相続財産が現金のみの場合の注意点とメリット・デメリットについて

相続において、財産が現金のみというケースは珍しくありません。多くの方が「現金の相続は簡単でトラブルが少ないのでは?」と考えるかもしれません。

しかし、現金のみの相続にも独特の注意点や、知っておくべきメリット・デメリットが存在します。実は、現金だからこそ発生する問題や、他の財産との違いから生じる利点があるのです。

この記事では、現金のみの相続に関する注意点を解説するとともに、そのメリットとデメリットについて詳しく説明します。相続手続きにおける最適な選択をするための参考にしてください。

現金のみの相続は、財産分割が容易である一方で、特有の手続きや考慮すべき点があります。ここでは、現金相続における基本的な手続きの流れと、その注意点について説明します。

現金のみの相続における基本的な手続き

1-1. 相続の基礎知識と現金の扱い

相続が発生した際、まず相続人を確定し、相続財産を特定します。現金はそのままの価値で分割できるため、相続財産の中でも最も扱いやすい資産です。

しかし、相続税の申告や、相続人間での公平な分割を円滑に進めるためには、法定相続分や遺言書の内容に従った取り扱いが求められます。

例えば、1000万円の現金があり、相続人が3人いる場合、法定相続分に基づいて333万円ずつ分割することが一般的です。ただし、遺言書がある場合や、生前贈与が行われている場合には、それに従って分割方法が決まります。

現金相続の場合、その取り扱いが明確であるため、他の資産と比べてトラブルが少ないという利点があります。

1-2. 相続の流れと現金の分割方法

相続手続きは、被相続人が亡くなった後、以下のような流れで進められます。

  1. 被相続人の死亡届の提出: 被相続人が死亡したことを役所に届け出ることで、相続手続きが開始されます。
  2. 遺言書の確認: 遺言書が存在する場合、その内容に従って相続が行われます。遺言書がない場合は、法定相続分に従って分割されます。
  3. 相続人の確定: 相続人を特定し、誰がどれだけの割合を相続するかを決定します。
  4. 相続財産の評価と分割: 相続財産を評価し、現金の場合はその額を確認した上で、相続人間で公平に分割します。

現金の分割は、各相続人の口座に振り込むことで完了します。特に高額な現金が相続される場合には、税務署への相続税申告が必要となりますが、その手続きもスムーズに進むことが一般的です。

2. 相続財産が現金のみの場合の注意点

現金相続には、他の財産を相続する場合と異なる特有の注意点があります。そもそも相続財産自体が少ない場合は特段注意する必要性は低いですが、多額の現金がある場合は下記の点に注意してください。

2-1. 多額の現金のみを相続するケースは他に資産がある可能性が高い

多額の現金が残されている場合、「他にも資産が出てきた」ということになりやすい傾向があります。銀行、証券、保険などの金融商品もどこの会社のどの口座かというような情報がなければ照会することはできません。

一般的に考えて多額の現金を残すためには労働所得のみでは制度上難しく、現金以外の資産をお持ちであった可能性は高いですし、高齢で認知能力に支障が出てくるとどこにどれだけの資産があるのか本人もよく覚えていないことは日常茶飯事です。

もし、それらの金融資産が埋もれていた場合、再度、遺産分割を行ったり修正申告をかける必要が出てきたりかなりめんどくさい手続きが必要になります。

2-2. 不動産を活用した節税対策が行いにくい

相続時には、配偶者の住まいを保護する目的から不動産の優遇制度がいくつか存在します。しかし、現金のみの相続においてはこうした特例や制度は使えなくなってしまいます。

現金のみで行える二次相続対策としては生前の贈与や一時払い保険を活用した控除が有効ではありますが、生前の贈与もかなり規定が厳しく15年くらいの長期間をかけて準備をする必要があります。

即効性がある施策としては一時払い保険でこちらであれば、相続人の数×500万円が相続財産から控除されるため、仮に5000万円の財産があり、相続人が2人いる場合は相続税がかからない範囲内に収めることが可能です。

3. 現金のみ相続する場合のメリット

現金相続には、他の財産と比較して明確な利点があります。ここでは、その主要なメリットを具体的に説明します。

3-1. 分割の容易さ

現金は、他の財産と異なり、分割が非常に容易です。法定相続分に基づき、相続人それぞれに同等の金額を分配することが可能であり、不動産や株式のように評価額をめぐって争いが生じることはほとんどありません。

例えば、土地や家屋を相続する場合、その評価額が曖昧であるため、相続人間で争いが発生することがあります。一方、現金はそのようなリスクがなく、スムーズに分配できるため、相続人全員が公平に財産を受け取ることが可能です。

