酬にに加えて、弁護士への報酬を別途支払う必要があるため、料金が割高になってしまう可能性があります。
弁護士と提携している相続専門の事務所であれば、料金が割引されるように設定されている場合もありますが、あまり多くはない印象です。
6.相続問題によっては弁護士、司法書士どっちも適さない場合がある
ここまで、相続の依頼は弁護士と司法書士のどっちにするべきか検討してきましたが、相続問題の内容によっては税理士や行政書士に依頼した方が良いケースも存在します。
簡潔に言うと税理士は相続税や財産の評価に関する制度に強く、行政書士は土地がない預貯金や株式、車等の相続に向いています。
ただし、どちらの場合もやはり相続専門の事務所であることは大前提です。
もし、ご自身の状況からどこに相談すればいいのかわからないという方は以下の記事も参考になるかと思いますのでご参照ください。