3-2. 評価の明確さ

現金は市場価値に影響されることがないため、相続財産の評価が非常に明確です。これにより、相続税の計算や分割の際に、トラブルが生じることが少なくなります。

例えば、株式や不動産の場合、相続時点での評価額が不明瞭なことがあり、相続税の計算に時間がかかることがあります。しかし、現金であればその時点の価値が確定しているため、迅速かつ正確な相続税の申告が可能です。

3-3. 相続手続きの迅速化

現金は、売却や換金の手間が不要なため、相続手続きを迅速に進めることができます。特に、相続人が必要な資金をすぐに利用できる点は、他の資産と比較して大きなメリットです。

例えば、不動産を相続した場合、売却や賃貸の手続きを行わなければ現金化できませんが、現金相続であればそのまま利用可能です。これにより、相続人が生活費や急な出費に対応しやすくなります。

4. 現金相続のデメリット

現金相続には、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解し、適切に対処することが重要です。

4-1. 資産価値の減少リスク

現金はインフレや金利の変動によって、その実質的な価値が減少するリスクがあります。相続した現金の価値を維持するためには、適切な運用が求められます。

例えば、低金利の預金に長期間預けた場合、インフレ率が預金金利を上回ると、実質的な資産価値が目減りしてしまうことがあります。このリスクを避けるためには、資産運用の選択肢を検討し、インフレ対策を講じることが重要です。

4-2. 分割時のトラブル発生の可能性

現金は分割が容易である一方で、相続人間で意見の相違が生じることがあります。特に、高額な現金を相続する場合、相続人の間でトラブルが発生するリスクがあります。

例えば、相続税の負担割合について相続人の間で意見が対立する場合、争いに発展することがあります。このようなトラブルを防ぐためには、相続人全員での事前協議や、公正な分割方法の提示が必要です。

4-3. 急に多額の預金が入ると狙われる

多額の現金を相続した場合、その情報が外部に漏れることでターゲットになるリスクがあります。特に、相続後に預金額が急増する場合には、金融機関はその情報をすべて把握しているということになります。

具体的には、相続後に大金が入った場合、投資信託や保険商品など不必要な金融商品に関する営業を受ける可能性があります。金融商品を金融機関の営業で購入するというのは絶対に避けることをお勧めします。

なぜなら、金融機関の営業マンにはノルマがあり自社にとってメリットがある金融商品を販売するという構図があるからです。

もちろん、お客さん目線で商品を提示している体では話をすると思いますが、実際にふたを開けてみると客観的に見て「入らなくてよかったんじゃない?」「他にもっと適切なものあるよね」ということも多いです。

すべての金融機関の営業マンがそうだとは全く思いませんが、相続が終わった後の財産をどうするかという時には基本的に銀行や証券会社、保険会社へ相談することはお勧めできないというのが正直な感想です。

5. 現金相続で避けるべきトラブルと対策

現金相続には特有のトラブルが発生する可能性がありますが、事前に適切な対策を講じることで、これらを回避することができます。

5-1. 多額の現金を相続した際に取るべき対策

最もよいのは信頼ができて、あなたのことを本当に思って判断してくれて金融に強い人間に相談ができることです。特に金融商品は高額なものが多いですし、その人の将来にかかわるので慎重に判断しないと後悔することになります。

適切な判断をするためには2点重要なことがあります。まず1つ目が自身で金融に関する知識をつけるということです。2点目が、セカンドオピニオンと言いますか、他の人にも意見を求めることです。

金融商品は本当に売る人の考え方や人間性によってはお客さんがすごくリスクを負うことになるので良い人に相談できるかどうかが大事なのですが、最低限の知識がないとそこの判別もつかないのが実情です。

5-2. 相続人間の意見対立の防止策

相続人間の意見対立を防ぐためには、相続開始前から全員で話し合い、合意を得ることが重要です。特に、被相続人が生前に遺言書を作成し、相続の意志を明確にしておくことは、トラブルを未然に防ぐ有効な方法です。

また、遺産分割協議の際には、専門家(司法書士や税理士)の立ち会いのもとで話し合いを進めることが推奨されます。専門家が関与することで、法律に基づいた公平な分割が可能となり、相続人間での意見対立を減らすことができます。

5-3. 専門家の活用方法とその重要性

現金相続に関するトラブルを回避するためには、専門家の活用が欠かせません。相続手続きに詳しい司法書士や、相続コンサルタントなど、専門知識を持つプロフェッショナルに相談することで、相続税の適切な計算や、分割方法についてのアドバイスを受けることができます。

例えば、相続税の申告や納税について不安がある場合、税理士に依頼することで、正確な申告と適切な節税対策が可能になります。また、相続人間での合意が難しい場合には、弁護士を通じて法的な解決策を探ることができ、公正な相続が実現します。

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